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ここ
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#シクフォニ
空彩🍵✒️
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空彩🍵✒️
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最近、仁人が変わった。
どこが変わったかと言われたらうまく説明ができない。雰囲気が柔らかくなった、という方がわかりやすいだろうか。話しかけた時に見せる顔が前よりも柔らかく朗らかだ。
そして何処となくきらきらしている。いや、アイドルなのだから常にきらきらしていて当たり前なのだが、男性アイドルが見せる輝きとは別の、ギラギラよりもきらきら、細かいラメのような輝きが見えた。実際にはそんなものないのだけれども。なんと無く。
「じーんーとー」
「おま、ちょ、もー」
本日の配信中、仁人に抱き付いた。
前なら言葉でイジることはあっても抱きつく事はできなかった。いや、抱きつく隙を見せず、睨まれたり壁を作られていた。懐かない猫みたいな感じ。
なのに最近は、とてつもなく隙が多い。
俺が触ろうが他のメンバーがふざけて絡もうが、嫌がる素振りすら無く、増してやそれを受け入れて、呆れてますよーみたいな顔をしつつ、にこにこ笑ってる。
他にも、メンバーのボケに対してケラケラと笑うようになった。 前は世知辛く鋭いツッコミをかましていたのに。いつの間にか、ツン8割デレ2割だった猫が、ツン6割デレ4割くらいの兎になってしまった。
なんでだ?歳か?疲れたか?どうしたんだよ。
「…勇斗?」
「んぇ?」
配信後の雑誌撮影と動画撮影。機材の準備中だった事を忘れ、ぼーっと考えていた。
声をかけられて横を向けば、こちらを見ている仁人と視線が合う。くりくりした目がいつになく潤いを帯びていて、ぽてっとした唇はツヤツヤ。横並びで座っている筈なのに、若干下から掬い上げるように俺を見ていた。俗に言う上目遣い。
「かっ、」
「か?」
「…いや、何でもない」
危ねぇ。思わずガチで可愛いって言うところだった。
いや、別に可愛いと思ってもいいし、口に出してもいい筈なんだけれど。なんだろう。言葉にしてはいけない禁忌の気配がして思わず濁してしまった。
出会った頃の海苔餅みたいで小さい弟のような可愛さとはまた一味違う、可愛さに混ざる大人の艶やかしさがあった。一歩間違えれば年齢制限がつくような、滑らかで湿っぽい色気を微かに纏っている。まぁ今も餅みたいな男だけれど。
「疲れてる?大丈夫?」
「ん。大丈夫。つーか仁人は?眠れてんの?」
ふと記憶の底にあった幼き頃の仁人の餅感を感じたくて、つい丸く白い頬に触れる。あの頃よりも男らしく成長して変わってしまったのは重々承知で、もちもち感など期待などしていなかったが、男にしては、ふに、と音が出るような弾力を感じて心底驚いてしまった。お前今でも現役の餅なんだな。スキンケアを頑張っているんだろうなぁと頭のどこかで考えながら、触った手で軽く頬を撫でた瞬間、我に帰った。
な、何やってんだよ俺!?
自分の行動にも驚き、急いで手を引っ込めた。
一瞬、ぐっと仁人の顔が歪んだ気がしたが、見間違いだったのか、直ぐにその餅みたいな頬にえくぼを作り、ニヤリと笑った。
「晩年眠れてない奴に言われるなんてなぁ…」
「ふは、なんだよ」
相変わらずの煽りに、俺の勘違いだったかと思っていると、今度は白い手が俺の方に伸びてきた。
そして、ひたり、と俺の頬に触れる。
びっくりして思わず目を大きく開いた。眠気なんてどこかへと吹き飛んでしまい、暖かな掌の感触が頬を伝う。
なんだ?本当にどうしたんだよ?
驚いた反射で体ごと逃げてしまいそうになったが、折角警戒を解いて柔らかくなった兎が逃げてしまうと思い、ぐっと耐えた。
「勇斗も寝ろよ。隈、すげぇから」
親指で拭うように隈をなぞられる。細くなった目から柔らかな視線を与えられて、体内のどこかわからないところがきゅっと鳴った。
視線を残したまま、仁人はスタッフに呼ばれて楽屋を出ていく。残された俺はそのまま固まった。
なんだよ、なんだよそれ。
まだ俺の知らない仁人を見つけた瞬間だった。
「ぁぁ〜よくやったねよっし〜」
「もうだめだ、あんなの、恥ずかしい」
楽屋を出て少し歩いた先、追いかけてきた柔太郎によしよしと背中を撫でられ、その場で小さく小さく三角座りをして両手で顔を覆う。
やだ、恥ずかしい、やばすぎる、消えたい。
勇斗の頬に触れた手が震えてきゅっと握る。そして反対の手で触れられた頬を触った。
俺の立てた作戦。それは"遠慮しない"だった。
作戦などと大それたものでは無いけれど、今までの俺はずっと失うことが怖くて、誰とも関係を深くする事もなく、言葉だって素直に受け取れなかった。今だってそうだし、きっとこれからだってそうだろう。
ただ、勇斗にだけは、もう遠慮する事をやめた。全てを受け入れて、お前のこと好きだぞ〜と空気感で匂わせる。これは今までやったことが無く新たな試みだった。いわゆる緩めの”好きバレ”だ。
正直、効くのかはわからない。体は拒否反応を起こすし、今までの経験からどうしても逃げたくなる。世知辛い言葉だって吐き出しそうになってしまう。それでも、こうして遠慮せず受け入れて甘えてみる期間が、この長い人生の中に少しはあってもいいんじゃないかと思った。
告白させてやると意気込んだが、もはや記念だ。
可愛いは寿命が短いし、他人に甘えるなんて、もうこれから先の人生でできる気がしない。
勇斗だから、勇斗だからこそ、甘えてやる。遠慮しないで触れてやる。拒否されたってそんなの知らない。だって全部お前のせいだし。
「耳まで真っ赤。大丈夫そ?勇ちゃんはよっしーのことよく見てるからきっと気付いてそうだよねー」
勇斗の勘の鋭さはピカイチだからもう悟られているかもしれない。そう考えると余計に恥ずかしくて、遠慮せず素直な自分で勇斗と会うのが躊躇われる。でも始めたからにはやるしかない。終わりまで。
「あ、じゅう、ここにいた」
「おー、しゅん」
「楽屋行ったらさ、勇ちゃん、腕組んで悶々と何かを考えてんの。話しかけても無視されてん。てか、あれ、仁ちゃんもいたの?何したん、そんなぺしょぺしょな顔して」
勇斗が俺のことで悩んでる。たぶん。
それだけでなんだか嬉しくて唇の裏をむっと噛んだ。堪らず顔がくしゃくしゃになる。勇斗に撫でられた頬が熱くて、しばらく楽屋に戻ることができなかった。
続
コメント
1件
ああ、第2話、めちゃくちゃ面白かったです。仁人の“遠慮しない”作戦、グッときましたね。今まではツン8割だったのに、触れる距離を自ら縮めるようになった変化が、勇斗の困惑とともに丁寧に描かれていて。特に“餅”っていう擬音の使い方、頬の感触とか体温が伝わってくるようでした。両者の視点が交互に入る構成も、お互いの気持ちのズレと近づきが同時に見えて上手い。この先、勇斗がどう気づくのか、続きがすごく気になります。ねむりさん、素敵なエピソードをありがとうございます。