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夕食は正統派の懐石料理で大変美味しゅうございました。
朝食は王道な日本の和定食で、これもまた大変美味しゅうございました。
食後のほうじ茶をまったりといただきつつ、クエスト画面を開く。
*初めての異世界お泊まり。
お勧め宿マップを参照のこと。をクリアしました。
新しいクエストが発生しましたので、確認してみてください。
……純日本風の食事を食べたいときはこちらの宿が一番良いですよ。
逆にこの世界の食事を堪能したい場合は、同じく王都にある獣肉萌館《けだものにくもえやかた》がお勧めです。
宿名はセンスがないと断言しますが、料理は貴女の考える異世界情緒が満喫できること間違いなしになっていますよ。
今夜の宿は決定かな。
宿名から察するに、獣肉を使った料理を得意としているのだろう。
どうせなら日本ではあまり食べない肉に挑戦したいものだ。
蛇肉とか言ったら、雪華は怒るだろうか。
受託可能なクエスト
*依頼を受けてみよう。
もう、不愉快な思いをすることもないと思いますよ?
彩絲と雪華は人型の方が良いでしょうね。
*冒険者ランクをあげてみよう。
王都を出るなら銅以上は欲しいところです。
彩絲と雪華がいれば、木のままでも全く問題ないですが、頼りっぱなしというのも嫌でしょう?
*王都を出てみよう。
彩絲と雪華のテリトリーに行くのも面白いでしょうね。
お勧め市町村マップを参照のこと。
*拠点を作ろう。
お勧め拠点マップを参照のこと。
*料理を作ろう。
新しいレシピで無双をしてもいいですよ。
*奴隷を買おう!
女性か両性じゃないと駄目ですよ?
三つも新しいクエストが増えている。
うーん。
夫的には力をつけてから王都を出てほしいらしい。
心配性だから仕方ないかと思いつつ、冒険者ギルドでもらった初心者向け冊子を開く。
いろいろと書いてあった。
まずは、ギルドカード。
初心者は基本木のカード。
極々たまに鉛や鉄のカードからスタートする人もいるようです。
『御方は最初から金カードじゃったな』
『そうそう。でその後の功績が金でも追いつかないって、御方専用の水晶カードができたのよね』
……だそうですよ。
夫が苦手にする案件ってないのかな?
……ないな、たぶん。
ちなみに下から、木、鉛、鉄、銅、銀、金、水晶の模様。
クエストの数と質で上がるらしいです。
数が多くても質が悪いとか、質が良くても数が少ないとかだと鉄止まり。
冒険者とは認められないようです。
カード=ランクとのことで、詳細を説明すると以下の通り。
木 初心者。
鉛 初心者に毛が生えた程度。
鉄 木&鉛モンスターが楽に倒せるレベル。
銅 鉄モンスターが楽に倒せるレベル。
一般的冒険者。
銀 銅モンスターが楽に倒せるレベル。
一流冒険者。
金 銀・金モンスターが楽に倒せるレベル。
超級冒険者。
水晶 未知数。
銅へは頑張れば何とか。
銀へは才能と金でどうにか。
金へは運がないと難しい。
そんな感じらしい。
水晶については、恐らく神運がないと駄目とか。
神運って……神様遭遇運とか?
何人かとリアルに会っていそうな気がしないでもないです。
日本でもこちらでも。
依頼はギルドマスターの裁量でランク分けされている。
自分より下位ランクは受けられるけど、上位ランクは受けられない。
未達成にはペナルティあり。
横取り行為など悪質な違反は、ランク下げ、剥奪、永久剥奪及び犯罪奴隷へ売られるケースもあり。
指名依頼はどのランクでも拒否できるけれど、ギルドマスターからの指名依頼のみ拒否できない。
大まかな仕事内容は下記の通り。
木 炊事洗濯掃除など、モンスターが全く絡まないもの。
鉛 基本的にモンスターが出ない区域での採取。
鉄 木~鉛ランクモンスターが出る区域での採取&モンスターの討伐。
銅 鉄ランクモンスターが出る区域での採取&モンスターの討伐。
貴族からの依頼。
銀 銅ランクモンスターが出る区域での採取&モンスターの討伐。
王族からの依頼。
金 銀・金ランクモンスターが出る区域での採取&モンスターの討伐。
国からの依頼。
水晶 悪魔を退けるとか、神からの依頼とか……いろいろ囁かれているそうな。
……何でもありの水晶は、特に書かなくても問題ない気がする。
金ランクの人たちを発奮させるためなのかもしれないけれど。
『アリッサが望めば一日で金まで上げられるぞ?』
『御方ぐらい力がないと、国から目をつけられちゃうのが難点だけどねー』
「……一日一ランク上げ、取りあえず銅で」
それでも目立つと思うけど。
さくさくっと王都を出たいんだよなぁ。
あの、王妃辺りに絡まれそうな予感がする。
あと、三聖女(笑)に。
『アリッサらしいのぅ』
『御方も目立ちたい! って方では決してなかったけどさー』
「取りあえず今日は、木ランクの依頼を規定通りに受けて達成しようかなぁ」
『では、早速ギルドに?』
『準備万端よ!』
整理整頓は苦手ではない。
困ったときはアイテムボックスな指輪に全部突っ込んでしまえばいいだけの話。
勿論素敵バッグはちゃんと使い倒す心積もりであるけれど。
『今夜の宿は? こちらの宿に連泊するかの?』
「主人お勧めの獣肉萌館にしてみようかなーって」
『あ! そこはレア獣肉が美味しいわよ。私もお勧め!』
『くっく。共食いするとは!』
『なによ! 彩絲だってそうでしょ!』
ふぉ!
蛇肉は想像していたけど、蜘蛛肉もあるとは!
どこを食べるんだろう?
気になるけど、あとのお楽しみにするとしよう。
「まぁ、まぁ。喧嘩しないで。好きなお肉を食べればいいでしょう?」
『うむ』
『確かにねー』
「それじゃあ、行きましょうか」
私は荷物を手にして腰を上げる。
二人も続いて私に倣った。
桜果に暇《いとま》の挨拶をし、また来る旨を伝えて幻桜庵をあとにする。
怪しい空間を抜ければ冒険者ギルドは近い。
「そういえば、武器とか防具とかどうしよう?」
『欲しければ購入しても良いと思うがなぁ……』
『御方の加護があれば、身一つで十分な気もするよ?』
「まー最初は木ランクで戦闘もないから、必要だったら購入しようかな?」
問題があれば、夫からの囁きがあるだろう。
冒険者ギルドに足を踏み入れると、沈黙が出迎えてくれた。
昨日の一件を知る者も少なくないだろうし、今日は彩絲も雪華も人型を取っている。
密やかな囁きすらも怖くてできないのかもしれない。
どの窓口に行こうか迷っていると、ギルド長が静かに奥から現れた。
「昨日は大変失礼いたしました。改めまして、ギルドマスターのアメリア・キャンベルと申します。当ギルド御利用の際は、不肖、私が担当させていただきますので、よろしくお願いいたします」
「……謝罪は既にすんでいますので、以降は不要です。アリッサと申します。今日は依頼を受けに伺いました」
「承りました。木ランクの依頼はこちらになります。お勧めはこちらです。幾つお受けになりますか?」
一度に受けられる依頼は最大五つまで。
同じ木ランクでも時間がかかる等の理由で、複数依頼達成が難しい場合は断られるケースもある。
……とは、冊子に書かれていた注意事項。
「最大の五つを受けます。ランクが一日で上がるような依頼を選んでください」
「承りました。そちらへおかけになってお待ちくださいませ」
指示された椅子へと腰掛ける。
彩絲と雪華も同じテーブルを囲むように座った。
ギルドマスターのやり取りを聞いて安心したのだろうか。
何時の間にか周囲がざわめきを取り戻している。
「随分丁寧なんだね」
「普通は有り得ぬ高待遇じゃな。まぁ、二度とヘタを打ちたくないのじゃろ」
「御方の最愛と縁が持てるなら、ギルドマスター直々の対応はありだと思うよ。たとえ木カード冒険者でもねー」
「二人にはギルドカードってないんだよね?」
「守護獣だからのぅ。一応ランク分けはされておる」
「当然最高ランクの“最強”だよ!」
雪華の説明によると。
守護獣は、最弱、弱、中の下、中、中の上、強、最強とランク分けされているとのこと。
最弱とか需要はあるのだろうかと心配になるが、ペット感覚で求める人もいるのかもしれない。
私もヘタ耳オッドアイの子猫とかいたら、懐に入れて愛でそうだ。
「最強の守護獣は、金ギルドカード持ちでも持てるとは限らぬからなぁ」
「有名な守護獣だと王族仕えとか普通にいるしねー」
やっぱり二人は私には勿体ないくらいの守護獣だ。
パートナーと思って大切にしないとね。
「お待たせいたしました。こちらの五つで如何でしょうか?」
ギルドマスターがわざわざテーブルまで用紙を持ってきてくれた。
*教会炊き出しの手伝い。
*料理店の排水溝掃除。
*老夫婦宅の買い物代行。
*廃屋の害虫駆除。
*結婚式の受付。
「……大丈夫そう?」
時間的に難しそうな件、内容的に大丈夫なのか心配な件が紛れ込んでいる。
「問題なかろう。キャンベルよ。時間配分は如何に?」
「結婚式の受付が十時半から三十分程度。教会の炊き出し手伝いが十二時~一時間程度。移動時間がないので、問題ないと思われます。排水溝掃除と害虫駆除は何時でもいいそうですが、買い物代行は夕食に間に合うようにとのことです」
「どれもやった経験があるから、安心して受けちゃっていいよ」
何時の間に受けたんだろう、特に結婚式の受付! と内心で考えつつ、依頼を受ける。
「それでは、よろしくお願いいたします」
深々とした礼とともに依頼書を五枚貰った。
それぞれの依頼先で終了のサインと評価をもらってくるように、と冊子に書いてあった。
もらった説明冊子は絶対に読んだ方が良いと思う。
っていうか、必須にした方が良いと思う。
識字率が低いようなので、難しいのだろうけれど。
「結婚式の受付かー。服はどうするの?」
「ふむ。そうじゃな。裕福な家庭のようじゃから、それなりのドレスアップで問題なかろう」
「よし! 私コーディネイトで!」
「で、できればロング丈がいいなぁ……」
雪華の目線が太腿から足首を舐め上げるように動いたので、大袈裟に身体を震わせておいた。
結婚式の受付評価は、水晶、だった。
ちなみに、木 未達成
鉛 依頼金減額
鉄 及第点 マイナス寄り
銅 及第点 プラス寄り
銀 良評価
金 高評価
水晶 最高評価 依頼金増額
となっていて、ギルドで評価される依頼に関しては、水晶評価は比較的良く出るが、一般人からの依頼で水晶評価が出るのは大変珍しいらしい。
どれぐらい珍しいかというと、水晶評価一件で鉛カードにランクアップできるほどだ。
「この世界の結婚式受付って大変なんだね……」
新郎は満面の笑みを浮かべていたが、新婦は複雑な表情だった。
「正統派美女の彩絲、可愛い系の私、綺麗と可愛いの良いとこ取りの主だったからねぇ……」
所謂ナンパが酷かった。
既婚者に言い寄られるとかどうなのか。
不倫絶対ダメ。
100%ばれて、相手が夫に殺される。
「御方にも叱られたしのう……」
怒りの矛先は、依頼を受諾した雪華に向けられたが、メッセージを受け取ったのは私だったので、胃の辺りがきゅうっと痛んだ。
夫曰く、ギルド依頼の受付嬢に対してはナンパが暗黙の了解らしい。
そして、ギルド依頼の受付嬢の人気が高ければ高いほど、新郎の評価が上がるとか論外すぎる。
雪華が知らなくても無理ないだろう……というか女性は知らない気がしないでもない。
「まぁ、彩絲がお触り厳禁看板を立ててからは、メッセージカードを渡すだけになったから良かったよ……」
笑いながら胸を掴まれそうになった彩絲が、真っ黒い笑顔で男を空中に高く放り投げたのだ。
足から着地した男はきょとんとした顔をしたあとで、顔面蒼白となった。
ギルド依頼の受付嬢に対するナンパは言葉、もしくはメッセージカードを渡すのみ! そんなことも知らずに依頼を安直に受けるな! と夫からメッセージが入った。
私が大変怒っていたとも雪華に伝えてくださいっ! と怒り心頭な緊急メッセージが入ったので、大慌てで伝えた。
雪華は動けない男同様に顔面蒼白になり、彩絲は看板を立てて無法者を回避したのだ。
以降は受付で長々とメッセージカードを書き込む馬鹿がいた他は問題もなく終了した。
評価が水晶だったのは、その辺りの慰謝料ももしかしたら兼ねていたのかもしれない。
「他にもそんな暗黙ルールがあるのかなぁ……」
雪華はすっかり落ち込んでいる。
「うむ。間違いなくまだあるじゃろうな。遭遇した場合は主の安全確保を最優先で依頼をこなそうぞ!」
「うん! 受けちゃった依頼は遂行しないとね。ごめんね、主。二度とこんなことがないように気をつけるからね」
彩絲の言葉に大きく首を振った雪華が真剣な眼差しで、私を見詰める。
「私自身も慎重に行動するよ。あまり気にしないでね、雪華」
モンスターに遭遇しない安全な依頼だったはずなのに、想定外の災難にあってしまった。
二人は改めて依頼達成のために硬く拳を振り上げている。
命の危機に晒されたわけでもないのになぁ……と若干の温度差を感じてしまう。
ちょっと違う気がするんだけどなぁ、と思ったのは、二人には内緒だ。
その気持ちは分かりますけどね。
まぁ、二人とも貴女が大切だから一生懸命なんですよ、と夫が囁いて寄越したのも内緒だ。