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ふぅ。お日様の光を浴びながら、俺は心地よい気分に浸ってる。たまには衝動的になるのも悪くない。
一匹の豚が、顔面から血を流して死んでいると、朝餌やりに来たジョージが騒いでいたが、大した問題にはならなかった。豚一匹の生死など人間にとっては重要ではないのだろう。無論自首するつもりはさらさらない。俺はすました顔で掃除中のジョージの足にまとわりついた。
『てめぇが掃除してるのは俺がヘッドバットで殺した豚さんだよ』と、そういう意味を込めて。
ジョージは足元の俺をみて
『お前は優しいね、俺を慰めているんだね』と言う。見るとジョージは涙を流していた。俺は訳がわからなくなって、ジョージから離れた。豚が死んで泣いている人間などいない、豚さえ泣いてなどいない。
俺は考えることに疲れ、ふて寝をした。
ブヒーと言う鳴き声で目が覚めた。
太陽の照り具合で昼だと判断する。最も小窓しかないので、正確かは分からない。
どうやら豚の補充のようだ。
ブヒーブヒーと言う鳴き声とともに、新たな豚が補充された。新たに加わったのは30頭。
どうやら100頭になるように調整されているようだ。俺は豚小屋の一番奥から、豚共が収用される様子を眺めていた。
一匹の豚に目を奪われる。澄んだ瞳に白い肌、整えられた毛並み。その白豚は豚小屋を雄然と歩いて、小屋の真ん中に座った。
どうやら気も強いらしい。ますます気に入った。俺は3日食べないことで、ふらつく体を気力で支え、その白豚に近づく。
会話が出きるか確認するため、聞こえるようにブヒーと鳴いた。白豚はチラッとこちらを見ただけで、すぐに視線を戻した。
一瞬だけしか見えなかったが、間違いなくこいつは嘲笑していた。そして、『俺の珍しい毛並みで綺麗だね』という言葉を理解し、無視した。屈辱という味わったことのない感情に支配される。俺は客観的にみてもルックスは上の上。頭が切れ、性格も優しい。
元に一匹の牝豚は、俺に恋をしているとみて間違いない。好意のない豚が、俺のために頬をぶったり、俺が自分を見失っている時に、寄り添ってきたりするはずがない。
なのにこの白豚は、俺を雄として認識する素振りがない。
空白の時間が流れ、俺は閃いた。
照れ隠しというやつだろうと。
おれは臍を噛んだ。思わず口元が緩む。
俺は白豚に気取られぬように、顔を下に向けて寝そべった。
ブヒブヒブヒブヒと俺は心の中で喝采していた。これは運命ではないかと。
飯を食べていないため3日寝れなかったが、今日はゆっくり眠れそうだ。