テラーノベル
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彼方がいる天守閣に登ると、ふすまが破れていた。
中に入ると、怒っている彼方と、めちゃくちゃな方向に腕が曲がっている人形があった。そこからいきなり、ブチッと腕をもいだ。
一つ下の階から、『ぎゃぁぁぁぁぁ』という叫び声が聞こえた。おそらく偶然ではないだろう。多分これが彼方の能力なのだろう。
「彼方!」
僕は大きな声で言いながら、彼方を押し倒して、身動きを取れないようにした。しかし、それでも彼方はバタバタと暴れた。
「やめろ!」
そういうと彼方はびくっと肩を震わせて、ピタリと動きを止めた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい‥‥」
彼方は泣きじゃくりながら、誰かに謝った。
ダダダダと音がして平賀さんは階段を駆け上がってきた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい‥‥」
彼方はいまだ謝り続けている。
「‥‥わかっただろ。幸人。なんで俺がお前に彼方様を頼んだかを。すまない。言っていなくて。すまない。」
「平賀さんは一回退出してもらってもいいですか?」
「あぁ。」
そう言って平賀さんは退出した。
泣いている彼方をぎゅっと抱きしめた。それでもずっと泣いていた。ずっとと言っても5うん程で泣き止んだ。
それから一度開放して、話をすることにした。
「なんで、あんなことをしたんだ?」
「‥‥みんな、ずっと無視して、‥‥楽しいこともないし、‥‥みんなかまってくれないし。‥‥ラガはよくかまってくれるけど、いつもではないし‥‥」
たぶん寂しかったのだろう。足が悪くて外に自分だけで出られなくて、だから、みんなから興味を持ってほしくて、かまってほしくてあんなことをしていたのだろう。それがわかっていたから平賀さんも僕に彼方の相手を頼んだのだろう。
「これからは僕がいます。僕が、あなたの遊び相手になりますから。」
「‥‥ほんとぉ?」
彼方は僕の目を見いて聞いてきた。それに、「えぇ、もちろんです」と笑って応えると、まるで芍薬の花がパァァと咲くように笑顔になった。それから彼女は手の甲で涙をぬぐってから、「ボマ君よろしくね。」と言って、うれしそうに笑った。
とても不名誉な名前だと思ったが、それについては何も言わなかった。僕はできるだけ自然な笑顔で「こちらこそ」といった。
それから「トイレに行ってくる」と言って席を外し、1階下のところにいた平賀さんに話しかけた。
「全部あなたの計算通りなんですよね。」
「よくわかったね。なんでそう思ったの?」
軽く僕と平賀さんはにらみ合う。
「萩野さんからのメッセージでもあったんですか?」
「なん‥‥」
「僕のやつは確かに守側ですが、多くの改良を重ねて、1回目に見ただけだと絶対に対応できないように作られているんです。それでそれを対応できるってことは、誰かがそれを教えていないと不可能なんです。そこで、萩野さんならそれができるんじゃないかと思いまして。」
「すごいね。正解だよ。羊羹の入っていた紙袋の中に、君に対応するための方法が書かれた紙が入っていたんだよ。‥‥それにしても意外だね。君は自己肯定感が驚くほどに低いし、自分の事を過小評価しすぎているのに。『1回目に見ただけだと絶対に対応できない』って言いきれるくらいの自信がそれにはあるんだ。」
「僕が作っていないからです。」
「ふーん」
平賀さんは『なるほどね』と言いたげな顔で、僕の事をじっくりと見た。
「もうそろそろ帰ったら?厠に行くにしては軽く長いくらいの時間だし。」
そう言って平賀さんはどこかに歩いて行った。萩野さんと似てどこかわからない人だ。
「遅くなってごめん」
襖を開けると、押し入れから何かを出そうと必死になっている彼方がいた。
「あ、ボマ君これ出すの手伝ってくれない?」
いわれるがままに、それを取り出すと、1.8m程の大きな人形が出てきた。
中から出すと、人形は立ち上がり、殴ってきた。それを反ってぎりぎりでかわす。
「ボマ君って強いね。能力だけかと思った。私がうまく人形を操れるように、人形と戦ってくれない?もちろん、君自身は動かさない。」
おそらく彼女は人形を使い、僕と戦うつもりだろう。しかし、彼女が能力を誤って、僕にその能力を使った場合、俺は普通に殴られるし、蹴られる。でも、これも任務だ。萩野さんをキレさせる方がやばいため、やるしかない。
「分かりました」
そういうとほぼ同時に、1秒前に頭があった場所に蹴りが炸裂する。
少々のタイムラグが発生している。つまり、予想外の行動をすれば相手は対応できなくなる。
前に2歩進み、蹴りが出た瞬間に右側に動く。そんな風にすると、思うが儘に人形は翻弄されている。壊すのはためらわれたため、彼方を捕まえて終わりにした。
そんな時、疲れた顔の平賀さんがドタドタ音を立て走って入ってきた。
「どうしました?」
「お前のボスがおかんむりだ」
来た方の丘を指さしながら、平賀さんが言った。
萩野さんは何時に帰って来いとわいわれなかったが、もうそろそろ帰るころ合いだと思っていたのでちょうどいい。
「じゃぁね。」
彼方に対して手を振りながら、ふすまを閉めて、平賀さんと全力疾走で丘へ走る。
「遅かったね」
萩野さんがお猪口に酒を入れながら、こちらを見て、そういった。「すいません。」
飲酒運転と言いたいかもしれないが、AIがすべてやるため、そこまで問題ではない。
「酒の飲みすぎだって言いたいのか?」
勝手な被害妄想を始めるのだけはいただけない。
「安心しろ。」
何に安心すればいいのだろう。
「早く帰りますよ。」
「帰り方わかるの?」
「いいえ」
「ラガ君。こいつを登録しといて」
平賀さんは何も言わず、腰の刀で軽く親指の腹を切り、桜の木の根元にたらした。そして軽く僕の親指の腹を軽く切り桜の木の根元にたらした。
すると即座に桜の花が満開に咲き誇り、平賀さんと僕は桜の花びらに包まれ、次に目を開けると、あの白い部屋にいた。そして、桜の木は白い台の上の盆栽に戻ってた。
「あっちの世界に入るには一回これを持ち上げて、それから降ろせば問題ない。」
なるほど。中に入ることはだれでも可能だが、一人一人にしているため、敵が大量に入ってこれないようにしているのか。さらに、敵が大量に内側から出ようという事も大変である。しかし、それは敵だけでなく、あそこの中にいる人々も逃げるのが遅くなってしまうのか。変異者の少数が、反乱や戦争などを起こした瞬間に対応ができなくなるな。
そして桜の木がいきなり大きくなり、萩野さんが花びらに包まれて帰ってきた。
壁に鍵を近づけると、ピピッと鳴り下駄箱が落ちてきた。それに乗りこみ、地上に出る。
それから、柔道場を出て、壁に鍵を近づけると階段になった。
「じゃあまた今度」
そう言って平賀さんは、階段を上る僕らに向かって手を振った。
僕は、萩野さんとともに車に乗り込んだ。
時は黄昏時。という表現がぴったり合うような空の色である。
「職権乱用するのはやめていただけません?」
「‥‥職権乱用なんてした覚えはないけども?」
「自分の娘の子守をさせておいてそれを言いますか?」
「‥‥職権乱用ではない。正しい使い方だ。」
思わず大きなため息がこぼれる。風間先輩と同様に何を言っても聞かない性格なので特に何か言う気はない。
それから本屋により、担任の飯田先生の著書を買った。
僕を家の前まで送ると萩野さんは、あのカギを手渡して、『なくしたら殺す。』という言葉もくれた。言葉の方はきちんと心に刻んでおこう。平賀さん曰く勝ち目はないっぽいから。
高校生になったという事で堂々とバイクを運転できることとなった。この前バイク屋に行ってそこまでエンジン音がうるさくない。小型二輪バイクを買ってきた。取るだけ時間の無駄。という萩野さんの意見から、免許は偽造である。
「ただいま」
家にはいると、日向が玄関で待っていた。
「おそかったね。組織の事だろうから何も言わないわ。」
この組織の暗黙のルール。絶対に人の任務についてかかわるな。命令された通りに動け。本名は教えるな。ということである。そのほかにももろもろと軽いルールは存在するが、これが大きなものである。
「あぁ、そうしてくれ」
「今日のご飯は私が作ったから。」
キッチンからリビングの食卓へ、カリカリに外側が焦げた、一辺 約60cmはあろうかという立方体の炭が皿。それを前にした優也が目でヘルプと送ってくる。
「これは何?」
「牛肉だよ。」
あぁ、なるほど、よく理解できない。おそらく牛肉に火を通そうとして炭になったのだろう。さて、今日は食欲がわかないから自室に戻るとしよう。
「一緒にご飯食べようぜ」
優也が僕の肩をがっしりつかんで離さない。
結局僕は、料理(?)を食べることになった。それは、外側はひどいが、内側はある程度ましで火は通っており、おいしかった。
部屋に戻ると、〈BIRDS〉の〈オウム〉から大量に電話がかかってきていた。
「もしもし。どうした?」
『新学期疲れた。〈鳩〉と俺とお前でカラオケ行かないか?』
「行ってもいいけど。」
『どうせ明日休みだから予定はないだろ?歌い明かそうぜ』
電話口から〈鳩〉の声も聞こえてくる。
それから間もなくして、〈鳩〉と〈オウム〉がやってきた。
「相変わらず飾り気がねぇ部屋だな」
〈鳩〉が開口一番にこれなのはどうにかした方がいいと思う。
「カラオケに行くんでしょ。」
全員で家を出ると、軽く暖かい空気が頬に当たる。春から少し暖かくなってきているような気がする。
3人で電車に乗り込むと、帰宅ラッシュの時間帯で電車内は軽く混雑していた。先ほど軽く話し合い、6駅先の繁華街に行こうという話になっている。
電車内ではひそひそ声が絶えず、〈オウム〉が耳をふさいで、僕をにらんでいる。彼のような、よく音が聞こえてしまうタイプの人間は電車に乗ることも一苦労だろう。にらまれるようなことをしていないのに‥‥。
電車から降りて繁華街に出ると〈オウム〉はノイズキャンセリングを耳にはめ始めた。やはり、彼には結構な苦行だったようだ。
「あそこのカラオケ屋でいいか?」
〈鳩〉がさした方にあるカラオケ屋に入ると、即座に部屋に入ることができた。
「はぁ、うるさすぎたわ。」
〈オウム〉がノイズキャンセリングを外しながら愚痴をこぼした。
「電車内だとひそひそ声で話そうとする辺りが耳に変な感じがしてあまり好きじゃないんだよね。」
僕とは違う観点で気持ち悪いと感じるようだ。
「なんなんあいつら。『告白できるかな』ってずっと話してんじゃねぇよ。気色悪い。」
そんな内容が話されていたようだ。
「よし。ドリンクバーを頼んで。歌おうぜ歌おう。」
それから、僕らは一晩中歌い続けた。そのせいで、軽く喉が痛い。
「よーし。歌った 歌った。」
〈鳩〉とともにカラオケを出た時、僕のスマホが震えた。風間先輩からだった。
『8時に生徒会室な』
ブツッ電話を切られた。こんなレベルの内容ならばメールでもよくないか?現在の時間は6時。今から帰れば間に合うだろう。
「じゃぁね。」
人気がないところで魔法陣を使って帰る〈鳩〉と〈オウム〉を見送った
コメント
1件
ふわぁ…今回もめっちゃ良かった😭💕 彼方ちゃんの寂しさが痛いほど伝わってきて、涙が止まらんかったよ…「ごめんなさい」連呼するところと、ボマ君って呼んで笑顔咲かせるところのギャップがやばすぎる!!主人公の優しさに何度もキュンときたし、平賀さんの計算高さも面白いな〜。最後のカラオケで日常に戻る感じも好き!次話も楽しみにしてるよ🌸
ウィド&ディレ
92
榎本くもり
10,056
#面白くないかも
如月玲
37
谷崎爽奈
81