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加藤 駿【偽名:畠中 幸人】/現在
それからすぐに来た電車に乗り込み家に帰り、7時半に生徒会室に到着した。
「おはよう」
相変わらず几帳面そうな格好をした北上先生は紅茶が入ったカップを片手に、角砂糖を6つほど入れている最中であった。
「スリランカの人でもそんなに砂糖を入れませんよ。」
「紅茶はこうして飲むものだよ。こうしないと飲めたもんじゃない。コーヒーというものがあるが、あれは新しい拷問器具に違いない。」
「日本には230年前からありますよ。」
「230年なんてあっという間だよ。君にもいずれ分かるさ。まさに光陰矢の如しってやつだよ。それにしても久しぶりだね。」
「230年は少し前のように言うのに、3年前は久しぶりというんですか。」
「君に合わせて言ってあげたんだよ。君にとっては人生の5分の一だ。私に感謝したまえ。」
「先生はその感謝代を私への迷惑料に使いましたので感謝はしません。」
「やれやれだ。なんでそんな少年になってしまったかな。せめて3年前に事件に関する礼でも言いたまえよ。」
「それに関してのみ感謝しています。」
北上先生は、はぁ‥‥とわざとらしくあきれたふりをした。それから、角砂糖6つ入りの紅茶をゆっくり優雅に飲みほした。
「やはりこの甘さがおいしいね。」
「砂糖菓子でも舐めていたらどうですか?その紅茶と味は変わらないと思いますよ。」
「違うよ。においを楽しんでいるんだ。君も砂糖を入れずに紅茶を飲んでみたまえ。最初に甘そうなにおいがするのに味はクソ苦い。これは詐欺だよ。」
「渋みだけ取り出しているんじゃないんですか?AIにいれさせた方が数倍おいしくなると思いますよ。」
「‥‥ボクキョウシ キミセイト」
「立場を出すんですか。ずるいですね。」
そんな時、水城先輩が教室に入ってきた。
「朝早いね。‥‥紅茶のにおいがする。私も紅茶を飲もうかな。」
水城先輩は好きな紅茶をブレンドしているらしく、毎回計量して飲んでいる。きちんと温度も図ってやっているあたりが北上先生との大きな違いである。
「幸人も飲む?」
「僕はカフェオレで」
「カフェオレかい。おこちゃまだね。」
「角砂糖を6つも入れる人に、おこちゃま扱いされるのはさすがに不服ですね。」
「どっちも子供っぽいでしょ。」
紅茶を持ってきた、生徒会唯一とも言っていい常識人の水城先輩からのツッコミを受けて地味にダメージが入る。
「ありがとうございます。」
紅茶を受け取りながらそう言った。北上先生はまた紅茶を入れている。この人の健康診断の結果が心配になってきた。まぁ、本人からしたら余計なお世話なのだろう。
「おっはよー。休日に呼び出されて鬱だから今すぐ自殺したいくらいの田井中先輩だよー」
こんなハイテンションで『自殺したい』と言う人が本当に鬱病なら、この世界の9割8分の人間が今すぐ病院に行くべき鬱病患者ということになるだろう。
「わー。大変だね。じゃぁこの学校で自殺しないように椅子に縛り付けて動けないようにしなくちゃ。」
「さすがにやめてよ」
語尾がなくなるほどに驚いて逃げてしまった。まぁ、風間先輩ならやりかねないが、さすがに僕はそんなことはしない。
「いじりすぎだよ」
水城先輩からストップがかかったのでこれくらいで終わらせておこう。
「おはようございます」
榎木園先輩が生徒会室に入ってくる。それに続くように風間先輩も入ってきた。
「おはよー」
相変わらず適当すぎる挨拶である。それから全員が座ったところで風間先輩が口を開いた。
「書類が多いから今やらないと普通に忙殺されるから。仕事しよう。」
書類仕事が終わるころにはもう、午後1時。もし、彼らと飯に行くならば、今日は彼方のところに行くのが遅くなりそうだ。
「僕は軽く用事があるので」
僕は、有無を言わせぬうちに生徒会室から出て行った。
加藤 駿【偽名:畠中 幸人】/現在
バタンと音がして、生徒会室の扉が閉まる。
「ほへー。珍しいこともあるもんですねー。ユッキーが、急ぐだなんてー。はっ‥‥まさか‥‥恋?」
「妄想癖もほどほどにな」
北上先生がたしなめる。そういう北上先生はどこに行ったかの検討が付いていそうな顔をしている。この5年間。ここの教師として知っているが、何を考えているかが全く分からない。意味不明な性格の人間である。おそらくここで聞いても回答してくれないだろう。どこか畠中幸人にあったばかりの頃とよく似ている気がする。
「んじゃ。定時なんで上がります。」
「あんたの今日の定時は3時だろ。」
「勝手に帰ろーとすんなー」
「働いてください」
「今日は休日だよ。いいじゃないか。私だって家でゲームをしていたいのだよ。」
「ボッチでゲームをやるんですかーかわいそーですねー」
「だまれ。じゃぁ帰るわ。鍵は閉めておけよ。」
軽く笑いを含んだトーンで北上先生は言ってから、生徒会室を出て行った。
コメント
1件
14話読了〜! 北上先生と駿の掛け合い、相変わらず軽快で好きだな😌 角砂糖6つには笑ったけど、ああいうゆるい空気感が生徒会の日常っぽくて良い。 田井中先輩の「自♡♡♡たい」に風間先輩が本気で縛ろうとするのも、このメンバーらしいというか…(笑) 駿が急に抜けた後の「恋?」って田井中先輩の勘繰り、ちょっと気になる展開だね。北上先生だけは何か知ってそうな顔してたのもミステリー。 次がどう転ぶか、静かに楽しみにしてます🌙
ウィド&ディレ
92
榎本くもり
10,056
#面白くないかも
如月玲
37
谷崎爽奈
81