テラーノベル
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ドアが閉まり、部屋に一人残された朝陽はベッドへ腰を下ろした。
先程まで平静を装っていたが朝陽も亜佑美同様落ち着かず、大きく息を吐く。
(緊張するな……)
未経験の自分が経験のある亜佑美をリード出来る訳もなく、かと言って任せきりというのも男としてどうなのだろうと朝陽は悩んでいた。
(上手く出来なかったらどうしよう……)
下手で不安にさせてしまうかもしれないけれど、こんな弱気ではいけないし大切なことは他にある。
そう思った朝陽は自分に喝を入れる。
(違う、上手くやることよりも、亜佑美さんを大切に想うことが一番だよな……)
どんな時でもそれだけは忘れないでいようと、朝陽は静かに拳を握った。
暫くして、バスルームのドアが静かに開いた。
「お、お待たせ……」
遠慮がちな声に顔を上げた朝陽は思わず息を呑む。
湯上がりの亜佑美が自分と同じバスローブに身を包んでいるだけで落ち着かないというのに、ほんのり上気した頬や無防備な姿に朝陽の胸が大きく跳ねる。
(可愛い……)
そう思うけれど見つめすぎるのも失礼な気がした朝陽は慌てて視線を逸らすと、
「えっと……これ、どうぞ」
つい先程冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを差し出した。
「あ、ありがとう」
亜佑美は小さく微笑むとそれを受け取り迷わず朝陽の隣に腰を下ろし、キャップを開けて一口飲み、再びキャップを閉めてペットボトルをチェストの上へ置いた。
沈黙の中、どちらも話さず相手の様子を窺っている。
(どうしよう……)
亜佑美は膝の上で指先を絡めた。
(こういう時って、どうすればいいの……?)
自分から何かした方がいいのだろうけれど、どうすれば自然なのか分からない亜佑美。
一方の朝陽も、
(俺から何か言わないと……)
そう思うのに何も言葉が出て来ない上に緊張で心臓が騒がしかった。
互いに同じ緊張をしていることは何となく伝わって来ていて、やがて朝陽が小さく笑った。
「……なんか」
「え?」
「お互い、すごく緊張してますよね」
その言葉に一瞬きょとんとした亜佑美だったが、次の瞬間くすりと笑う。
「そうだね」
「すみません……正直、こういう時って何を話せばいいのか分からなくて」
「ふふ、私も……」
本音を口にしながら二人は顔を見合わせると、途端に張り詰めていた空気が少しだけ柔らかくなった。
「こうしてると、夢みたいです」
「夢?」
「はい。好きな人と旅行に来て、こんな素敵なホテルに泊まれて……すごく幸せです」
「……それは、私だって同じだよ」
「え?」
「朝陽くんとこんなに素敵なホテルに泊まれるなんて幸せで……本当に本当に嬉しいよ」
そう言われて朝陽の頬は熱くなる。
「朝陽くんと付き合えて、本当に良かったなって思ってる……」
「亜佑美さん……」
先程までとは違う、どこか熱を帯びたような視線で言葉を探すように見つめ合った二人は――
「……好き……」
「俺も、好きです」
愛の言葉を交わしながら、どちらからともなくキスをした。
「んっ……」
啄むような軽い口付けを何度か交わしていくと、それだけでは止まらずにもっと触れたい、深いキスをしたい、そんな欲望が生まれていく。
未だぎこちない口付けではあるものの、朝陽は少しずつリード出来るようになってきた。
亜佑美は朝陽に任せていると、朝陽の舌が咥内へ入り込んでいく。
「っん……、ふぁ……」
少し興奮状態にあるのか荒々しい口付けに亜佑美は朝陽のバスローブを縋るように掴み、与えられる心地良さに応えていく。
情熱的で深く絡み合う口付けを何度か繰り返すうちに朝陽は慣れてきたのか、亜佑美の咥内を探るように歯列をなぞると亜佑美の背筋が甘く震え、羞恥心と興奮が湧き上がる。
何度も何度も重ねられた口の端からは唾液が溢れていき、クチュクチュと厭らしい水音が響いていくと、亜佑美の下腹部は疼いていく。
「……っん、……はぁっ、あ、さ……ひ、くんっ、」
息継ぎもままならぬキスに少し苦しくなったのか亜佑美が途切れ途切れに声を上げると、我に返った朝陽がハッとして唇を離した。
「す、すみません、俺……」
いつの間にか自分本位のキスになっていたことに気づいた朝陽が申し訳無さそうな表情で謝ると、
「ううん、……謝らないで……、嫌じゃ、ないから……っ、」
息を整えながら亜佑美は朝陽に謝らないでと声を掛ける。
「……でも……」
「……嬉しいよ、だって大好きな朝陽くんに求められてるんだよ? 嫌なわけ、ないよ……」
「亜佑美さん……」
「……朝陽くん……来て? 私を……朝陽くんだけのものに、して?」
「……っ!」
どちらかが一歩を踏み出さなければ先へ進めないことは分かっていた。
朝陽としては男の自分からという思いがあったけれど、未経験かつ優しいからこそ、なかなかいけずにいた。
それを理解していた亜佑美は、自らが一歩を踏み出さなきゃと思い、いつでも良いよという思いを込めてそれを朝陽に伝えたのだ。
「……俺、初めてだから上手く出来ないかもしれないけど…………でも、亜佑美さんを想う気持ちだけは誰にも負けません……亜佑美さん、好きですーー」
「私も、大好き……」
二人は見つめ合い、朝陽は亜佑美の身体を支えるように抱き寄せると、そっとベッドへ横たえ、その上に覆いかぶさっていく。
コメント
1件
いやあ、もう本当に……ドキドキしながら読みました。お互い緊張してるのに「それ、私も」って認め合えるの、すごく自然で温かい関係だなって思いました。朝陽くんの「想う気持ちだけは誰にも負けません」って台詞、不器用だけど真っ直ぐな誠実さが伝わってきて胸が熱くなりました。初々しい二人の距離の縮め方、すごく丁寧に描かれていて素敵でした✨
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