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照が正式異動を断ってから数週間。
本社では相変わらず忙しい日々が続いていた。
「岩本さん、この資料お願いします」
「午後は打ち合わせ三件です」
💛「分かった」
スケジュールはびっしり。
それでも照の表情は以前より穏やかだった。
終わりが決まっているから。
半年後には帰る場所があるから。
その安心感が支えになっていた。
────────
支社。
💜「あれ?」
辰哉はデスクを見回す。
照が座っていた席。
今は別の社員が使っている。
頭では分かっている。
それでも、ふと視線が向いてしまう。
🧡「深澤さん」
💜「ん?」
🧡「また見とる」
💜「そんなに分かる?」
🧡「分かる分かる」
康二は笑う。
🧡「あと三か月くらいやろ?」
💜「うん」
🧡「あっという間や」
💜「そうだといいけど」
────────
金曜日の夜。
恒例になったビデオ通話。
💛「今日さ」
💜「うん?」
💛「部長に褒められた」
💜「ほんと?」
💛「珍しくな」
💜「じゃあ今日はご褒美の日だ」
💛「何それ」
💜「コンビニで好きなの買って帰って」
💛「子ども扱い」
💜「違う」
💜「頑張った人扱い」
照は少し照れながら笑う。
💛「じゃあアイス買う」
💜「二個ね」
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💛「なんで二個?」
💜「一個は俺の分」
💛「帰るまで溶ける」
💜「じゃあ帰ってきたら買って」
💛「約束」
画面越しに笑い合う。
会えない日々が続いても。
笑う回数は減らなかった。
────────
翌週の日曜日。
照は珍しく一日だけ完全な休みになった。
午前中。
部屋の掃除をしていると、小さな段ボールが出てくる。
中には高校時代の思い出。
卒業アルバム。
文化祭の写真。
そして。
少し色あせた映画の半券。
💛「懐かしいな」
裏を見る。
小さな字で書かれていた。
『また来よう』
辰哉の字だった。
照は思わず笑う。
💛「覚えてるかな」
その写真をスマホで撮り、辰哉へ送る。
数秒後。
💜「まだ持ってたの!?」
💛「出てきた」
💜「その字めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」
💛「捨てられなかった」
しばらくして返信が来る。
💜「俺も」
💜「同じ半券、まだある」
照は思わず吹き出した。
離れていても。
考えることは、昔からあまり変わらないらしい。
────────
その夜。
辰哉はベッドに寝転びながら、照から送られてきた写真をもう一度見返していた。
五年前には、思い出を見るのが苦しかった。
でも今は違う。
「あの頃」に戻りたいんじゃない。
「あの頃」を超えていきたい。
そう思えるようになっていた。
窓の外では、小さな花火が上がる音がした。
辰哉はその音を聞きながら、小さく笑う。
💜「来年は」
💜「一緒に見よう」
その約束は、誰に言うでもなく夜空へ溶けていった。
コメント
1件
照さん、本社で忙しくしながらも表情が穏やかになったの、ちゃんと「終わりがある」安心感が支えになってるんだなあと感じました。辰哉さんがふと照さんの席を見ちゃうところ、すごく分かります。でもお互いに笑う回数は減ってなくて、むしろ増えてる気がして温かい気持ちになりました。高校の半券エピソード、二人とも同じものを持ってるのが素敵すぎます…「あの頃を超えていきたい」という辰哉さんの言葉に、この物語の優しい成長を感じました。