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和泉さんと千歳さんが次々運んできてくれた料理は、どれも素晴らしかった。
ポテトサラダ乗せクラッカー。ポテトサラダは塩もみきゅうりたっぷり、ピーマン少しが入った軽いもので、いくらでも食べられてしまいそうだった。
鮭としめじのアクアパッツァ。鮭・しめじ・アサリのうまみが渾然一体となっていて、舌鼓を打つというのはこういうことなのかと思った。
シーザーサラダ。ロメインレタスに大ぶりのクルトンとたっぷりのチーズが散らされていて、温泉卵との相性も完璧だった。
牛肉の赤ワイン煮込み。しっとりほぐれる牛スネ肉と、ワインとトマトの酸味がたまらない。
いろいろ食べながら、私はため息を付いた。
「千歳さん、本当に料理うまいですね……!」
料理がうまいだけでなく、好きなのだろう。一生食べる専門でいたい私には、とても真似できない。
『へへへ、まあ毎日作ってるから』
千歳さんは照れくさそうにした。和泉さんは気を回して私にいろいろ配膳してくれて、私をもてなしてくれてるのはすごくわかったが、私は、和泉さんが千歳さんに完全に胃袋を掴まれてることを肌身で理解してしまった。
いや、でも、もともとこの話千歳さんが家事全般やるからどう? って話だったし! 別に状況は何も悪い方向に変わってない!
食べながら、和泉さんと千歳さんと世間話をした。
「保健師って、どんな事するんですか?」
「もう、いろいろですよ! 基本は健康診断と健康相談なんですけど、看護師資格もあるんで採血だのなんだのにも駆り出されて」
総合病院はどこも人手が足りない。資格があると便利に使われてしまう。資格があれば食いっぱぐれないのと表裏一体だから、仕方ないんだけど。
『ワシ、咲さんと和泉が結婚したら家事全部やるから、忙しくても全然安心だぞ!』
千歳さんがぐっと親指を立ててアピールしてきた。千歳さんとの関係は本当に全然心配ないんだよなあ、嫁姑戦争にはならなさそうなんだけど。
和泉さんが慌てて千歳さんを諌めた。
「千歳、先走りすぎだから!」
『お前の条件を有利にしてやってるんだろうが! あ、あと、ワシ、和泉さんと咲さんが結婚するならこの辺に家買ってやるからな、予算9950万円まで』
「9950万円!?」
目玉が飛び出るかと思った。え、和泉さんってフリーランスWebライターでしょ、どこにそんなお金あるの!?
「いや、千歳、だから先走り過ぎだから!」
『ワシの金なんだから、ワシの好きに使っていいはずだ!』
「それはそうなんだけど! 高級スイーツとかに使ってくれて全然構わないから!」
9950万円高級スイーツに使うって、金粉でも山盛りにのせないと無理じゃない?
「え、ええと……千歳さんのお金、ってことですか?」
私は、なんとか言葉を絞り出した。
『そう。ワシ、いま、関東と関西の素質のある家に、すごく霊力込めた組紐作って納めてて、10本納めたら一億もらえる予定なんだ。今もう7本納めたから、7千万あるんだ。50万くらいお菓子と地震の寄付に使うけど、それ以外は全部こいつの結婚のために使ったっていいんだ!』
千歳さんは和泉さんを指さした。和泉さんは「頼むから、話をものすごく先に進めないで……」とため息を付いた。
「すみません咲さん、その、付き合い始めですから、なんかこう、しばらくは咲さんと会って一緒に楽しく過ごせれば、私はそれだけで十分なんですけど」
「そ、そうですね」
私はなんとかうなずいた。それはそう。結婚前提で行くとしても、その前に和泉さんとそれなりにデート重ねて、楽しい時間を過ごしたいし。
『じゃあ、お前しっかりデートのリードしろよ!』
千歳さんは和泉さんをどついた。和泉さんはうめいた。
「ど、努力します……」
「いえ、別に肩肘張る必要なんてないですよ、話し合って、二人で楽しく過ごせるところ行きましょうよ」
私は和泉さんに笑いかけた。男性が自分の適性に合わない男性らしさを頑張るの、害悪しか産まないと思ってる。和泉さんは、話し合えばいい案を自然に出してくれる人だから、別に無理にリードなんてしてもらわなくて全然いい。
#幽霊
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がくじゅつてき・あかげ
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わーい
41
485
「……ありがとうございます」
和泉さんは、なんだか安心したように笑った。
『あ、最後にデザート出すな。びわのコンポート冷やしてあるんだ』
千歳さんが台所に引っ込んで、お盆に小さな器を3つ乗せて持ってきた。
オレンジ色の果実。多分白ワインで甘く煮てある。旬の果物、そのまま食べるのが一番だと思ってたけど、ひと手間加えるとこんなにおいしいんだ……。
食事の締めくくりとしては最高だな。あと、和泉さんは結婚相手としては破格の条件を備えていることもわかってしまった。
和泉さんの中で、私が千歳さんより大きな存在になれるなら……取りに行くぞ、絶対にだ。
コメント
1件
わあ、千歳さんの料理の数々、どれも美味しそうで読んでるだけでお腹が空いてきました…!特にアクアパッツァの描写が素敵で、鮭としめじとアサリのうまみが渾然一体っていう表現に思わずうなずいちゃいました。 それにしても千歳さん、9950万円の結婚資金用意って破格すぎますよ(笑)和泉さんが慌てて「先走りすぎ」って止めるのもほっこりしますね。最後の「取りに行くぞ」という咲さんの決意が力強くて、この関係がどう育っていくのかすごく楽しみになりました。温かいエピソードをありがとうございます🌷