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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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***






台風が過ぎたばかりの空は、雲ひとつない晴天だった。



私は玄関を出てすぐ、日差しの強さに目を細めた。





「おはよー!澪!待ってたよー!」



教室に着くと、杏が真っ先に私に駆け寄ってきた。



杏の顔はいきいきしていて、これからいい報告があると信じきっている。



私は苦笑いした。



「おはよう。


 今日帰りにハンバーガー食べて帰らない?

 話はその時に」



今日は始業式とHRだけで、授業はない。



私の提案に、杏は「えーっ」とあからさまにがっかりした。



「ハンバーガーはいいけど、今聞きたいよー。


 めっちゃ楽しみにしてたのに!」



「ごめんごめん。


 けど、今じゃちゃんと話せないからさ」



「わかったよー。なら放課後楽しみにしてる!」



「うん、放課後にね」







それからしばらくして気付いたけど、中庭で私とレイがキスしていたという噂は、思った以上に広まっていた。



始業式からクラスに戻った時、佐藤くんにも聞かれた。



「広瀬、あの噂って……」



「あぁ、うーんとね」



私は今日何度目かの苦笑いをする。



「あれは交換条件で……。


 けど間違ってもないんだ」



「えっ、そうなんだ。


 ならレイさんと付き合ってんだね」



「……うん、たぶんそうだと思う」



「ちょっと。


 たぶんそうだと思うって、広瀬」



驚いたのか、心配そうな佐藤くんの目が細くなった。



だけど、私はやっぱり苦笑いしかできない。



お互いのことが好きでも、私とレイが「付き合ってる」のかは微妙だし、きちんと説明するにも時間がかかる。






「で、レイさんとのデートはどうなったの!?」




ハンバーガーショップで席に座るなり、杏が早速切り出した。



店内は私たちみたいな学生ばかりだった。



しんとしているより、ガヤガヤしてるこれくらいがありがたい。



「えっと、話せば長くなるんだけど……」




レイが私のお父さんを探してくれていたこと。



レイに告白して、両想いになったこと。




そこまではすごくはしゃいで聞いていた杏だけど、レイがアメリカに帰ってしまったと話した途端、思いっきり身を乗り出した。



「えっ!レイさんアメリカに帰っちゃったの……!?」



「うん。レイは大学生で、夏休みを利用して遊びに来てただけなの」



「それなら……澪たち遠恋になるってこと!?」



「そうだね。そうなるかな」







遠恋。



言葉にすればたったひとことだけど、私とレイを繋ぐものはメールアドレスだけ。



好きだと言ってくれたレイの気持ちはちゃんとわかってる。



だけど離れ離れは不安だし、怖い。



しばらく黙っていた杏は、急に席を立った。



「えっ、杏?」



「ちょっと待ってて!」



唖然としていると、少しして杏がトレーを手に戻ってきた。



なにをするのかと思えば、買ってきたばかりのハンバーガーとポテトを私のトレーに置き、私のを自分のトレーに乗せる。



「それもう冷めちゃったでしょ。私がそっち食べるから、澪はこっち食べなよ。


 とにかく食べて!!

 食べなきゃ元気でないじゃん!!」



「杏……」



杏は怒ったような顔で、冷めた私のハンバーガーをかじる。



それを見て胸が詰まった。



食欲なんて初めからなかったけど、私はハンバーガーの包みをあける。



一口かじると、とても温かかった。



「ありがとう、おいしいよ」



「でしょ? 話は全部食べてからだよ!」



やっぱり杏は怒ったような顔で、私はそんな杏に笑って頷いた。








食事が終わって一時間後。



杏が出した結論は、「とにかくレイにメールを送ってみる」だった。



「話はわかった。


 不安だろうけど、レイさんは絶対、絶対、澪のことがすっごく好きだから!!


 腕時計、持っててって言われたんでしょ?

「またね」って言われたんでしょ?


 それならきっとまた会いに来てくれるよ!


 ファイト、澪!」



杏は必死になって私を元気づけてくれた。



杏がそう言ってくれると、そうかもしれないと思えるから不思議だ。



レイにもらった腕時計は、鞄の中にある。



本当はつけていたいけど、私がつけると不自然なほど大きいから、お守りみたいに持ち歩いていた。




杏の励ましに後押しされ、私はその夜、レイに英語でメールを送った。





―――――――――――――――――



レイへ。




澪です。L・Aには無事着いた?



私のほうは、今日から新学期が始まったよ。




―――――――――――――――――







悩みに悩んだ挙句、やっと送れたのは挨拶みたいな文章だった。



ただそれだけでも1時間は文字を打ったり消したりしたし、送ってからはその倍以上の時間、そわそわしっぱなしだった。



レイから返事が来たのは、翌朝、登校中の電車の中だった。




―――――――――――――――――



澪、メールありがとう。



無事着いたよ。

俺は来週から授業が始まるんだけど、今期はかなり頑張らないといけないんだ。


澪も勉強頑張って。



―――――――――――――――――




(レイ……!!)




私はメッセージを読んで、電車の中で飛び上がりそうになった。




嬉しい。嬉しすぎる。




英文を暗記するほど眺めているうちに、電車が駅に到着した。



ふわふわした気持ちでスマホをしまいかけた時、もう一通メールが届いた。




























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