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「だからさ。一旦、そのピース、透子が持ったままでいてくれない?」
「どういうこと・・?」
「きっと今の状況が変わらない限り、透子はオレとの人生のパズルこれ以上もう完成させようとしないでしょ?」
「それは・・・」
「だから。オレがまた透子の前に一人前になって戻って来たら、またピース完成させてよ」
「でも・・・もう樹の相手は私じゃないから・・・」
「・・・それを決めるのはオレ。誰とこれから一緒にいて、誰と結婚して、どうするかはオレが決める」
オレは透子を手放す気はないよ。
ただ今透子を自由にしてあげるだけ。
オレのことを考えて、周りのことを考えて、苦しんでる場所から解放してあげるだけ。
透子には目の前のことしかわからないから、この先の未来はまだ知らないから、だから今はもうこうするしかない。
透子の為に今は離れるだけ。
まだ透子が安心出来る時間も力も今のオレには全然足りていないから。
「正直まだこの状況は今すぐ変えることは出来ない。だから今このまま透子と一緒にいても何も変わらない。このままじゃオレは透子を笑顔にしてやれないし、幸せにしてやれない」
「うん・・・わかってる・・・」
「今のオレ達にはどうやっても時間が必要。でも・・・オレの人生のパズルはさ、まだ未完成だから、また来るべき時が来たら、その時はまた透子が一緒に完成させてほしい」
決して今は離れるだけで、永遠の別れを選ぶワケじゃない。
「だけどオレの都合で透子を縛ることは出来ない。オレと離れてる時間、透子の人生は同じように進んでいって、もしかしたらオレ以外の誰かを好きになるかもしれない」
本当はこんなこと言いたくない、考えたくない。
ようやく手に入れられたのにまた手放さなきゃいけないなんて、苦しくて胸が押しつぶされそうだけど。
また他の誰かに透子を取られるだなんて、考えるだけで気がおかしくなりそうだけど。
だけど、今のオレにはどうしようもない。
今のオレは透子を縛り付ける資格はない。
「でもいつか必ずまた透子の元に戻って来る」
だけど、それだけは約束する。
絶対戻って来る。
「いいの? そんなこと言って」
「だって・・・お互い無理でしょ。他の相手との将来なんて」
「すごい自信」
だけど、今はなんとなく透子は待ってくれている気がして。
そう考えていれば、頑張れる気がするから。
「ずっと言ってんじゃん。オレを信じてくれたらいいって」
「それはここまでになる前の話で・・・」
「透子は、でしょ。オレは最初から今までその気持ちは変わってないよ。オレにどんなことがあっても信じてついてきてほしい。それだけは変わらない」
「えっ、ここまでの状況になってても・・・?」
「そっ。オレは透子と出会った時から透子への気持ちは一切変わってない。現にオレのこの環境は最初からわかってたことだから。だけど、それでも透子と一緒にいたいと思ったし、どうしても透子を手に入れたかった」
だからオレの気持ちはどうか知っていてほしい。
透子は出会ってからずっとオレには必要な人だった。
透子への想いも、オレにとってどれだけ大切なのかも、出会ってからずっと変わらない。
「だけど、それで透子を困らせたかったワケじゃない。透子がいたら、この決められたオレのつまらない人生が変えられると思った」
自分のこの先の決められた人生がいつどうなるかなんて、正直わからなかったけど。
だけど、オレの人生の中に、透子はずっといてほしいと思った。
透子と出会った時から、オレの人生はそれでも変わっていったんだ。
何の希望も光もなかった人生が、透子がいてくれたことで輝き始めたんだ。
「だけど・・。変えられなかったね」
透子はそう悲しそうに笑って呟く。
「・・・なんで? まだオレの人生終わってないけど」
「いや、それはそうだけど」
「オレの人生の長い時間の中でさ、ほんの少しだけ透子と離れるだけ。でも透子と出会うタイミングはオレにとってあの時じゃないとダメだった。そして、これから先また一緒にいられる為にこれから離れる時間もどうしても必要」
「これから先いつか・・・また一緒にいられる時が来るって信じていいってこと?」
そう。これは悲しい別れじゃないから。
前向きに少し離れるだけ。
「どうせオレ以外誰も好きになれないんだからさ。ずっと好きでいて信じて待っててよ」
「そうだね~! 結局ずっと樹好きでいちゃうんだろうなぁ~! 悔しいけど」
「もし離れてる間、透子が他のヤツ好きになったとしても、またその時が来たら奪いに行くから覚悟しといてよ」
忘れた頃に戻って来るよ。
その時、透子の隣に誰かいたとしても、また奪い去るから。
きっとその時はもっと自信をつけて、もっと好きになってもらえるオレになってるはずだから。
「じゃあ、私樹から逃れられないね」
「当然。いつか透子に相応しい男になって帰って来るから待ってて」
「わかった・・・。きっと私はこの先ずっと樹を好きでいると思うから。もし、いつか一緒にいられる幸せが本当にやってくるとしたら、その時まで、待ってる」
透子のその言葉があればオレはきっと何年かかっても頑張れる。
「じゃあ、その時まで一時のお別れしちゃうけど・・・透子、平気?」
「・・・そっちこそ」
「まぁ~オレは正直辛いけど・・・なんてね。大丈夫。もう透子困らせないから」
世間的にはきっとこれは別れというモノで。
結局戻って来る、待っていてと言ったところで、一旦この関係性は終わる。
もう透子はオレのモノじゃなくなってしまう。
だけど、もうオレもそれを受け入れるって決めたから。
「ここから透子とオレは一旦他人になる。これからは会社で会ってもオレは一切気持ちを封印する。そうじゃないと、多分オレがケジメつけられないから」
だからオレはその時が来るまで、透子への想いは閉じ込める。
その時までもう会わない覚悟で、オレは頑張るから。
「うん。わかってる」
そしてそれを受け入れてくれる透子。
きっとこれが今の二人の答え。
こうすることでしか守れないお互いの気持ちとお互いの未来。
無理にこのままいても、またお互い傷つけあって、そのまま離れてしまうのなら。
このままお互いを想ったまま別れる方がいい。
透子をこれ以上苦しめたくないから。
実際、その時が本当に来るかなんてわからない。
それは全部オレ次第で、賭けで、運で。
だから、保障できない未来へ透子を連れて行くことは出来ない。
「透子・・・。今までありがとう」
「・・・こちらこそ。今まで・・・ありがとう」
”ありがとう” と、いう言葉が。
こんなにも辛くて、切なくて、痛くて、苦しい言葉にも変わってしまうだなんて、初めて知った。
その言葉の中に、これまで何年も透子を想い続けたオレのすべてを込める。
そして、その想いを、オレは今日ですべて、その言葉の中にしまいこんだ。
透子。
あなたはオレのすべてでした。
どんな時もあなたがいてくれたから、オレは救われて頑張れた。
オレにとって、あなたに出会えたことは、奇跡みたいなモノで、オレのすべてを輝かせてくれました。
こんなにも人を愛することが出来て、こんなにも大切に想えて、本当に本当に幸せでした。
ずっとあなたの傍にいたかった。
ずっと傍にいてほしかった。
ずっとそのまま微笑んでいてほしかった。
本当は誰にも渡したくない。
一生自分のモノにしたい。
こんなにも好きで、好きで。
気が狂いそうなくらい愛しい人なのに。
本当はここからあなたと離れてしまうなんて、考えるだけでこの胸が張り裂けそうなのに。
初めてこんなに人を好きになって、誰より何よりいちばん大切だった。
きっともうこんなにもあなたほど好きになれる人なんかいなくて、この想いも決してなくなりそうにもなくて。
こんなにも好きなのに、自分から手放さなきゃいけないなんて、苦しさで押し潰れそうになるけど。
だけど、今はこうするしかないから。
あなたにとっても、オレにとっても、お互いが壊れてしまう前に、離れた方がきっといいから。
もうこの先、あなたといることは、もしかしたら叶わない未来になるかもしれない。
本当にもうこれであなたとは最後になるかもしれない。
だけど、オレはきっとずっと、あなたをずっと愛し続けると思います。
この世に永遠なんて、あるのかはわからないけど。
あなたの運命の相手も永遠も、オレなのかはわからないけど。
だけど、きっとオレにとってあなたはそうであり続けるから。
だから、必ずいつかまた迎えに行きます。
いつかまたあなたに好きになってもらえるように。
あなたと一緒にいられるように。
その時まで。
また待っていて、透子。