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「くううう!! バ、バカな……!? どうして通用しないんだ……」
「その片手剣……もしかして、魔法耐性が?」
「ち、違う! そうじゃないはずなんだ」
いきなり攻撃してきた剣士を名乗る男、デミリス。彼とおれは剣を交え始めた。おれの剣は錆びが生じているうえ、相手の力量が不明ということもあり手加減に加えて軽めの魔法を撃った。攻撃のメインは炎属性だが、これは相手が望んだものであっておれの意思じゃない。
お互い手にしていたのが偶然にも片手剣同士。だからこそ当初は剣だけで戦うつもりだったわけだが。
「お前が手にしているその剣は錆びがひどい。ジョブなしと言ったが、本当は魔法を得意としているはずだ! 錆びた剣で何かするのではなく、オレに対し魔法を放って来い!」
剣士を名乗るデミリスは、錆びた剣では割に合わないと判断し、その結果が今に至る。
「仮におれの魔法をあんたに放てば一瞬で終えることになるが? ……いいんだよな、それで?」
「オレの片手剣を目がけて魔法を放つだけでいい! この片手剣には魔法が一切効かないからな!」
どうやら相当な自信を持っているようだ。剣同士の戦いでは無く、剣と魔法の勝負はどう考えてもハンデを伴う。だがおれにこの勝負を断る理由は無い。
「ふっ、砦の中から感じていたお前の魔力が尽きた時、勝負はあっさりつくだろう……」
おれは発動する予定だった水属性魔法を止め、炎属性魔法を連続発動させることに。彼が言うように魔力は無限でもないことを表すためだ。
威力を最小に抑えた炎属性で相手の剣にぶつける。
それだけのことだったが――
「そんなバカな……!? この剣が魔法に耐えきれないなんて、そんな……そんな――!」
「どうやらその剣は魔法剣でも無ければ魔法耐性剣でもないみたいだな。どうする? あんたさえよければ、こっちの錆びた剣で改めて相手をするが?」
「……くっ、分かった。それで受けて立つさ」
取り乱すデミリスが落ち着くのを待ち、おれは錆びた剣を手にする。その合間、彼が手にしている片手剣を観察してみたものの、特に何も感じられなかった。
魔法には耐えていたところをみれば潜在的に何かありそうな剣には違いないが、単純に使いこなしていないだけだと思われる。果たして剣のスキルはどれくらいあるだろうか。
「悪いが錆びた剣だろうとオレは手加減しない!」
今までは宝剣フィーサに頼って剣を握ってきた。しかし錆びた剣を手にするまでは拳と魔法だけで戦ってきていることを、今さらながら思いだす。そんな状況下で剣士とどこまで戦えるのか。
彼――デミリスが持つ剣は直線に伸びた長い両刃の刀身。見た目だけなら何とも厄介そうな感じを受ける。
「ぬぅうあああ!!」
間合いは広く取ってもらった。しかしこれは相手をわざと懐に飛び込ませる作戦に過ぎない。相手が剣士であるならば自分に実力があると思わせた方が得策だからだ。
「く、うっ……」
デミリスの剣先がおれの鼻先を僅かな距離で軽くかすめる。本来なら姿勢を低く屈めて相手の出方を待つのだが――シュッ、と刃先を鳴らしてくるデミリスはまだおれに油断を見せてくる。
「はぁぁっ!! はは、さっきまでの余裕はどうしたんだ? それとも剣士相手では手も足も出ないのか?」
「そう言うが、おれはまだ片手剣の使い勝手を掴めていないんでね」
やはりフィーサと比べると使い勝手は良くないようだな。
「どうせその錆びた剣は冒険者を殺して得たものなんだろ? 剣をまともに使う気が無いなら大人しくするべきだ!」
「そうじゃないんだが」
「悪いが剣だけでもオレとお前じゃ差がありすぎる。殺しはしないが、決着をつけさせてもらう」
錆びた剣を言い訳にしても仕方がないので、ソードスキルを使わせてもらう。両手剣や片手剣に関係なく、スキル発動と同時に相手の喉元に剣先が届く。剣士相手にムキになるわけではないが圧倒的実力の差を示して大人しくさせる必要がある。
デミリスは剣先を見せながら、徐々に腰を低く落とし始める。しかし、おれは錆びた剣をまるで両手剣のように持ち上げ、顔の前に置いて構えを見せた。
「――終わりだ、アック・イスティ!」
すり寄るデミリスの間合いを感じながら、口中に溜めていた息をふぅっ。と大きく吐く。ほんの一瞬目をつむり、大きく見開いた直後は相手の喉元を目がけ――
「駄目なのっ! イスティさま!!」
この声は!?
声と同時に飛び込んで来たのは、割って入ってきたフィーサだった。
「えっ、フィーサちゃん?」
緊張状態にあったデミリスからは何とも気の抜けた声が出ている。
ここにフィーサがいるということは、もしかして?
「フニャァァ~!! アック、アックがいるのだ~!」