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#ご本人様には関係ありません
柔太郎に手を引かれながら事務所内を歩いていく
繋がれている手の熱さは俺のものなのか、彼のものなのか
事務所のスタッフさんたちに挨拶をしながら、だんだんと人気のない場所へと歩みを進めていく
行きついたのは事務所の一室
俺が勇斗に想いを寄せて苦しんでいた時に彼に連れてきてもらった部屋
そして、彼の想いを初めて聞いた場所
柔「…仁ちゃん、入ろ」
俺が小さく頷くと相変わらず手は繋いだままで室内へと入る
以前は向き合って座った古びたソファに、今度は肩が触れる距離に座る
…なんでこいつ手、離さないんだよ
緊張がバレるだろ
柔「ねぇ、仁ちゃん。なんか俺に言うことない?」
仁『…ない』
柔「ほんとに?」
仁『…ほんとにないもん』
柔「…仁ちゃん、俺そろそろで我慢できなくなるけど」
我慢できなくなるって何をだよぉ…
だってついさっきお前への好意を自覚しちゃって、自分で自分の感情に戸惑ってるのに
それを本人に伝えるなんて無理
絶対むり
だんまりを決め込んで俯いた俺に突き刺さる横からの視線
柔「…まぁ、初心な仁ちゃんは自分から言うなんて無理かぁ。しかもヘタレだしなぁ」
…あ?
誰が初心でヘタレじゃ
柔「あーあ。俺ずーーっと待ってるのになぁ。まだ待たなきゃいけないのかぁ」
はぁん?
言えるし
舐めんなよ。俺、九州男児だからな?
薩摩隼人だぞ?
チェストだぞ?
仁『言えるから!俺が今から言おうとしてたのにお前が我慢できなかっただけだろ⁉』
あ
しまった
完全に嵌められた
だって目の前のこいつ、すっげぇ鼻の下伸びてるし
柔「ふ~ん?じゃあ言って?俺黙っとくから」
くそッ
…よし
覚悟を決めるんだ、吉田仁人
仁『…じゅう、のことが、…き』
柔「…聞こえなかったから、もう一回言って」
仁『っ…!だっからっ、じゅうたろうのことが、すっ、すき…って』
情けなく震える声で伝える
柔「…もう一回」
仁『あ~もうっ!だから、!じゅうたろうのことが好きだって、うわっ!」
なんとか声を張って想いを伝えた瞬間、横からものすごい勢いで抱きつかれる
柔「じんちゃん、じんちゃん…っ!」
さっきまで俺を煽っていたくせに
彼の声も、俺を抱きしめている腕も、体も震えている
柔「ほんとに…っ?ほんとに、俺のこと好きになってくれたの?」
縋るようにそう聞いてくる彼に愛しさが募る
俺もそっと彼の背中に手をまわす
仁『…ほんとだよ。俺は柔太郎が好き。…いうて、さっき自覚したばっかだけど』
俺がそう告げるとさらに強い力で抱きしめられる
でも、文句は言えなかった
だって、俺の肩に顔を埋める彼が泣いているから
柔「っ、ありがと、じんちゃん…俺のこと、好きになってくれてありがとう…っ!」
そう言ってまた泣きだす彼
そりゃ、もう赤ん坊みたいに
…お前、俺の肩に鼻水つけてないだろうな
仁『俺も…、ずっと俺のこと好きでいてくれて…諦めないでいてくれてありがとう』
仁『待たせてごめんね…じゅう、好きだよ』
子どもをあやすように彼の背中をトントンと優しくたたく
柔「…待った甲斐があったわ。俺も仁ちゃんのこと、愛してる」
ボンっと顔が爆発したかのように熱をもつ
柔「ねぇ…、仁ちゃんの心臓すっごいドキドキしてない?笑」
仁『…そりゃあドキドキもするでしょうよ。好きな人と好きの言い合いしてるんだから』
その瞬間
視界が傾いたかと思うと目の前には天井と、柔太郎の顔
目が合った彼の瞳の奥に性を感じて目を逸らしたくなる
それでも目が逸らせないのは惚れた弱みなのかー
柔「…仁ちゃん、」
仁『…なによ』
柔「こんぐらいでドキドキしててどうすんの?…これからもっとすごいことしていくんだよ?」
そう言って俺の着ているシャツのボタンをひとつ外す柔太郎
…ん?
まって、まって、まって、まって
え?
…え⁉
顔を真っ赤にしながら言葉にならない声をあげる俺
そしてだんだんと鼻の下を伸ばしていくこいつ
その顔テレビだったらモザイクかけられてるレベルだぞ
仁『…ばかにしてんだろ』
柔「ばかにはしてないよ笑」
仁『絶対ばかにしてんじゃん!…わるかったな、20代後半のおいちゃんなのに初心で』
っちゅ
柔「ばかにしてるんじゃないよ。かわいずぎてどうしようかなと思ってるだけ」
柔らかく微笑んだ彼に再び抱きしめられる
え。まって。いま、なにしたこいつ
ちゅってしたよね、ちゅって
え?ちゅうした?いま?
仁『じゅう…?いま、え?おれたち、ちゅうしたの…?』
俺の顔の横に手をついて、鼻と鼻が触れるくらいの距離で見つめ合う
柔「…したよ。俺たち、いま、ちゅうしちゃったんだよ」
途端に恥ずかしさがマックスになって、顔を両手で覆う
柔「じんちゃん、顔みせて?」
仁『やだ…っ、みせたくない、はずい、むりっ』
俺の両手をどかそうとする柔太郎と、手にありったけの力を込めて抵抗する俺
何やってんのよ、俺ら
ー勝敗はもちろん、
柔「かお、まっかだよ、かわいいね」
仁『~~っ‼見んなってっ、はずいって、もぉ…っ!』
こいつ見た目ひょろいくせに力ありすぎだろ、人類のバグだろ
柔「…仁ちゃん、」
仁『…なに』
俺の手を掴んでいた彼の指が、俺の指を絡めとる
目が合って
鼻が触れて
そして、唇が重なった
仁『ん…、っふ、』
柔「…仁ちゃん、鼻で息するんだよ」
仁『…むり、いきできない、』
柔「…かわいすぎんだろっ…!」
仁『っ‼』
さっきまでただ唇をあわせるだけだったのに
それだけで心臓が壊れちゃうんじゃないかって思ってたのに
俺の口の中で暴れる熱いモノ
それが何かなんて分かりきってる
耳元に響く艶めかしい音
彼の舌が俺の上顎をなぞった瞬間
仁『あっ…!んん…やっ…!』
合わさった唇の隙間から、俺のものじゃないような甘ったるい声が聞こえて、耳を塞ぎたくなる
背中がぞわぞわして、同時にふわっと感じるこれがなんなのかなんて
下半身に熱が集まるのがどうしてかなんて、わかりたくもない
熱に侵されながらどうにか息をしようとするがうまくいかない
だんだんと苦しくなってきて、全く力が入らない体で彼の熱から逃げ出そうと身を捩る
そのことに気付いた彼がゆっくりと俺から顔を離す
…ここで強引に続けないところに彼の優しさを感じてまた好きが募る
ぜったい本人には言ってやらないけど
お互いの唇から荒い息が漏れる
仁『はぁ…っ、お、まえ、がっつきすぎっ…!言ったよね、おれ、初心なおいちゃんなんだってば!もっと労わりなさい!』
押し倒されたまま悪態をつく
柔「…だって仁ちゃんがかわいすぎるから。だから俺が悪いんじゃなくて、仁ちゃんが悪いよね。これに関しては、完全に」
仁『なんでよ!意味わからん!』
さっきまでの甘い雰囲気はどこへやら
いつものように言い合う俺ら
お互いに可笑しくなってきて、二人で笑い合う
柔「じんちゃん、俺ね、いま、すっげぇ幸せ」
彼が本当に嬉しそうに笑っていて
その姿を見ると心が温かくなるから、『俺はこいつのことが好きなんだな』と改めて実感する
仁『…俺も。俺も、いま、すっごい幸せ』
そしてまた二人で笑い合って、抱きしめ合った
知らなかった彼の恋心を知った
お互いに苦しい時期もあった
でも
彼の恋心は俺を優しく包んでいって
俺が知らなかった≪両想い≫の幸せを教えてくれた
そして今ー
俺は愛しい彼の恋人になりました
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