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一つ屋根の下、地雷注意報

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一つ屋根の下、地雷注意報

29 - 第二十七話:「何も言わないくせに、全部伝わる」

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2025年05月27日

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ただいまも言わずに帰ってきた“るか”は、いつもみたいに目を合わせないで、リビングを素通りしていった。


別にそれが珍しいことじゃないのに、

今日の背中はなんか、ちょっとだけ固い感じがした。


ソファで寝転がってたふりをしながら、

俺はテレビの音なんてほぼ聞いてなかった。


(なんかあったのか、今日)


たぶん、聞いても「別に」って言われる。

それでも何となく言葉を探して――


「今日、なんかあった?」


俺がそう言うと、案の定、


「……別に」


静かな声が返ってきた。


やっぱりな、と思いながらも、

その“別に”の間にあった、わずかな間(ま)みたいなものが気になった。



冷蔵庫から何か取って戻ってきた彼女が、

ソファの端にそっと腰を下ろす。


その距離は、近すぎず、遠すぎず。

絶妙なライン。


彼女のスマホをいじる指が止まるタイミングで、

ふと、こっちを見た気がしたけど、気のせいかもしれない。



「麦茶飲む?」


いつもは返事すらされないのに、今日は


「いらない」


ってすぐに返ってきた。


だけど、それがなんとなく――

“欲しくない”って意味じゃない気がして。


何も言わずに、コップに注いでテーブルに置いてみた。


あいつは何も言わなかったけど、

しばらくしてから、麦茶がほんの少し減ってるのに気づいた。


(あー……ちゃんと飲んでるじゃん)


どうでもいい顔して、ちょっとだけ喉が鳴ってた。

それだけで、少し安心した。



言葉じゃわからないことばかりで、

でも沈黙の中の空気で伝わることもある。


あいつの“別に”の裏には、

たぶん毎日、いろんなことが詰まってる。


でも俺に見せるのは、まだほんの一部だけ。


(……まあ、今日はそれでいいか)


夜が少しずつ深くなっていく中、

いつか全部がわかる日が来るのか――そんなことを少しだけ考えた。


一つ屋根の下、地雷注意報

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