テラーノベル
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カーテンの隙間から、
朝の光が差し込んでいた。
静かな部屋。
規則正しい寝息が、二つ。
一つは、ベッドの上。
もう一つは――
ベッドの横。
こさめは、
ベッドに突っ伏すような姿勢で、
眠っていた。
手は、
まだ繋がれたまま。
そして、
その手を握っているのは、
いるま。
ぎゅっと、
離さないまま。
まるで、
離したら消えてしまうと、
思っているみたいに。
コンコン
「いるまー?起きてる?」
ドアの向こうから、
らんの声。
返事はない。
「入るぞー」
ガチャ
ドアが開いた。
そして。
「……」
らんは、
固まった。
視線の先。
ベッドと、
その横。
手を繋いだまま眠る、
二人。
「……は」
思わず、
声が漏れそうになる。
慌てて口を押さえる。
(……まじか)
らんの口元が、
ゆっくり緩む。
嬉しそうに。
でも、
起こさないように。
静かにドアを閉めた。
「……よかったな」
誰にも聞こえない声で、
そう呟いて。
それから少しして。
「……ん」
いるまが、
目を覚ました。
ぼんやりした意識。
そして。
手の感触。
「……」
視線を下げる。
そこに、
こさめの手。
そして、
そのまま眠っている、
こさめ。
「……っ」
一気に、
意識が覚醒する。
(なんで)
昨日の夜のことが、
一気に蘇る。
悪夢。
怖くて。
助けを呼んで。
そばにいてもらって。
そして――
手を、
握った。
「……」
顔が、
熱くなる。
恥ずかしい。
情けない。
弱いところを、
全部見せた。
「……」
どうすればいいか、
わからない。
その時。
「……ん……」
こさめが、
少し動いた。
起きる。
「……あ」
目が合う。
一瞬。
時間が止まる。
「……おはよ」
こさめが、
優しく笑う。
その瞬間。
いるまは、
反射的に、
手を離した。
「……っ」
そして、
視線を逸らす。
「……」
何も言わず、
立ち上がる。
「……いるま?」
こさめが、
戸惑った声を出す。
でも、
いるまは、
振り返らない。
「……」
そのまま、
部屋を出ていった。
ドアが閉まる音。
残された、
こさめ。
「……」
さっきまであった、
手の温度が、
消えていた。
胸が、
少しだけ、
痛んだ。
その日一日。
いるまは、
こさめを避けた。
目を合わせない。
近づかない。
話さない。
こさめも、
無理に話しかけなかった。
でも。
心は、
ずっと、
ざわついていた。
(……嫌だったのかな)
昨日のこと。
迷惑だったのかな。
重かったのかな。
考えれば考えるほど、
苦しくなる。
そして。
夜。
こさめは、
一人で、
自分の部屋にいた。
ベッドの上。
ぼんやり、
天井を見る。
コンコン
ドアが鳴った。
「……?」
こんな時間に、
誰だろう。
「……はい」
ドアが、
ゆっくり開いた。
そこにいたのは――
いるま。
「……!」
こさめの目が、
見開かれる。
いるまは、
少し俯いていた。
そして。
小さな声で、
言った。
「……ごめん」
「……え」
「……今日」
言葉を、
探す。
「……避けた」
「……」
「……ごめん」
こさめは、
何も言えなかった。
いるまが、
続ける。
「……嫌だったわけじゃない」
「……」
「……違う」
拳を、
ぎゅっと握る。
「……怖かった」
「……」
「……あんなふうに」
「……誰かに触ってるの」
「……初めてで」
正直な言葉。
震えていた。
「……どうしていいか」
「……わかんなくて」
顔を上げる。
まっすぐ、
こさめを見る。
「……でも」
小さく、
息を吸う。
「……嬉しかった」
こさめの心臓が、
強く鳴る。
「……そばにいてくれて」
「……安心した」
一歩、
近づく。
「……だから」
手を、
少しだけ伸ばす。
「……逃げたの」
弱さを、
認める声。
「……ごめん」
沈黙。
そして。
こさめは、
ゆっくり、
その手を――
握った。
「……!」
いるまの目が、
揺れる。
「……いいよ」
こさめが、
笑う。
優しく。
「……また、怖くなったら」
手を、
少しだけ強く握る。
「……呼んで」
「……」
「……何回でも、行くから」
いるまの目に、
涙が滲む。
「……こさめ」
名前を呼ぶ。
今度は、
はっきりと。
「……ありがと」
その夜。
二人は、
少しだけ、
近づいた。
まだ、
恋じゃない。
でも。
それより、
深いものが、
生まれ始めていた。
コメント
2件
ほわぁぁぁ…(?)