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「ん、、、?」
どこかでチュンチュンとかわいらしい鳥の鳴き声が聞こえる。
カーテン越しに、朝の光が差し込んで、キラキラと輝いていた。
あったかい布団に包まれながら、ゆっくりと目を開けると、いつもの天井が見えた。
何度もまばたきをして、だんだん目が覚めていく。
「あれ、、?」
なんだかほっぺたが変な感じ。
不思議に思って手を当ててみると、ほんの少しだけしめった感覚がした。
指先を見てみると。
俺、泣いてたのかな?
気づかないうちに流れていた涙の感触に、胸がぎゅっと苦しくなった。
どんな夢見てたんだっけ?
思い出そうとしてみるけど、なにひとつ思い出せない。
「ま、いっか」
そう思って、ゴロンとあおむけに寝転がる。
目が覚めても、あったかい布団は,なかなか俺を離してくれなかった。
あったかい。もう少しだけ、このままでいたい。
そう思って目を閉じかけたとき、枕元のスマホがブルブルと震えた。
ちょっとだけ眉をひそめて、手探りでスマホを探す。
見つけて顔の前に持ってきたら、スマホの光がまぶしくて、目がチカチカした。
画面には短いメッセージが二件並んでいた。
「おはよう」
「寝坊すんなよ」
メッセージを送っていたのは、クラスメイトで、そして俺の彼氏でもある篠原らぴす。
とはいっても、小学校からの付き合いの彼との関係は恋人というより、気の置けない友達に近いものなんだけど。
「あいかわらず朝から元気だな」
思わずクスッと笑って体を、起こす。
固まった体をほぐすように、俺は思いっきり伸びをした。
「おは。今起きたわ」
そう送信すると、すぐに既読がついた。
「やっぱり。早く準備しろよ」
まるで隣にいるかのようなやりとりに、小さく笑みをこぼして俺はベッドから立ち上がった。
俺の名前は、白川心音。
中学二年の俺は、寝癖を直し、着慣れた学ランをそでに通す。
鏡越しにぼんやりと時計を見ると、時計の針は午前八時を指していた。
「やばっ、もうこんな時間!?」
あわててカバンを手に取り階段をかけ下りる。
その足音を待ち構えていたかのように、キッチンから母の声が飛んできた。
「またギリギリ!ちゃんと朝ごはん食べて行きなさいよ!」
「わかってる!」
行儀が悪いと父に叱られながら、立ったままトーストを食べ、俺は急ぎ足で玄関のドアを開けた。
夏の始まりの空気は嫌いじゃない。
カラッとした空気と、まぶしい太陽に目を細める。
楽しい一日になりそうな予感に頬がゆるむのを感じながら、俺は朝の通学路を歩きだした。
制服のそでを軽くまくりながら歩いていると、後ろから軽やかな足音が近づいてきた。
「おはよう。心音」
振り返ると、朝から連絡をとっていたらぴすが片手を上げてかけよってくる。
朝の光に照らされた緑髪が少しはねていて、俺は思わず小さく笑いをこぼした。
「おは。今日もらぴすはゆっくりだな」
「だって今日、部活休みやろ?」
そう言いながら、らぴすは自然に俺の隣に並ぶ。
俺は男の子の中では高いほうだから、らぴすとは目線の差がほとんどない。
らぴすは昔から自分の身長を気にしているようだったけど、俺はむしろこの身長差を気に入っていた。
真正面から見える俺の笑顔が、なんだか特別に感じられるから。
「そういえば、今日の放課後予定ある?」
らぴすがそんなことを言い出したのは、通学路の途中のことだった。
俺は制服のそでを指でくるくるといじりながら、歩く速度はそのままで答えた。
「うーん?服屋による予定」
言いながら、横目でちらっとらぴすの方を見る。
案の定、にやりと笑っていた彼に、俺は呆れたように笑った。
#すにすて
505
「じゃあ、そのあとどっか行かん?」
前をまわりこむようにして、らぴすが俺の視界を塞ぐ。
ちょっとだけ汗の光る額が、まぶしい夏の陽ざしを反射していた。
「え、それって決定事項?」
「うん、そやで!」
俺のあきれまじりの声に、らぴすは待ってましたと言わんばかりに親指を立てた。
はぁ……って思うのに、その楽しそうな笑顔にドキッとしてしまう自分がくやしい。
らぴすの少し強引なところは、昔から変わらない。
けれど不思議と嫌いじゃなくて、今はその変わらなさを心地よく感じていた。
俺は肩の力を抜くようにふっと笑って、そのままとなりに並び直す。
制服のすそが風にゆれて、二人の影がぴたりと重なった。
らぴすが隣にいる。
それは、代わり映えのない毎日だけど、それだけで、今日が幸せな一日だと思えるから不思議だ。
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