テラーノベル
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(深澤視点)
「…願いが、叶う…」
みんなが求める強い力は、願いを叶えるため。
そこまでして叶えたい願いっていうのはなんだろう?
何を望んで、強い力を欲するの?
照たちにも願いはあるのかな?
〖主は、ないのか?〗
「…俺に?」
大烏に問いかけられる。
俺の、願い……
「強い力を手に入れて叶えたいとは思わないかな。」
〖……ふむ。〗
「……俺は、”普通”が欲しい…かな。」
〖主は、普通ではないのか?〗
「普通じゃないよ…俺は、既に何回も道を踏み外してる。」
〖それは、過去の主であろう?今の主は、普通とは称せないのか?〗
「……無理、だよ…もう、俺は戻れないの。」
〖……そうか。〗
しばらく、大烏との対話をして、大烏は虚空に消えてった。
俺の強い願い…それは、なんだろうね…?
フードの男みたいな、強い力に対する執着もない。
女みたいな誰かを利用してまで叶えたい願いもない。
メンバーみたいな誰かを守りたいって気持ちも、そう強くないかもしれない。
願い…?
願いって何?
願いは、強い力を持ってれば叶えられるものなの?
だったら俺は、普通になりたい。
普通になって、照たちの隣で笑ってたい。
それだけでいい。
…それだけで、いいのに……
「……俺は、願いを叶えられるかもしれないの…?」
みんなは、漆黒の龍を狙ってる。
でも、それを生み出したのは俺自身だ。
誰のものでもない、龍は俺のなんだ…
「……!!」
ばか……
何、考えてんだよ…
俺らの目的は、それじゃない。
「…もう、寝よ…」
明日になれば、きっとなんとかなる…
なんとか、なるよね…?
(阿部視点)
「…まだ起きてたの?」
「そっちこそ。」
なんか寝付けなくて、リビングに行ってみたら、照がいた。
こういう時、俺らは同じことを考えてたりする。
「ちょっと、話そっか。」
俺は、照の隣に座る。
「フードの男について、考えてるんでしょ?ふっかのこと。」
俺は、早速照に問いかけてみる。
その反応、ドンピシャかな?
「やっぱり、阿部も同じこと考えてた。」
薄く笑って、すぐに表情を変える。
「今のふっか、平静を装ってるけど内心、不安だと思う。」
「俺も、そう思ってる。」
照は、やっぱりふっかのことをよく見てる。
ふっかは、だいぶ隠すのが下手になったからね。
もう、俺らのことは誤魔化せない。
「この件に、フードの男も介入してくるなら、かなり危ない…」
また、ふっかが壊れる可能性がある。
「ふっかにバレないように、ふっかをみんなで守らないとな。」
「そうだね。」
本人にバレたら、ふっかは責任を感じる。
「女とフードの男…本当に関係がないのかな…?」
俺の中にある疑問。
「そこが繋がってる可能性、やっぱりあると思うんだけど…」
照はどう思ってる?
「…俺も、そう思ってる。でも…そうじゃないといいなって思う…」
渋い顔で、照は言う。
そうだよね。
「もしそこで繋がってたら、ふっかの存在がフードの男にバレてる…」
女は、ふっかに声をかけたんだから。
「それに、男はふっかと照が龍から出てくる姿を見てない。ふっかが救われたことは知らなかったんだよ。」
フードの男は途中で逃げた。
だから、ふっかの安否については知らなかった。
「これで、ふっかがかなり回復状態にあることが女を通してバレた可能性がある…」
そう。
俺と照が1番恐れてることだ。
「フードの男は、真っ先にふっかを壊しに来るだろうね。」
この予感が当たってるなら、男が動くのはそろそろだと思う。
「しかも、ふっかはまだ完全に回復した訳じゃない…」
俺らから見たら、だいぶふっかは戻ってきてると思う。
心から笑えるようにもなったし、俺らに隠さずに頼ることもできるようになってる。
でも、照が言う通り、まだ完全に治っては無いんだ。
だからこそ、危ない。
「絶対、ふっかを1人にしない…それを徹底しよう。ふっか1人は危険すぎる。」
「最低でも、俺か照は一緒にいるようにしようか。」
だから、俺らで守る。
女とフードの男の思い通りになんてなってやんない。
(ラウール視点)
「今日もお疲れ様でした!」
撮影を終えて、現場を出る。
今日はこーじくんが迎えに来てくれてるみたい。
もうついてるみたいだから、早く着替えて帰らないと!
「…で、噂なんだけど…」
「えぇ…怖いわね…」
スタッフさんたちの噂話?
特に意味は無いけど、俺は何となくその内容が気になった。
「何の話ですか?」
「ラウールくん!えっとね、最近流行ってる噂なんだけどね…」
「”怪しい男”がこの近くでよく見られるらしいのよ。」
怪しい男…?
「それも、フードを深く被ってて、顔が見えないの。」
フード…!?
それ、まさか…
「それにね、”烏を連れた青年”を見てませんか?って聞いてくるらしいの。烏を連れた男の子なんているわけないのに…」
「しかも、すぐに姿を消すらしいわ。」
「怖いわよねー。」
「ラウールくんも、怪しい人には気をつけるのよ。」
「……ありがとうございます。」
みんなに、伝えないと…
「あ、ラウ!おかえりなぁ!」
「こーじくん、迎えありがとね。」
「ええでええで!俺もラウの送迎したかったんよ!」
こーじくんは、早速車を出して、家に向かう。
こーじくんだけに言うのもあれだから、このことはまだ黙っとこう。
みんなが集まった時に、話すことにしよう。
家に着いて、誰がいるのかを確認する。
今日は、舘さんも休みなんだ。
ここにいるのは、こーじくん、舘さん、しょっぴー、阿部ちゃん、佐久間くん、めめ…
「岩本くんとふっかさんは…?」
近くにいた阿部ちゃんに聞いてみる。
「2人は今日仕事だよ。…何かあった?」
阿部ちゃんは、少し焦ってる俺に気づいたのか、表情を変える。
「…実は…」
1番伝えた方がいい2人がいないのはまずい。
でも、とりあえず今はみんなに情報を伝えないと。
「……まずい…」
ラウール話を聞いて、阿部は顔色を真っ青にする。
「佐久間!すぐにふっかのとこ行くよ!」
「…え!?ちょ、あべちゃん!?」
すぐに家を出ていく阿部を佐久間は急いで追いかける。
他のメンバーも、わけがわからずそのまま立ち尽くすしかできなかった。
「今、岩本くんとふっかさんは一緒にいないの…?」
目黒がスケジュールを確認する。
「この時間帯だと、2人は一緒にいないよ…」
宮舘も、少し焦りながらスマホを確認。
「…俺らは、どうすればいいんだよ…?」
渡辺は、残された自分たちがどうするべきか迷っているようで…
「…阿部ちゃん、さっくん。間に合ってや…!」
向井は、ただ祈るしかできなかった。
(深澤視点)
「ありがとうございましたー!」
今日もいいお客さんいっぱいだなぁ!
やっぱりこの仕事は楽しい!
昨日は変なこと考えちゃったけど、今はスッキリしてる。
やっぱり寝れば何とかなるもんだね。
今日はそこまで人も多くないから…
割と楽なんだ!わら
ん!人来た!
「いらっしゃいませー!」
大きな声で、みんなが元気になれるように!
「…やっと、見つけた。」
「…?」
耳元で、囁かれる。
この声…聞いたことある…
そうだ…この声…
ゆっくり、顔をあげる。
あぁ、やっぱりそうだ…
目の前に、フードの男がいる。
「…ずっと探してたんだよ。まさか、こんなとこにいるだなんてね…」
「……っ…」
やばい…
腰抜けそう…
なんとか立ってる状態…
ここが店じゃなかったら、その場に座り込んでる。
「…君は、私の所有物だろう?こんなとこにいたら駄目じゃないか…?」
「…っ…ぃ…や…!」
男が手を重ねてくる。
嫌だ!嫌だ!!
やめて…!
なんで、力入んないの…!?
こんなん、振り解けばいいのに!!
声上げて、誰かに助けを求めればいいのに!!!
「……はぁっ…はっ…はっ…!」
息が上がってく。
喉が熱い…
震えが、止まんない…!
「そんな怯えないでよ。君は、いい子だろう?私のお願いを、聞いてくれるだろう?」
目の前がぐるぐるする。
呼吸ができない。
頭が痛い…
気持ち、悪い…
「行こうか…?」
抵抗できない俺を、無理やりカウンターから引き出そうとする。
だめ、だ…
力が、入んない……
また、俺は……
この男に、支配されるの…?
「ふっか!!!」
「……っ!」
すぐに、声が響く。
すごい、安心する声。
「…阿部、ちゃん…さく、ま…」
2人が、息を切らせながらそこに立ってた。
「ふっか!大丈夫か!?」
2人が急いで俺のとこに寄ってくる。
フードの男は、もういない……
安心してなのか、さっきまでの緊張のせいか、ただの酸欠か分からないけど…
プツリと音を立てて、俺は意識を失った。
「…クソ…」
岩本は、深澤にフードの男が近づいたことをメンバーから知らされて、拳を震わせる。
1人にしない、自分が守ると決めたのに…
「今回は、防ぎようがなかったよ。照も現場に行ってたんでしょ?」
そんな岩本に、阿部が言う。
岩本が、責任を抱えないように。
「…そっちも動き始めたか…」
重々しく、佐久間が呟く。
「予想はしてたけど、想像以上に早かったね…」
目黒も、嫌悪の表情を浮かべる。
「ふっかさんのこと…ほんまに諦めてないんやね。」
向井も、心配そうに呟く。
重々しい空気が流れる。
「……みんな…」
そこに、さっきまで意識を失っていた深澤が静かに現れた。
「……ふっか…」
いつの間にかそこにいた深澤に動揺が隠せない8人。
まさか、最初から聞いていたのでは…?
「…その、ごめん……」
深澤は、ただ申し訳なさそうに謝るだけ。
自分が迷惑をかけていると思っているのだろう。
下げた頭をあげようとしない。
8人も、どうすれば良いのか分からずに、深澤を見つめる。
「……俺、また…みんなに迷惑かけちゃう……」
深澤は小さく呟いて、部屋から出ていく。
「……ふっか…」
岩本は、暗くなった部屋で布団にくるまる深澤に声をかけ続けていた。
「……グスッ」
布団の中から、鼻をすするような音が聞こえる。
岩本は布団を優しくトントンしながら、深澤の調子が戻るまで待っていた。
しばらくして、布団がのそのそと動き始める。
どうやら、布団から出てこようとしているようだ。
「……えっと…その……」
深澤は布団で顔を隠しながら、岩本の顔を見る。
視線を合わせようとしない。
下を向いたまま、何かを伝えようとしている。
「いいよ。ゆっくりでいいよ。」
岩本は、深澤を急かさずに静かに待つ。
「……俺…まだ、フードの男のことが…怖くて…」
「うん。」
「…逃げなきゃって、思ったんだけど…身体、動かなくて……」
「うん。」
「……みんなに、迷惑…?」
不安で瞳を揺らす深澤。
岩本は、静かに深澤の頭を撫でる。
「全然、迷惑じゃないよ。むしろ、頼ってもらえるんだったらめちゃくちゃ嬉しい。」
「……ほんと…?」
「ほんと。なんならさ、もっと迷惑かけてよ。そっちの方が、俺は嬉しいからさ。」
柔らかい深澤の髪を丁寧に撫でながら、岩本は優しく微笑む。
「……優しいね。」
「ふっかにだけだよ。」
深澤は、照れてる顔を隠すように、布団の中へ潜っていった。
「さて、俺らはどうする?」
一方で、残された7人はどうしようかと困っていた。
佐久間が困った顔をして問いかける。
「対策でも考えとく?やっぱり、仕事中の単体行動は避けられないからね。」
「そだね。それについて考えっか!」
阿部の提案に佐久間が乗り、他のメンバーも賛成。
誰も、深澤と岩本のことは心配していなかった。
片方の不調は、もう片方が調整できる。
そんな2人に、心配など必要ないものなのだ。
「…あのな…少し言いづらいんやけど…」
「どうしたの?こーじ?」
向井が、少し申し訳なさそうな顔で手を上げる。
「…その、急な連絡で申し訳ないんやけど…来週、神奈川行かなあかんくて…」
「神奈川!?」
本当に急な発言に声をハモらせる6人。
「なんかモデルさんの都合でな、神奈川からの移動が難しいみたいでな。せやから、俺が神奈川に来てくれたら助かるって…」
本当に急な連絡だったのだろう。
向井も少し戸惑っているようだ。
「……今まで、撮影しに地方に行くことはあったんやけど…こんな急に来るなんて……」
向井は、改めてスマホに送られてきたメールを見つめる。
「俺も、着いてくよ。」
そんな向井を見て、目黒が言う。
「……え?」
その一言にメンバーも止まる。
たしかに、単体行動は控えた方が良いと話したばかりではあるが…
「めめ?めめの仕事は?」
ラウールがスケジュールを確認しながら、目黒に問いかける。
ラウールの言う通り、目黒は来週の予定がいっぱいである。
だが、目黒は問題ないと表情を変えない。
「大丈夫。もう伝えたから。」
……伝えた…?
よく見てみると、目黒のスマホにはメッセージの送信完了の画面が……
どうやら、目黒は本気のようだ。
「ちゃんとザリガニに餌やって行くから大丈夫。こーじが行く前日にちゃんと水槽も丁寧に掃除するから。…ほら、店長もいいよって。」
どうやら、店長からの許可もいただけたようだ。
「……他に、誰か予定空いてる人はいる?」
目黒を止めることは諦め、他に誰か行けないか阿部が問いかける。
「…俺は、カフェから離れられないな。」
「俺もー。今、子猫ちゃんたちがいっぱいいるからさ。」
宮舘と佐久間は予定が既に埋まっている。
「俺も、撮影があるから無理かな。」
ラウールも行けない。
「見る感じ、照も仕事あるね。だから、空いてるのは俺、翔太、ふっか。」
阿部の言うように、来週予定が空いているのは、目黒、阿部、渡辺、深澤の4人。
つまり…
「神奈川に行くのはこの5人…?」
「…ねぇ、さすがにおかしくない?」
ラウールが鋭く呟く。
「……こーじくん、阿部ちゃん、しょっぴー、そしてふっかさん。」
改めて、並べてみた名前。
神奈川に行く5人のうちの4人。
「女が、接触を試みた4人だよ。」
ラウール、阿部以外のメンバーは、目を見開いた。
沈黙の中、後ろからドアの開く音がする。
「みんな、何の話?」
調子を取り戻した深澤と岩本も、ここに合流した。
「……神奈川、か……」
「うん。罠だろうね。」
岩本と深澤は確信していた。
「…実は、さっき電話が来てたの。」
ここに来る前、深澤のスマホに電話が来ていたのだ。
「颯馬くんも、神奈川に行くって。」
深澤と岩本は厳しい顔をしていた。
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夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚