得意げなお天気雨
⚠️死ネタ等
たらとげんが一緒に住んでるよ
tr視点
tr「…ふふん」
通帳を見て思わず笑みが溢れる。最近お仕事を掛け持ちして頑張ってて、やっと給料が入ったんだ!
これで生活にちょっと余裕ができた!
tr「原人さんまだかなー」
ベランダから外を見渡す。原人さんも最近ずっと仕事してるし、休んだらいいのにー…
あ、せっかく給料入ったんだし、何かしてあげようかな?
帰ってくる前になんか美味しいもの買ってくる?
うん、そうしよう。
思い立ったらすぐ行っちゃお!
tr「いってきまーす」
って言っても今家は留守だけどね。
ちゃんと鍵を閉めてアパートを出る。
近くのスーパーでも行こうと、アパートが立ち並ぶこの住宅街を歩く。
17時 ってこんなに暗かったっけ?
今年の夏は本当に暑くて死ぬかと思ったけど、秋に入るともう随分涼しくなった。
このくらいの空気がちょうどいいな。
gn「お」
tr「あ」
仕事帰りの原人さんとばったり遭遇した。ちぇー、サプライズの予定だったのに。
gn「たらこ何してんの?」
まあ、いっか。
tr「原人さん、俺給料入ったんよ!だから今日はちょっと贅沢しようかなーって」
gn「…すぐ使い切るんじゃねぇよ?」
tr「いや、さすがにしないよ!」
ジトーっとした目で言われた。
俺をなんだと思ってるんだ。ちゃんと節約するし!
gn「…ぷっwうーそ!
たらこ最近頑張ってるもんな!偉いぞ!」
今度は吹き出して笑った。
5 歳も年上の原人さんはお兄ちゃんっぽく褒めてくれるが、子供っぽい所もある。
gn「じゃあ美味いもん買ってくか!」
tr「うん!」
2人でそのままスーパーに向かう。
2人でお買い物なんて久しぶりかもしれない。
歩きながら話してるだけで楽しい。
お給料日のおかげもあるのかな。
生活が結構カツカツなので、俺らは仕事を掛け持ちして働いている。
俺はわりと簡単な仕事…普通にコンビニとか、飲食店でバイトしてる。
原人さんはやっぱり俺より大人で、俺よりもっと多くの仕事をしている。
1日に何個かやってたりするから、同じ家に住んでいるのに会えない日もあった。
それがちょっと寂しくて、心配でもあった。
だから今日はちょっぴり贅沢したいし、いっぱい話して笑い合いたい。
tr「原人さん、これ美味そう!値引きシール貼ってあるし!」
gn「お、ほんとだ。じゃあこれも買っちゃお〜」
tr「でもこんなに買って大丈夫?」
gn「心配すんな!ちゃんと計算してます〜〜」
と言いながらスマホの電卓を見せてきた。金額は全然大丈夫。
原人さんはこういう所ちゃんとしてる。
俺は原人さんに頼りっぱなしなのかな。
この生活が始まってから、俺はいつもそんなこと思ってる気がする。
会計を済ませる、俺より少し小さい彼の横顔を見つめる。
もともと細かったけど、ちょっと痩せた?
最近冷えてきたからか、厚着をしていて身体のラインは掴みづらい。
けど細いことはわかる。
tr「俺持つよ」
gn「ん、お願い」
その身体に買い物袋を任せるのは少し怖い。
それに疲れてるだろうし。
スーパーから出ると、さっきよりも少し暗い街が広がっていた。
ここから家までは歩いて10分もかからない。
その帰り道を原人さんと歩くのは久しぶり。
たくさん話してたくさん笑って、短い10分間を過ごして家についた。
今日のご飯はいつもより少しご馳走で、あったかくて、仕事頑張って良かったなって思った。
gn「お天気雨だ。」
ベランダに出ていた原人さんがふと呟いた。
今日は朝から白い大きな雲が出ていて、まだ夏かのような爽やかな青空だった。
言われて見たら雨粒が降り注いでいて、陽光でキラキラ輝いている。
綺麗だ。
gn「俺、雨も晴れ過ぎも嫌いだけど、
お天気雨なら好きなんだ。」
tr「それわかる!俺も好きだよ。お天気雨!」
そういうと彼は小さく笑った。
お天気雨って。
わざわざ「お」を付けるんだなぁ。この人。
tr「あれ、そういえば原人さん。タバコやめたの?」
gn「…ん。だって金かかるし。」
タバコって、それでキッパリやめれるものなのだろうか?
贅沢はやめると言ってたけど、いつの間にやめてたんだ。
tr「だんだんお金に余裕出てきたんだし、吸っても良いんだよ?」
gn「ばか。やめれてるんだからいいの。」
…ふーん。
ベランダで原人さんが黄昏てるのに、ちょっと物足らなさを感じてしまった。
もうすっかり冬になってしまった。
うちのアパートは割と新しいので、暖房をつければ問題ないけど、さすがに寒いからこたつを出している。
tr「はあ〜〜〜〜…こたつあったけぇ…」
こんな素晴らしいものを開発した人は誰なんだろう。本当にありがたい。
tr「仕事行きたくない〜〜〜〜〜!!」
gn「…ふふ。」
同じくこたつに入ってゴロゴロしてる原人さんに笑われた。
かなりの厚着をしている。
そういえば原人さんってすごい寒がりで、俺の方が寒さに耐えられるみたいだった。
tr「原人さん今日暇だったっけ?」
gn「うん。暇」
tr「いいなあ〜〜〜〜〜!!」
本当に動きたくなくてこたつに潜り込んだ。小さいサイズなので俺は入りきれないけど。
するとまた軽く笑われた。
gn「別に休めば良いじゃん。たらこいつも頑張ってるし、ちゃんとお金溜まってきてるんだよ?無理して行くことない。」
tr「確かにそうかも…」
でも原人さんは毎日ちゃんと仕事行ってるよね…
こんな寒いのにいつもいつも…
tr「……い〜や、行くね!待ってて原人さん!稼いでくるわ!」
俺だけサボってるわけにもいかないので、勢いだけで立ち上がった。
gn「びっくりしたぁ…」
寒さを緩和するためにできるだけいっぱい着て、前に原人さんから貰ったお気に入りの赤いマフラーを巻いて。
原人さんは玄関まで来て見送ってくれた。
tr「よし!原人さん行ってくる!」
gn「寒さで死ぬなよ〜」
tr「大丈夫大丈夫!行ってきます!」
そして外に出た。
さっむ!!もう帰りたい…泣
雪はなかなか降らない地域なのがまだ良かった。
これで積もられたら本当に無理。
もう配管が凍るようになってきちゃって、今年は冬も手強いようだ。
でも店の中はあったかい。今日はラーメン屋のバイトだから、まかないだって貰える!
それが本当に救いだ。
gn視点
最近あまりにも寒い。
俺は暑いのも寒いのも本当に苦手だ。
でも部屋の中はエアコンのおかげで過ごしやすいので、本当に助かっていた。
…のはず。
今年もこたつを出したのでそこに入っていればいいのだが、なんだか暖房の効きがイマイチな気がする。
gn「…さっむ…」
部屋の中とは思えない程の厚着をしているが、筋肉のない俺は全然寒い。
暖房が効かないんじゃ本当に死んじまうよ。
エアコンって、ちゃんとした業者に連絡したらどうにかなるかな…
買うのはさすがにきつい。
てか築何年だよこのアパート。新しいはずなのにもう弱ったか?
gn「はぁ…」
小さくついたため息が白い。どうしたもんかな…
そういえば、たらこ今日はあそこのラーメン屋じゃないか?
寒いし腹減ってきたし、久しぶりに行ってみようかな。
こんなに生活が忙しくなる前はよく一緒に食いに行ってたなあ…
俺が仕事を掛け持ちするってたらこに打ち明けた時も場所はあそこだった。
tr『え!原人さんが掛け持ちするんだったら俺もやる!ねえねえ店長、ここで働いても良い!?』
なーんて言って。
俺らは常連だったから店長が了承してくれて良かった。
たらこは本当によく頑張っている。
最初は全部俺がやるつもりだった。
ほら、俺の方が年上だし、なんか危なっかしいから。あいつは。
でも一緒に住み始めてから5年?でだいぶ成長した。
俺のためにって気遣ってくれることが多くなった。
俺は別に仕事は酷じゃないから、そんな ことしなくていいって言うんだけどね。
俺は相当身体を追い込んでいると思われているらしかった。
tr「いらっしゃいませ〜!って、原人さんじゃん!座って座って〜」
gn「おう、たらこ」
元気に働いてるわ。
寒さのおかげか、チェーン店でもない小さな店にも関わらず、たくさんの人がいた。
俺はたらこと来ていた頃と同じものを頼んだ。
tr「原人さんこれ好きだよねー。はい、どうぞ」
gn「うん、ありがと」
店の中はそこそこだが、ラーメンが本当にあったかい。今俺はすごく生を実感している。
gn「あ、そうだたらこ」
今こいつ暇そうだしここで話していいか。
tr「ん?どした?」
gn「なんかうちのエアコン調子悪くない?結構ガチで寒いんだけど」
tr「え、そう?俺は全然あったかいと思ったけど。原人さんがそんなヒョロイからだよ!」
gn「そうか…?」
そんなもんなんかな?いうてたらこもムキムキってわけじゃないし…
店長「源人(げんと)、風邪ひいてんじゃねえか?部屋はあっためとけよ」
同じく暇そうな店長も話に混じってきた。
gn「ああ、そうなんかな?」
tr「原人さんはいっつもあったかいよ!だから熱あってもわかんないなあ」
たらこはうーん…と考えている。
tr「俺まだシフトおわんないから、気をつけて帰ってよね!部屋の温度上げていいから!」
gn「わかってるよ。どうせ大したことないって」
残りのラーメンも平らげて、満足した俺はとりあえず家に帰ることにした。
2人が言う通り、熱があるのかもしれないし。
自分の額に触れると冷たい。
店を出た瞬間、痛いくらい冷たい空気が俺に襲いかかってきた。
寒暖差で頭が少しくらっとした。
家を出た時よりも寒い。
俺の手からラーメンの温もりが消えていくのがわかった。
ここからの帰路が辛い…
必死に下を見て耐えて歩いていると家に着いた。
部屋の中は相変わらず寒い。
温度をいじって少し経つと逆に暑くなってきちゃって。
温度を下げた。
暑い…
眠い…
tr視点
今日も無事に仕事を終えて、夕方くらいになると帰れた。
今日はかなり冷えてるけど、良い天気だなあ…
青くて冷たい空に白い雲が浮かんでいる。
tr「あっ」
そんなことを思っているとポツポツ雨が降り出した。
お天気雨だ!
原人さんが好きなお天気雨!
なんか原人さん調子悪そうだったし、こんな小さなことでもテンション上がるといいんだけど。
あの人珍しく休みだから、なんか反動が来てるのかな?
よーし、今こそ俺が原人さんを支えてあげるときだ!
るんるんで歩いているとすぐ家に着いた。
階段を上がって1番奥が俺らの部屋。
tr「ただいま〜」
え、さっむ!?
本当にエアコン壊れてたのかな!?
めっちゃ静かだけど、原人さん寝てんのかな?
こんな寒いのに…
tr「あ、いた。原人さーん」
原人さんは薄着でソファに座ったまま寝ていた。
なんで寒いのにもっと厚着しないんだろう?
それに、こたつに入れば良いのに。
tr「原人さーん!起きて!」
gn「……..たらこ…」
原人さんから聞いたことないくらい小さい掠れた声で言われた。
tr「眠いの?寝るならもっと着て!暖房も温度上げて!危ないでしょ」
gn「…ん。ごめん…ちょっとだけ、寝かせて…」
tr「うん。じゃあ布団で寝よ。俺風呂行ってくるからね」
gn「……ん…」
相当眠いんだろうな。普段働きすぎだし、いっぱい寝させてあげよう。
今日はいつにも増して綺麗な寝顔をしていた。
次の日になったら、原人さんは布団の中で丸くなってた。
tr「原人さん起きて!めっちゃいい虹が出てる!綺麗だよ〜!」
gn「…」
tr「原人さんがお天気雨好きなのって、虹が出るからだっていつか言ってたよね?」
gn「…」
tr「ねえ原人さん、起きたら一緒にご飯食べよ!
俺もまだご飯食べてないんだ〜」
その日もその次も、俺は原人さんが起きるのを待ってずっと側にいた。
原人さんはねぼすけで、ずっと起きてこなかった。
お腹すいたなあ…
tr「あ、原人さん!おはよう」
エアコン全然大丈夫じゃん。
最高にあったかいよ。
gn「たらこ、おはよ」
相変わらずこの人はあったかい微笑みをする。
tr「もう、生きてんじゃん! 俺変な夢見ちゃったよw びっくりさせないでよね〜」
gn「…えぇ?俺のせい?wなんかごめん」
原人さんはどこか悲しげな沈黙を少しだけ作って答えた。
tr「いやいやごめん!原人さん何も悪くないよ」
tr「ちょっと原人さん待ってー!置いてかないでよ!」
先を進んでいっちゃう彼の手を握って、一緒に歩き出す。
冷たい手だった。
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よくわかんなくてごめんね🙇♀️
あとめちゃくちゃ長くなっちゃった!
この2人の関係性についてはご想像にお任せします。
店長が原人さんを源人(げんと)と呼びますが、
宇佐美源人(うさみげんと)という名前設定です。【源人】をげんじんって読み間違えられたことがきっかけであだ名になったという裏設定あります。
最近ハマってる
クーネル・エンゲイザー
暮しガスメータ
という電ǂ鯨様の2曲をイメージした所あります。
ラストシーン、あたたかい所で2人は再開できたけど、そこは天国っていう設定です。
本当にあれは夢だったのかな?
じゃあそんな感じでね
ありがとうございました
コメント
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遅ればせながらコメント失礼します🙏 めちゃくちゃに好きです!!😭😭 死ネタということも忘れるほど、ほっこり日常シーンの多幸感溢れる表現が素敵すぎます✨ 死ネタが好物な人間なのですが、あまりにも終盤のシーンが切なすぎて…辛くなりました… 素敵な小説ありがとうございました🥰
やばいまじで 最初すごいほのぼのでほーっこりしながら見てたんだけど、途中から雲行き怪しくなって あれ、、?って思ってたら案の定タヒんだ… やばい最後まじで鳥肌えぐかったわぁ!!!ほんとに天才だね?! 途中途中のイラストも可愛くて好きだわぁ……👍 タヒネタいいよね! 曲も聞いてみるね!!
追記 少し加筆しました❗️ ちょっとした補足程度です❗️