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ちょっと説明
✖️…葉内千歳
👓…藤染鞍藍
🦊…蜂園舞
🐈…猫宮由里
🌸…雪詩水冷
🩸…影谷烏宵
🩷…山月奏
🍽️…更科薆
✨…爽籟紫沫
🌙…爽籟彩糸 です。
俺は、再びこの事務所にやって来た。
ついさっきの事、あの時の…確か、葉川さん?いや、葉内さんだったっけ?あの人から連絡があって、
「依頼に関しまして報告がありますので、またこちらにいらして頂けますか?」
ということなので、また来たわけだが…やっぱり、この雰囲気には慣れない。ふーっ、と大きく息を吐いて、覚悟を決めて扉を開く。
からん、からん。
✖️「いらっしゃいませ、またご足労いただきありがとうございます。」
「あ、いえ…その、依頼の方は…?」
✖️「はい、完了致しました。今回はそのご報告ですので。」
完了した。その言葉だけで、俺はほっと息をついてしまった。やっと、やっと終わったんだ。
✖️「それで、依頼料金に関してなのですが」
「え、あっ…」
しまった、すっかり忘れていた。今財布に入っているのは一万五千円くらいしかない。これだけで払えるわけがない、どうしよう。
✖️「どうかされましたか?」
「ああいや、その…」
まずい。どうする?誰かに電話して持って来てもらうか?それとも支払いを後日にしてもらうとか…とにかく、一度説明しよう。
「そのぉ、今手持ちがあまり無くて…支払いがちょっと難しいといいますか…」
✖️「ああ、そんな事でしたか。」
そう言い、葉川…?さんはにこりと笑う。
✖️「うちの料金は、お金ではいただきませんから大丈夫ですよ。」
「え?それってどういう…」
✖️「うちの依頼料金は、”大切なモノ”でいただきますから。」
「…え?」
大切な…もの?何だそれ、そんな支払い方聞いた事がない。というか、金じゃないのに料金って言ってたの騙してるだろ!
✖️「最初にこちらにお越しいただいた際にいた従業員のこと、覚えてらっしゃいますか?」
従業員?何で今そんな話をするんだ。…でも、誰かがいたような…確か、茶髪で、女で…狐みたいな感じ、というか狐だった気がする。
「確か、女性ですよね?狐みたいな…」
✖️「はい、そうです。彼女に見てもらって、既に貴方の大切なモノは把握済みですので、選んでください。どれを使って払うのか。」
そう言い、一枚の紙を手渡して来た。紙には、俺の大切なものがずらりと書いてある。
部活のみんなで獲った優勝杯、今はいない親友と撮った最後の写真、爺ちゃんの形見の時計…
「これで払うって…俺の思い出を犠牲にしろって言うんですか⁉︎」
俺は思わず立ち上がって叫ぶ。
✖️「何も、思い出の品だけで払えとは言いませんよ。裏をご覧下さい。」
にこにことした笑みを貼り付けたまま、こいつはそう言った。その通りに紙を裏返すと、 そこにはまた別の意味で大切なものがあった。
俺の小学校の記憶、家に泊まらせて貰った友達、家族、腎臓に片耳…
「…っ、何だよこれ!」
✖️「そちらで支払っていただいても構いませんよ。」
笑顔を貼り付けたままこの悪魔はそう言う。
✖️「大切な思い出か、大切な身体。どちらでお支払いしますか?」
俺は…
ねぇねぇ、知ってる?あの噂。
噂?何それ。
知らないの?しょうがないなぁ…色んな世界のどこかに、ある事務所があるんだって。その事務所は、普通じゃ出来ないような依頼…例えば、心霊とか暗殺とか?をやってくれるんだって。でも、依頼が終わるとその人は…
その人は…どうなるの?
それはね…
大切なものを取られちゃうんだって。
大切なもの?それって、お金とか思い出とか?
そうそう。まぁ噂だし、そんな場所あるのかどうかも分かんないけどね!
だよね〜。
からん、からん。
店を出た男性の背中を見つめながら、葉内千歳は彼が置いていったモノに目線を送った。
「…部活の、優勝杯…で、お願いします。」
✖️「承知致しました。ではこちら、第37回〇〇地区サッカー大会優勝杯にてお支払いをする、という事でよろしいですね?」
「…はい。」
そう言う男性の目には、涙が光っていた。
✖️「では、お話は以上です。もうお帰りいただいても結構で…」
そう言い終わる前に、男性は立ち上がってすたすたと扉に向かっていた。扉に手を掛けた後、少しだけ立ち止まって。
✖️「申し訳ないけれど、こちらも慈善事業じゃあないのでね…」
ふと、電話が鳴る。
✖️「はい、もしもし?」
🦊「もしもし、千歳?私だけれど。今から戻るけれど、何か買って欲しいものある?」
✖️「ああ、じゃあコーヒーお願い。」
🦊「はいはい、いつものね。…もう、報告は
終わったの?」
✖️「うん。」
🦊「…そう、じゃあまた。」
✖️「うん、また。」
そう言い、電話を切る。
今日も、事務所はいつも通りだ。