ナチスが目を覚ますと、辺りはこれといった灯りのない闇につつまれていた。状況を確認しようと周りを見渡すと、部屋には何もなく、戸は重厚感があり、かたく閉ざされていた。
まるで牢獄だ。
そして何より、ナチスの隣にはイタ王が居る。イタ王はまだ起きていないようだ。
「おい、イタ王起きろ」
「う、うーん、、、ってナチ!?」
ナチスはイタ王の体を揺すって呼びかけた。イタ王は驚いたように飛び起きた。静かだから声がよく響く。
「ここどこなんねぇっ!?」
「わからん。拉致されたようだが」
「拉致、怖いんね」
イタ王は体育座りで胴と膝の間に顔を埋めた。今にも消え入りそうな声で怯えた様子だった。
「大丈夫だ。絶対に脱出してみせよう。」
ナチスはイタ王を慰めながら、視線の先に戸を見据えた。頬に冷や汗が伝った。
「2人を見捨てろと言うのか!!」
「曲解しないでください。私たちには他の役目があるでしょう。」
日帝の声が空気を切り裂いた。しかし、イギリスは動じる事無く返答する。
「ふざけるのも大概にしろ!仲間を見捨てていい道理など、あってたまるものか!」
「貴方は個人的な思いで救える命を取りこぼすのですか? 」
ナチスとイタ王が突如として消えた。それが何を意味するかは、皆が分かっていた。例の犯人に連れ去られたのだ。
「日帝!これは親父が正しい!こうしている間にも被害は出ているんだ!」
アメリカはイギリス側として意見を述べた。この頃あの事件についてばかり調査していたが、本来の役割、各地の能力者による事件の解決だってある。能力者による犯罪は、今まで通り起こり続けている。いや、むしろ増えた。 それらを鎮めるのも仕事の1つだ。
今はナチスとイタ王の救出と各地の事件の解決の優先順位を巡って日帝と米英が争っているのである。
フランスがなんとか仲裁しようとするも、届いていない。
ソ連は呆れはてて、大きなため息をついた。彼にも、何処かひっかかるところがあるようだ。 こんなときに国連達が居ないだなんて、本当にいつも大事な時に居ない奴らだ。
「ここ数日で事件が急増しました。明らかにタイミングが良すぎる。1つ目の記憶の手がかりがあるかもしれません」
「そうやってあらゆる事件を追いかけるのか!?馬鹿馬鹿しい。そんなのキリがないだろう!」
「しかし、どこにいるかも分からないでしょう?どうするというのです。」
「必ず見つけ出す!もういい!私1人で2人を救出に向かう!」
日帝は部屋を飛び出した。扉は壊れんばかりな勢いで開けられ、未だキィキィと音を立てながら揺れている。
イギリスは奥歯を噛み締めて、アメリカに声をかけた。
「私たちは他の事件に行きましょう」
「…親父」
重苦しい空気感を残したまま、アメリカとイギリスも去っていった。
数秒の沈黙の後、今まで喋らなかったソ連が呟くように口を開けた。
「止めなくていいのか?」
ソ連はフランスの方を一瞥したが、すぐに目を逸らした。遠回りで分かりずらいが、関わり合いが上手いとは言えない彼なりに行動を起こしたのだ。
「もう知らないよ。アイツらなんか」
「…へぇ、」
少なくとも、イギリスについて無関心なんてことは無いように見える。
喉まで出かかった言葉を、ウォッカと共に流し込む。長い永い時間を過ごした関係だ。簡単な感情ではかれるわけが無い。
ソ連が黙り込んだのを見かねて、フランスはハッとして空気を誤魔化すように言った。
「国連達に連絡しよっか」
ソ連は何も言わず、黙って頷いた。
「ああ、起きた?」
重厚感のある戸が低い音を立てて開かれた。
脱出の方法が全く見当もつかず、試したこともことごとく失敗した。しかし、簡単に、何も手を下さずとも戸が開かれた。
戸から入ってきた者を見て、2人は目を見開いた。ヒュ、と喉の奥で呼吸する音がヤケに耳についた。
「写真の――」
彼はイタ王に宛てた写真の姿をしていた。
「僕はイタリア社会共和国。
2人共、気分はどう?」
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イタリアぁぁぁぁ✨️ ふへへへへ( ◜ω◝ )🇮🇹