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#溺愛
植まどか
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#死に戻り
青空美空
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陽星☀️🎧☄️🩷
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本日は快晴。雲1つなく時おり風が吹き木々が戦ぐ。
最低最悪の気分だ。
王家の者が護衛も付けず単独で押しかけるなど今頃城では大騒ぎになっているだろう。
ガゼボにはマリノアルとその向かいに座るのはルノ。そしてお茶を用意しているクオールの3人だけ。
会話はない。
マリノアルの頭は忙しなくフル回転している。これまでも多少なりの変化は確かにあった。しかしここまで大きな変化は初めてのことだ。
3年後に初めて会うはずのルノが今、目の前に座っている。
何故なのか。
何がきっかけなのか。
大きく変わったと言うならばマリノアル自身の行動しかない。死に戻った後可能な限り誰とも関わりを持とうとせず自室に引きこもった。
ただそれだけ。
それだけでルノの行動まで変わると言うのか。
ぐるぐると纏まらない思考にふと先程の光景を思い出す。
ルノの後に続いて来た、マリノアルの家族たち。
誰ともが口を開く前にマリノアルは軽く会釈をしそのままクオールに指示を出した。
「クオール、お茶の用意と彼らをすぐさま部屋へ連れて行け。殿下はこちらのガゼボの中へどうぞ」
「し、承知致しました。マリノアル様」
マリノアルは家族に背を向けそのまま1度も振り向かなかった。
目を覚ましてから初めてまともに見た家族の顔。少しの驚きがあっただけで何の感情も湧かなかった。
誰1人としてマリノアルに味方しなかった家族という肩書きだけの者たち
何の感情が沸くというのだろうか。
それぞれにお茶とルノには焼き菓子も共に置かれる。
クオールは下がりガゼボの外で待機する旨を伝えるとマリノアルは日陰で待機するようにと伝えた。
陽射しがある中で待機させる程マリノアルも鬼ではない。
「…?君は食べないのか?」
マリノアルに焼き菓子が用意されていない事にルノは疑問を投げた。
「嫌いなので。」
ピシャリと言い放つマリノアルにルノは驚いた。
「お菓子が嫌いなのか?それともこの焼き菓子が?」
「他人が作ったものは全て嫌いです。」
毒殺も何度か経験しているから。
本当は食事も自分で用意したかったがそうなると厨房を借りなければならないし何より大騒ぎになる。
だから自分が使う食器にだけ魔法をかけている。毒を始めとした命を脅かす全てのものを無効化する自分を守るための防御魔法。
無限とも言えるほどの魔力が今の自分にはある。ありとあらゆる耐性や状態異常の抵抗力も上げた。
少しでも長く生き永らえる為に、少しでも長く逃げる為に
これならそう簡単に捕まることはない、と自分に言い聞かせながら。
殺される未来だとしても、粗末な抵抗だとしても
先程とは砂の色が違う砂時計を逆さに返す。
「10分です。この砂が全て落ちたら終わりです。」
「短すぎないか?」
「アポも無しに突然押しかけてきたのはそちらでしょう。10分も時間を取ってくれたことに感謝されても文句を言われる筋合いはありません。王家ともあろう方が礼節を欠くなどどういう教育をされてきたのでしょうか」
マリノアルの正論にルノは言葉に詰まる。
「っそっれはっすまないと思うが何度茶会の誘いをかけても君が応じないからっ私の方から直接出向く羽目になったんだっ!君は私の婚約者なのに王家の誘いを断るなど不敬にも程があるぞっ!」
「全て断りの返事をしている時点で諦めてほしいのですが?それに現時点では私は婚約者候補です。それについても辞退すると再三申し上げているはずですが?これを不敬だと言うなら不敬罪で私を殺せば良いではないですか」
「っ殺せって……っ私はそこまでのことはっ……」
幼い子供の勢いに任せた物言い。この程度で不敬罪になどなりはしないが己の口から殺せという言葉が出てくるなんて。
生きる為に運命に抗おうとしているのに。
俺は生きたいのか、死にたいのか
矛盾する心と言葉。
マリノアルは己の心を落ち着ける為、紅茶に口をつける。毒殺の恐怖は身体がしっかりと覚えていた所為で飲み物はおろかまともに食事も出来なかった。2年かけてようやくクオールが入れてくれた紅茶も飲めるようになったのだ。
「あと5分です。」
「っ」
何か言わなければ。でも何を言えばいい?何を話せばいい?
この2年、何度も誘いをかけた。交流を図るため王家が主催するパーティにも個人的な茶会の誘いも城下町で行われる祭りにも何度も誘った。
マリノアルは全て、断った。
彼以外の他の婚約者候補たちは全員参加したというのに。
彼だけ一切の交流が無い。手紙だけのやり取りでも構わないと言っても断られる。
拒む理由を聞いても嫌だからのひと言。
王家からの誘いを嫌だからなんて言葉で拒絶出来るほどこの世界は甘くはない。フィリヴィッツ侯爵もそれはよく分かっているはずだ。
いくら我が子と交流が出来ていなくとも侯爵家当主として命令できる立場にあるのだ。無理やりにでも参加させるべきであろうに。
「あと3分。」
「っ!?あっえっと…あのっ…」
「何でしょうか」
言葉が出ない。何か話さなければいけないのに。
自分の誘いを尽く断るこの男はどんな奴なんだと怒りまかせに押しかけたことが今になってじわじわと羞恥心を煽る。
ふわり、と空気が変わる。
変わった、気がした。
ぐるぐると考え周りが見えなくなっていたルノは突然柔らかくなった空気に顔を上げた。
「ふふ」
マリノアルが、笑う。笑っている。年相応に柔らかく、笑っている。
その目は慈愛に満ちていた。
傍らには数羽の白い小鳥。それは魔鳥と言われる人には決して慣れないはずの手のひらサイズの小さな鳥。
彼らはマリノアルの肩に乗ったり頬に擦り寄ったり
マリノアルが指を差し出すと待ってましたと言わんばかりに飛び乗ってくる。
「ごめんね、今は手持ちがないんだ。後で私の部屋においで」
マリノアルの言葉を理解しているかのように小鳥たちはピュルルとひと鳴きしマリノアルの頭上を旋回したのちどこかへ飛び立ってしまった。
なんだ、今の光景は。
無表情で感情のない言葉はどこかひどく大人びて威圧すら感じていたのに
年相応の幼さが残る柔らかい笑顔と優しい言葉、慈愛に満ちた目で小鳥と戯れるその姿は荘厳な聖母のようで
その瞬間を切り取った1枚の絵画のようで
ルノは正しく、心を奪われた。
「…綺麗…」
「…?殿下?何か言いましたか」
ポツリと呟かれた言葉はマリノアルの耳には届くこともなく。
「何でもない。マリノアル、私は諦めないから」
ルノはがたっと席を立ち宣戦布告のように告げた。
「は?」
「紅茶、ご馳走様。美味しかったよ。この焼き菓子は持って帰ってもいいかな?」
「ご自由にどうぞ…」
「ありがとう」
にこっと笑い、礼を述べる。包んだ焼き菓子を懐に仕舞った。
「今日は突然押しかけて本当にすまなかった。帰ったら改めて侯爵にも謝罪文を届けるよ」
何か吹っ切れたような面持ちで謝罪をするルノにマリノアルは訝しげな顔をした。
「では私はこれで失礼するよ。マリノアル」
「…クオール、お見送りを」
「あ、は、はいっ」
ガゼボの外でずっと待機していたクオールに声をかける。
「ルノ殿下、こちらへどうぞ」
「クオール、と言ったか。ありがとう、マリノアルもありがとう」
「いえ…」
ろくに言葉が出ず萎縮していたルノが突然流暢に話し出したことに苦虫を噛み潰したような顔をするしかない。
「本当に何しに来たんだあの男は…」
無意識に緊張していた肩の力を抜きため息をついた。
砂時計の砂は全て、落ちた。
コメント
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ああ、第5話…静かに重い空気が流れてたのに、最後の小鳥たちとのシーンで空気が一気に変わったのがすごく印象的でした。「他人が作ったものは全て嫌いです」って台詞に、マリノアルの過去の重さを感じてぞっとした…。でも、魔鳥にだけ見せるあの優しい笑顔、あれでルノの心を持っていかれたのが分かる気がする。10分で終わるはずの茶会が、マリノアルの中に何か新しい風を吹き込んだんじゃないかな。続きが気になる…!