テラーノベル
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中に入ってすぐ
カーテンの隙間から差し込む光の筋に照らされた、右側にある
以前ニトリで購入したスライド扉収納な本棚に目が留まった。
木製のシックなデザインで、この部屋の雰囲気にとてもよく馴染んでいる。
ここには敦が今まで大切にメモしてきたレシピのノートや、彼の作品が掲載され出版された特集雑誌などが整然と並べられて置かれている。
一冊一冊の背表紙が綺麗に揃っており、彼の仕事に対する誠実さが伝わってくるようだった。
ここは敦が1番触る場所だろうし、いつも彼自身の手で綺麗に整えられている。
特に掃除は必要ないだろう。
そう判断して、僕は視線を別の場所へ移した。
次に部屋の真ん中に置かれたテーブルに目をやるが、とくに汚れている様子もない。
埃ひとつ落ちていないようにも見える。
それでも、せっかく部屋に入ったのだから一応綺麗にしておいてあげたくて
僕はポケットからウェットティッシュを取り出して、木目の美しいテーブルを隅々まで丁寧にフキフキした。
何度も往復させて、表面を磨き上げていく。
拭き跡が消え、光を反射してピカピカになると気持ちがいい。
ほんの少しだけ、彼の役に立てたような気がして胸が躍った。
次はどこを…と、周囲を確認していたとき
左側の壁際に設置された透明なショーケースに飾られていた
今まで敦がショコラティエとして受賞してきた数々のトロフィーに目が留まった。
「わぁ…すご……っ」
その壮観な光景に、思わず小さく感嘆の声を漏らした。
以前からずっと気になっていた場所ではあったが
普段は敦のプライベートな空間ということもあって中に入る機会がなく、こうしてあまり近くで見たことがなかったのだ。
改めてガラス越しにまじまじと見れば、そこに並んでいる眩いばかりの賞状や
ゴールドのトロフィーは、敦がこの歳になるまで、血のにじむような努力を積み重ねてきた証そのものだった。
彼が歩んできた輝かしい軌跡が、そこには凝縮されている。
(しゅんが凄く大切にしてる物だろうし、ピカピカにしたら喜んでくれるかな…?)
彼を喜ばせたいという純粋な想いが、僕の背中を押した。
一気にやる気が出てきて、この大切なトロフィーたちを掃除することに決めた。
しかし、ガラスケースの扉を開け
目の前の金属やガラスでできた繊細な造形を見つめていると、ふと不安が過る。
トロフィーの手入れ方法は
多分普通にウェットティッシュで拭いたら水滴の跡が残ったりしてダメだろう。
そんな気がする。
大切なものだからこそ、絶対に失敗は許されない。
#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
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