テラーノベル
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鬼滅の刃 時透無一郎寄りの夢小説です。
原作と異なる部分もあるかもしれませんが、そこは目を瞑ってくださると幸いです。
楽しんでいただけますように……。
雪柱
これは、時透無一郎が霞柱になる前のお話。
うぅ…痛い…痛い……苦しい…!
傷口が灼けるように熱い。
脈拍に合わせて全身に痛みが走る。
呼吸すらつらい。
なんで僕は生きているんだ。
こんなに苦しいなら、いっそ死んでしまいたい。
「ここです。まだ怪我が酷くて。意識も朦朧としています」
『分かったわ。ありがとう、しのぶちゃん。後は任せて』
部屋の外で誰かが話している。
女の人の声だと思う。
そして、静かに襖が開いて、誰かが入ってきた。
『…時透無一郎くんね?』
「うっ…だれ……?」
うっすら目を開けて相手を見る。でもはっきり見えない。
『初めまして。私は鬼殺隊・雪柱の宮景紬希(みやかげつむぎ)といいます』
みやかげ…つむぎ………。
『時透くん、具合はどう?』
どうもこうも。全身痛くてどうしようもないよ。
言葉にしようにも声が出ない。
もどかしいし、痛いし、苦しいし。
涙が溢れて止まらなくなる。
「…うっ…くるしい……いたい…うぅっ…」
『…そうよね。ごめんね、きついよね』
そう言って、つむぎさんは僕の額に手を当てた。
熱を持った肌に、ひんやり冷たい手が心地いい。
「くるしい……いたい…っ!つらい…。もう死んでしまいたい……!」
泣きながら訴えると、つむぎさんはそっとハンカチで涙を拭ってくれた。
『いま楽にしてあげるから。…深呼吸できる?』
「…ふっ…うぅっ……」
僕は言われるがままに深呼吸しようと努める。
『そう…上手よ』
言いながら、つむぎさんは僕の胸に手を当てた。
そして不思議なことに、今まで感じていた全身の痛みがスーッと消えていく。
『どうかしら?』
「…ぁ…もう痛く…ない……」
『よかった。傷が治ったわけじゃないから、まだ安静にね』
痛みがなくなった途端、猛烈な眠気が襲ってきて、僕は意識を手放した。
「つむぎさん、時透くんはどうですか?」
しのぶが紬希にたずねる。
『痛みを取ったらすーっと寝てくれた。でもまだ安静にさせててね』
そう告げると、紬希は薬草を採りに行ってくるね、とその場を後にした。
ほんとに、不思議な力。
治癒するまではできないものの、痛みで苦しんでいる相手に触れて痛みを取り除いてあげられるなんて。
さあ、他の負傷者の様子を見に行かなくちゃ。
カナエ姉さん、見ててね。
姉さんが好きだと言ってくれた笑顔を絶やさずに、私は今日も頑張るから。
つづく