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真守side
「あ!まもちゃーん!おはよー」
「んあ?おーはよ。」
「随分眠そうだね。真守」
「昨日喧嘩売られてよ。寝不足なんだわ」
「えー!危ないよー!」
「うっせぇー勝ったわ」
「そーゆうことじゃなーい!」
「ふっ、うっせ」
学校なんざ行く意味ねぇと思ってた。
本当は高校には行かず、働く気でいた。
けど、お袋がそれを許さなかった。
高校生の頃に俺を妊娠して、
高校を卒業出来なかったお袋。
だから、息子は高校くらいは出て欲しいそう。
まぁ、お袋が金出してくれたし行ってやるか。
面倒くさかったらサボればいい。
俺の金じゃねぇし。
なんて、思ってた。
最近までは。
母子家庭でお袋も金なんて無いのに。
そんなクソ野郎な考えをしていた。
俺は他とは違う。
母子家庭で貧乏で、親は仕事でほぼほぼいなくて
だからグレても仕方が無いだろう。
本当にクソ野郎だ。
俺は今変われなかったら、本当に一生このまま
だと思う。
俺の変な考え方なんて浅はかだと思わせてくれる
奴等に出会って、自分がどれだけ恵まれているか
どれだけ俺がこいつらに恥じる人生を送って
いたか。面と向かっては絶対言わねぇけど。
本気でこいつらをすげぇと思うし、心の底から
こいつらの隣にいても笑えるようになりたい。
こいつらに何かあったら直ぐに助けたい。
助けになれるような人間になりたい。
“友達”を教えてくれるこいつらに。
幸せしか起きなければいいのに。
なんて、
らしくも無いことを最近よく考えている。
昴side
「なんか教室騒がしくねぇ?」
「ほんとだねー扉にも他のクラスの子達が
びっしりだー」
真守と斗真が言うように、
いつもとはまるで違ういつも過ごす教室がある。
「邪魔。通れねぇんだけど」
真守の言葉に人集りは少し引き、
俺たちが教室に入る。
異様な程、俺たちが見られている。
……いや、俺か?
「おい!黒崎ぃお前、親に捨てられてんだろ?」
ーーーーっ!
思いもよらない言葉に思わず声の方向を見る。
「ーーっ!!!」
黒板には大きく
『黒崎昴は孤児院育ち
親に捨てられて、
女にも男にも体を売って金を稼いでる
生まれて来なければ良かった人間』
と書かれていた。
面倒でほっといた事が、
ここまで大きくなるとは。
「んだよコレ!!おいっ!!!!!
誰がやりやがった!出て来いや!」
まるで他人事のように黒板を眺めていた俺の耳に
真守の罵声が響いた。
空気がビリビリするのが感じる。
その迫力に、さっき俺を茶化して来た奴も
一切こちらを見ない。
斗真は、泣きながら
昴のこと何も知らないくせに
と小さな声で呟きながら
黒板の文字を消してくれている。
ちっ、と大きな舌打ちをしたあと真守も
黒板の文字を消してくれていた。
俺はただその様子を見つめていた。
『生まれて来なければ良かった人間』
そんなこと、何度自分で思ったか。
初めから居なければ良かったんだよ。
黒板が綺麗になる頃には、廊下にまで出来ていた
人集りが無くなっていた。
斗真も真守も、心配の言葉をかけてくれていた
けれど、不思議と特になんとも思わなかった。
大丈夫だよ
と笑って答える俺に、真守が腕を引いて
教室を出させた。慌てたように斗真も後ろを
着いてきていた。
「え、ちょ!真守??どうしたの?
授業始まるよ!」
無言で引っ張られるから頑張って声を張るけど
全然止まる様子のない真守。
後ろの斗真を見るけど、少し困った顔と
泣き腫らした目で見るから何も言えなくなった。
黙ってついていくと、保健室の前で止まった。
「この学校で唯一まともだと思う大人がいる」
《ガラガラガラガラ》
「あれ、今日は真守だけじゃないんだ」
消毒液とコーヒーの匂いと共に、
保健室の先生。
高野一哉先生の声がした。
「一哉さん、ちょっといていいすか」
「一哉先生な。いいよー
あ、君たちが真守の友達ね」
「「え?」」
「俺と真守さー小さい頃から家が近所で、
兄弟みたいなもんなんだよねー。
んで、最近ちゃんと学校来てっからどうしたんだ
って聞いたら友達出来たって言うんだから
びっくりだよねー」
「一哉さん!」
「ははっ、ごめんごめーん」
少しバツの悪そうな顔をしながら、
こちらを見る真守。
「お前さ、なんで教室で否定しなかったんだ」
「え?」
「確かに、施設の出だし親とも色々あったんだろ
うし、けどお前、体売ってねぇじゃん。
ちゃんとバイトして生活して来たんだし、
今だって……んで、それ否定しねぇんだよ。」
「………俺さ、施設に入りたての頃はすぐに
親が迎えに来る予定だったんだ。
どっちも他に相手作っていたから、そこもどうす
るか話し合ってどちらかが迎えに来るって。
でも、迎えには来なかった。そんなん、今考えれ
ば当たり前なんだよね。相手がいるのに、
わざわざ子供なんてお荷物引き取りに来る奴
なんているわけがない。
結局突然連絡が付かなくなって、この歳になる
までずっと施設で。
施設の人に言われ続けてたよ。
お前の親は一切金を支払ってないし、ここに置く
理由も無いけど、人道的に置いてやってるだけだ
って。だから、中学の頃は学校以外は施設のこと
やって、高校に入った途端に朝は新聞配達、
夜は深夜までバイトして生きてた。
蓮さんに会ってから世界が変わったけど、
体を売ってるってあながち間違ってないのかも
しれない。蓮さんに気に入って貰えたって理由
で働かせてもらってるし。
それに、俺自身が俺を
生まれて来なければ良かった人間だとも思ってる
から、あの文は別に間違ってなかった。
それに、なんか。
否定するのも肯定するのも面倒臭くて。
斗真と真守いてくれるし、家に帰れば蓮さんと
朔月さんもいてくれてる。
それ以外が本当にどうでも良くて、絶対的に味方
でいてくれる人が4人もいてくれてるだけで
俺は恵まれてるから。」
なんて、意外にも冷静に言葉に出来ている自分が
いて驚いている。
「とりあえず、教室には戻る?
それともここで過ごす?
担任の先生にも伝えなきゃだからどーするよ」
黙って聞いてくれていた一哉先生が
優しく俺たちに問いかける。
「んー。なんか今から戻るのも面倒なんで
今日はここでお世話になってもいいですか?」
「りょーかい。じゃあ伝えて来るから喧嘩しない
で待ってるんだよ。」
真守の頭に軽く手を乗せながら、白衣を揺らし
廊下に出て行った。
「……昴」
「ん?どうしたの?斗真」
「もしかして、今までも嫌がらせにあってた?」
「んー少しね。気にする程でもなかったし、
ほっておいたんだけどこんな事になって2人にも
迷惑かけるなら対処しとくべきだった。」
「ねぇ、昴。それは強がり?それとも本当に
気にしてないの?」
「本当に気にしてない。どうせ飽きたらすぐ
治まるだろうし、黒板のだって一瞬で過去のもの
になると思うよ。」
「お前はそれでいいんか」
「うん。どちらかと言えばそうなってくれた方が
いいかな。」
「そっかー。昴がそう思ってるんならいいや!」
「だな。けどよ、お前が生まれて来なければ
良かった人間だと自分自身で思ってること。
それは俺がキレるぞ。」
「え」
「お前が自分から幸せになる事を望まない限り
周りの人間はお前と一緒に幸せになる事は
出来ない。俺は、お前らとこれからも過ごして
行きたいと思ってるし、お前らのおかげで
クソ野郎だった自分を変えようと思えてる。
だから、昴も斗真もいてくれねぇと困る。だから
捨てた親達なんてクソ喰らえ。こっちは勝手に
幸せになってやる。ぐらいに思っとけ」
「っ、うん。」
「それって僕もこれからも一緒にいていいって
こと……?」
「なんだよ、いたくねぇのか?」
「いたい!!!」
「んなら、お前の生き方邪魔した奴等クソ喰らえ
とでも思って、俺らと生きろ。」
「うん!!」
一哉side
めんどくせぇな。
余計な動きしないで欲しい。
ったくよー
黒崎昴。
真守と仲良くなったのは誤算だが
まぁ、どうでもいいか。
適当に俺の手の中で転がってればいいんだよ。
本当に、あの人も過保護だ。