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霧が晴れぬ朝、否かの館にはいつもとは違う緊張が漂っていた。
前夜の殺人事件以来、館には警察官が常駐し、封鎖されている。斎藤悠斗刑事もまた、館に残って追加捜査を行っていた。だが、館の住人たちは皆、事件の余波で顔を強張らせ、言葉少なにしていた。
そのとき、執事が慌てた様子で悠斗を呼んだ。
「刑事さん、館の絵画の一つが消えています!」
消えたのは、館の応接間に飾られていたアンティークの油絵。数百年前の貴族の肖像画で、価値は計り知れない。だが、ただの盗難ではない。前夜の事件の余韻と、館に漂う不穏な空気が、この出来事をただならぬものにしていた。
悠斗はまず館の内部を調べる。
・応接間には窓の鍵も閉まっており、扉も施錠されていた。
・防犯カメラは、昨夜の事件で破損しており、映像はほとんど残っていない。
・しかし、絵の額縁の裏に微かに赤い線が残されていた。
館の住人たちの聞き取りを進めると、事件の夜、館を訪れた謎の人物の存在が浮かび上がる。だが、誰もその正体を知らない。
「犯人は、絵画を隠すためにこの館の秘密の通路を使ったのかもしれません」
悠斗は、前回見つけた隠し通路を思い出す。館にはもう一つ、秘密の地下室があるという伝承があった。
地下室の入り口を探して廊下を歩く悠斗。壁にかかる古い地図を見つめながら、彼は推理を組み立てる。
「絵画は盗まれたのではない。隠されたのだ。犯人は、誰にも見つけられない場所に運んだのだ」
地下室の扉を見つけた瞬間、奥から微かな光が漏れていた。扉を開けると、そこには絵画と共に、昨夜館を出入りしていた外国人男性がいた。彼は絵画を守ろうとしていたのだ。
事情を聞くと、外国人男性は前夜の事件に関係する秘密組織の一員で、館に伝わる古文書と絵画を守るために潜入していたことが判明する。絵画には、館の過去の隠された財宝の在処が暗号として描かれていたのだ。
悠斗は、事件と館の秘密がただの殺人ではなく、歴史的な謎に繋がっていることを理解する。
「この館には、まだ解き明かされていない謎が多い…」
事件の幕は一旦閉じるが、館の奥には、さらに深い秘密と危険が潜んでいることを、悠斗は直感したのだった。