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否かの館は、深い霧に包まれていた。
前回の絵画盗難事件から数日後、館には不穏な空気が漂っている。住人たちは互いに疑心暗鬼になり、わずかな物音にもおびえている。
その日、悠斗刑事は館の調査を続けていた。館には「鏡の間」と呼ばれる、全面鏡張りの部屋がある。昔は舞踏会の会場として使われていたが、現在は誰も足を踏み入れない。住人の一人、作家志望の若い女性・村上真琴が、昨夜鏡の間で奇妙な声を聞いたという。
「…誰もいないのに、囁き声が聞こえるんです」
悠斗は慎重に鏡の間に足を踏み入れた。部屋の中央には大きなシャンデリアが下がり、四方の壁は床から天井まで鏡張りだ。自分の姿が無数に反射している中、悠斗は声の主を探す。
だが、声の主は見つからない。ふと鏡に目を凝らすと、奥の一枚に微かに文字が浮かんでいることに気づく。赤い文字で、何か暗号のように書かれていた。
悠斗は文字を解析し、前回の絵画事件と同じく、館の隠された通路や秘密の部屋に関係することを察知する。どうやら館には、誰にも知られずに使える秘密の抜け道が複数存在するようだ。
そのとき、鏡の反射の中に、怪しい人影が映った。悠斗は即座に追跡するが、影は消えていた。館の住人たちも呼び集め、聞き取りを行う。
・村上真琴は、前回事件後に外国人男性と密かに接触していた。
・執事は、昨夜見た奇妙な影の存在を否定する。
・家政婦は、鏡の間には入っていないと主張する。
悠斗は部屋を隅々まで調べ、ついに鏡の裏に隠された小さな扉を発見する。その先は、館の古い地下通路につながっていた。通路の奥には、前回の絵画事件の鍵となった外国人男性が再び現れた。
「この館には、まだ知られていない秘密がある。誰も知らない通路を使って、過去の事件や財宝が隠されているんです」
外国人男性はそう告げ、悠斗と共に館の謎をさらに探ることを約束する。
だが、館にはまだ多くの謎が残されていた。鏡の間で囁く声は、過去の住人たちの怨念か、それとも生者の陰謀か。悠斗は、新たな事件の予兆を胸に抱きながら、館を後にするのだった。
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