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ロイさんの案内により、僕とホクト、カエンさん、ルーフさん、そして、グレイスさんの緊急六人編成で、僕たちは闇の神がいるとされる古城へと辿り着いた。
「もう既に、闇の神には発見されていると言っていいでしょう。あとは、どの様に出てきてもらうか……」
古城内には大きな広間があり、二階へと上がる階段が無数にあるが、階段の先には扉も廊下もなかった。
このフロアが最初にして最奥の部屋。
「初めまして、こんにちは、おやすみなさい」
そして、僕たちの脳にふわりと声が聞こえた。
「この声は……守護神 ドールの声です! 皆さん、気を付けてください!!」
全員に緊張が走る。
僕たちと龍族の一味幹部二人もいたら安心だ、と思っていたらそう言うわけでもないことを聞いた。
一に、冥界の国では龍の加護魔法は使えない。先程のフーリンのように暴発してしまうのだ。
二に、物質で造られたホクトの大剣、及び僕のラグマ用に装備してある防具も効かない。
三に、上記のことから、カエンさんもルーフさんもホクトも、かなりの制限が掛けられている。
端的に言えば、全員僕の支援しか出来ないのだ。
強いて言えば、この世界で加護を受けたグレイスさんの風龍魔法なら使えるが、ハッキリ言って実戦不足が否めないところだった。
「あれ……皆さん……どこに……?」
頭に響いてきた「おやすみなさい」の声を幕切りに、全員がどこかへと消えてしまった。
分断された……? いや、もっと落ち着け……。
仙術魔法 神無でも捉えることが出来ない闇魔法。
声の主は守護神だと言っていた。
と言うことは、間違いなくこれは魔法だ……。
すると、広間の外から人がやってくる。
「なるほど……理解した……」
その人物とは、僕そのものだった。
ここは既に闇魔法で創られた世界の中に僕たちはいる。
そして、自らと戦わせるわけだ……。
冥界の国へは龍長のカエンさんですら「惑わされた」と話していた。
龍の加護魔法が使えないことも分かった上で、龍族の一味から着実に狙った作戦を仕組まれている。
なら、僕がすることは、
「早々にケリを着ける……!」
僕が光剣を構えると、影は一気に眼前に飛んできた。
ウィンドストームか……!
僕の戦い方と同じだ……!!
僕はすかさず上空へ避けるが、そのまま影はアクアガンを三発放った。
「三発!? 分散できたの!?」
僕にも未だ分かっていない魔法の使い方ができるのか。
これは少し厄介だな……。
影の放ったアクアガンをラグマ・ゴアで掻き消すと、やはり僕の戦い方に似ている。
その影に隠れて再び眼前まで迫ってきていた。
「それは読めてる……!! フラッシュ!!」
地面に叩き付けようとフラッシュを放つが……。
バゴン!!
影は直様、自分の背後にブレイクを発動させ、岩盤に自分の体を叩き付けた。
痛みがないから出来る荒業か……。
そして、至近距離で手を翳される。
防御も間に合わず、影のフラッシュをモロに喰らい、僕は天井に思い切り背中を強打した。
「ぐはっ……!」
しかし、影の猛攻が止まることはなく、またしても僕の眼前で光剣を翻していた。
キィン!!
光剣と光剣は、光を放ってぶつかり合った。
ギリギリと剣が犇めく中、影はニヤリと笑う。
その瞬間、僕は重力の負荷がいきなり掛かる。
「うっわあ!!」
ドコォ!!
大きな音を立て、僕は地面に叩き付けられた。
「こんな魔法……使えないのに……」
いや、もしかしてこれが……闇魔法……!?
そして、高速落下してきた影は、僕の喉元に光剣を突き立てた。
負け……いや、死ぬのか……?
しかし、光剣はブルブルと震えた。
そうか……分かった……。
どうしても……この影は “僕” なんだ……。
「降参する。君には勝てないや」
そう言うと、影の瞳からは涙が零れた。
そう……僕と言うことは、
「君も、殺したくないんだよね」
その瞬間、影と同時に、僕たちを包んでいた古城はボロボロと紙のように消え去っていった。
「エイレスくん!?」
倒れている僕を見守るように、全員がいた。
あれ……みんなも戦っているはずじゃ……。
「急に倒れたからビックリしたよ、何かあったのかい?」
ルーフさんは困惑した顔で僕の上体を起こした。
そこに、コトコト、と足音を立てて、一人の少女が姿を現した。
「あなたが、守護神 ドールさん、ですね?」
「はい。私が闇の神 守護神のドールです」
全員の前に無防備に現れて……余裕があるのか……?
「旅人様、先程は無礼にも試すような真似をしてしまい申し訳ありませんでした……」
すると、ドールは徐に頭を下げた。
「え、えぇ!? えっと……試す……?」
「はい。私の闇魔法の空間で、貴方は自身と戦ったはずです。貴方は自分を殺さなかった。だから帰って来られたんです」
岩の神の守護神アリシアさんにも似たような試され方をしたな……。
闇魔法使いはみんなこんな感じなのかな……。
僕は、影との戦いをみんなに説明した。
「どうか、闇の神……アゲルを助けてください!」
そう言って、ドールは再び頭を下げた。
どうやら、龍族の一味、ダークスライムだったガンマは、龍族の一味すらをも利用し、闇の神と組んで全員をこの冥界の国へ留まらせるつもりらしい。
従うフリをして、守護神ドールは、僕たちがここに来るのをずっと待っていたそうだ。
闇の神 アゲルも、利用されているのだろうか……。
「どちらにせよ、私たちがまずすべき事は、闇の神に会って冥界の国から出させてもらう必要があります。その過程の話ですから、ドールさん、私たちにお任せください」
なんの躊躇いもなく、カエンさんは朗らかに笑った。
その姿が、僕にはかっこよく見えた。
「エイレスくん、君はどうしたい? 闇の神を黙らせ、強制的に脱出することも出来るが……」
カエンさんはやはり、僕に訊ねる。
自分で決めろと、そう言いたいのだと思った。
「闇の神を……助けましょう……!」
自然と、ドールさんは泣いていた。
ここまで深く愛されながら、更に何を望んでいるのだろうか……。
僕たちは、ドールさんの案内で、闇の神がいる本当の古城へと足を進めた。