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収まらない非難の声に、後日に必ず説明の場を設けるからとスタッフが言い含め、なんとか観客らには帰ってもらったものの、
次の日のスポーツ新聞の見出しには、
「七瀬リオ 引退?!」
という文字が躍ることとなった。
ことが大きくなり過ぎて、「あれは嘘でした。サプライズの演出でした」なんていうその場しのぎな言い訳は、通らなくなっていた。
不手際の釈明会見をしなければならず、また何を言い出すかわからないないからという理由で、あたし抜きで会見は行われた。
けれど本人不在のまま、相変わらず嘘だったとくり返すばかりの信憑性のまったくない発言に至っては、マスコミや世間の不信感を逆にあおる羽目にもなった。
事務所は、あたし自身が謝って改めてやり直すというのなら、今回のことについては目をつぶってやってもいいと言った。
以降、あたしが真摯な態度を取るのなら、事態はなんとか収束させる。契約も続行してもいい。
あくまで、おまえの出方次第だと──。
事務所の言い分に、あたしは首を横に振った。
もうあたしには、アイドルとしてやっていくつもりなんて、カケラもなかった。
あたしの過去に気づかれた今となっては、このままアイドルを続けられるとも思えなかった。
頑なな態度を崩さず、引退すると言って引かないあたしに、事務所はなだめすかしにかかった。
引退して、どうするんだ?
こんな中途半端で、終わっていいのか?
七瀬リオは、まだ充分人気があるのに、こんなところで彼女を終わらせてしまうのか?
そんな言葉は、あたしには、どれもみんな響かず、ただ無意味でしかなかった。