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お腹が痛くなるぐらい笑った。

ふたりが呆れるような、それでいてうれしそうな温かい目でわたしを見ているのに気づいた。


心優しいこの人達はきっと先日の泣きじゃくるわたしを見て、ずっと案じてくださっていたんだろう。

その優しさに触れて、心が震えた。


「では、クリスは男性役でキールは女性役でお願いします。クリスはキールの背中に腕を回してくださいね。ほら、もっとお二人とも恥ずかしがらずに近づいてください」


ふたりは躊躇しながらも抱き合った。

「良い感じですね。そして、お二人共お互いの瞳を見てください」


「ええっ!クリスの前髪が長すぎて無理かも」

「そこをなんとかがんばってください!」

キール様は必死にクリス殿下を直視しようとがんばっておられるが、沸騰したかのように顔を真っ赤にされて、死にそうになっている。

クリスはひたすらじっと嵐が過ぎ去るのを耐えているといった感じだ。


「限界です」

キール様がギブアップで、クリス殿下の腕を解いて、腕から逃げ出した。


「もう!じゃあ、わたしが実践するわ」

わたしはクリス殿下の腰に勢いよく手を回す。

お互いの距離がグッ縮み、クリスの体温を感じた。

人の体温って温かい…

初めて知る人の体温。


先ほどからじっと静かに耐えていたクリス殿下がさらに身体を強張らせながらも、背中に手を回してくれた。


「クリス、大丈夫?前髪に触れますね」

クリス殿下は無言で小さく頷いた。


わたしは、クリス殿下の温かい体温を感じて高鳴る心臓で手先が緊張で震えそうになるのをなんとか抑えて、ちょっとくせ毛の美しい黒髪長い前髪を壊れものを触るかのようにそっと触れる。


前髪を掻き分けると眼鏡の奥の瞳と目が合った。


はっ、とする。

クリス殿下の瞳は真っ青な綺麗な青色の瞳だった。

「…綺麗」

思わず声に出してしまう。

「えっ?」

「なんでもありません」

自分の平々凡々の琥珀色の瞳が恥ずかしいと思った。


クリス殿下の腰に回していた手を離し、クリス殿下の両頬を優しく自分の両手で包み込む。


「わたしの手が冷たくてすみません」

クリス殿下は無言で首を横に振る。

その綺麗な瞳が必死でわたしの瞳をじっと見てくれている。


「クリス、キスはこのようにしてから、唇に寄せていくと良いと思います」


無言でお互いの瞳を見つめ合う。

恥ずかしいのに視線を逸らせない。


わたしの背中に回しているクリス殿下の腕に少し力がこもるのがわかった。

なにか、ドクっとするようなものが込み上げる。

これ以上はわたしが耐えられない。


「クリス、お疲れ様です」


わたしはクリス殿下の両頬から手を離すと、クリス殿下も背中に回していた腕を解いてくれた。


3人とも地獄を見たような形相をしている。


「これが「抱きしめる」か。すごいな」

クリス殿下も顔を真っ赤にしている。

そして、分けられた前髪をすぐに元に戻している。


「その先の「キスをする」も形まではもっていけましたね」

わたしが力なく笑う。


「俺、これ無理かも。これを好きな子にするんだろう。いろいろ耐えられない」

キール様が深いため息をついている。


「でも、この一連の流れは「溢れる思い」の感情だけで自然と出来るらしいですよ。恋愛小説の中では」


3人で顔を見合わせ、ふぅと息を吐く。

ハードルの高さを実感したといった感じだ。


「それにしてもシャンディは自然にできていたね」

「そりゃあ、ペイトン様という見本をしっかり見ていますから…って、あ…」

つい、興奮をしていて理性が緩んでいたのか、うっかり余計な発言をしてしまった。


「シャンディ、それはどういうこと?」

クリス殿下がすかさず、突っ込んで聞いてこられた。

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