コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「昨日人を殺したんだ」
梅雨があけて、もう初夏だっていうのに泥臭い黒雨の水曜日。君は僕に、そう告げた。
揺らぐ僕の視界。君の瞳は鈍色の涙をいっぱいに溜めて、それは明日を失くした終末世界を映す。つむじからつま先まで、プールに潜ったみたいにずぶ濡れな君は小刻みに震えていた。不登校の僕の口からは君を気遣う言葉なんて出てこなくて、呆気に取られたまま、僕はその場で立ち尽くしていた。
「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。もう嫌になって、肩を突き飛ばして、 打ち所が悪かったんだ。 もうここには居られないと思うし、 どっか遠いとこで死んでくるよ」
君はぽつりぽつりとそう呟いて、足元を見て乾いた笑顔を作った。僕はその痛みも苦しみも消えた、疲れきった笑顔を見て、
「それじゃ僕も連れてって」
咄嗟に口が動いていた。
僕たちはありったけのお金と台所に転がるナイフ、それから携帯、ゲーム。全部リュックに詰め込んだ。僕の存在証明になるものは全部割って、燃やして、破いて、壊してきた。名前も覚えてないクラスメイトとの集合写真も、僕の中の醜いどろどろを吐き出したあの日記も今となってはもう埃をかぶったガラクタでしかない。
人殺しとダメ人間の君と僕の旅だ。
そして僕らは逃げ出した。この狭い狭いこの世界から。
どどめ色の家族との縁も、腐ったクラスも、何もかも全部投げ捨てて君と二人で。片道切符を買って誰も僕たちのことなんか知らないくらい遠い遠い場所で二人で死のう。この世界は君が生きるには穢れすぎてる。価値なんてないから。顔の見えない暗闇から嘲笑ってる大人が溢れかえってる、みんな人殺しじゃんか。君は何も悪くないよ、君は、何も悪くないよ。
言葉にできない感情を飲み込んで、伝わればいいのにって、君の震える手を強く握って、青い空に向かって踏み出した。
結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ
そんな共通点で自分たちを守ってきた
そんなくだらない昔話を君としている時、君の手はもう震えていなかった。
もう誰にも怯えなくたっていいんだ。そんなことを考えながら線路の上をゆっくりゆっくり歩いた。
金を盗んで、2人で逃げて。君とならどこにでも行ける気がしたんだ
誰にも愛されずに誰にも大切にされなかった僕らに怖いものなんかないさ。僕たちが何をしたって大人は誰も僕ら見てくれなかったんんだ。額のべっとりとした汗も落ちて汚くなってしまったメガネももうどうでもいいんだ。あぶれ物の小さな逃避行の旅だ
コンクリートの床が肌に擦れる、少し痛いような涼しくて気持ちいいような。「いつか夢見た優しくて誰にも愛される主人公ならこんな汚れた僕たち助けてくれるのかな?」そんな馬鹿げた質問をすると彼女は「別に救いなんか必要ないじゃないか。この旅が、君といられることが私にとっての救いだから」と言った。頬が熱くなるのを感じる。僕の声は少しばかり嬉しさと恥ずかしさを含めた声になっていた。君はそんな僕を見て笑ってくれたんだ。久しぶりに見た君の笑顔。あぁ、僕はやっぱりこの子が好きなんだ
あてもなく彷徨う蝉の群れの声、僕たちを捕まえようとする大人たちの声に少し苛立ちを覚えた。だけどあの瞬間はもうそんなことどうでもよかったんだ。君はナイフを持った。そして少し怯えているような声でこういったんだ「君が今までそばにいたからここまで来れたんだ。だからもういいよ。もういいよ」
「死ぬのはわたし一人でいいよ」
恐怖、緊張感が僕を支配して息をすることも忘れてしまった。その瞬間君は首を切った。僕はまるで水に浸かったかのように汗でぐっしょりとしていた。人は本当にショックなことが起きると声が出ないというのは本当なんだな
気づけば僕はたくさんの大人に囲まれて捕まって、君がどこにも見つからなくって、君だけがどこにもいなくって
そして時は過ぎていった。ただ蒸し暑い日々が過ぎていった。なぁ、なんでだよ、あいつらは(家族、クラスの人たち)いるのになんで君だけどこにもいないんだよ。
あの暑い暑い夏の日を思い出す。君といられたあの夏の日を
僕は今も今でも君を待っている。君をずっと探しているんだ。いつか時がたったら気まぐれな猫みたいに顔を出してくれると願って。君がまた僕に会いに来てくれたら、そうしたら僕は君に言いたいことがあるんだ。あの夏の夜。君に言えなかった僕を今でも恨んでるんだ。もし今君と話せるんだったら声がかれるほどに叫んでやりたい。毎年9月の終わりには思い出すんだ。あの6月の匂いを(ここのパートカットしようか迷い中)
君の笑顔が君の無邪気さが僕の脳裏から離れないんだ
「誰も何も悪くないよ君は何も悪くないから。もういいよ投げ出してしまおう」
そう言って欲しかったんだろ?なぁ
まだ途中経過だけど
合作完成しても載せる気は無い