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上野文
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#悲しい
シジミン
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kirisu
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畝澄ヒナ
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私――、中村恵は涼さんにすべてを打ち明けた。
少し前から、いきなり秘書課の小鳥遊という女が朱里に近づき、違和感を抱いていた事。
彼女の言う〝お局〟である鏑木たちが朱里を快く思っていなくても、課長たちはまともそうだと朱里から聞いていた。
本来なら飲み会系の幹事は、リーダー気質の鏑木、もしくは雑用係が担っていたと予測できる。
でもいつもなら『歓迎会をやりましょう』と言う人が何も言わず、課長クラスの人が『今回はやらないのか?』と尋ねても、鏑木の息が掛かった社員たちは『忙しい』とか適当な理由をつけたのだろう。
鏑木の取り巻きは二人、フレネミーの小鳥遊を入れても、朱里を敵視するのは秘書課十五人の中、四人だ。
そして朱里、笹島さん、エミリさん、諸岡さんを抜いても、残り七人がいる。
うち二人は課長、課長補佐で、管理職のその人達はまともな人だろうから、篠宮さんの事も考えて、朱里の歓迎会をやらないのかと、せっついた可能性はある。
慣例として新しいメンバーが入ったら、飲み会が好きでも嫌いでも歓迎会をやるのが社会人というもので、新顔が誰であっても〝意図的に開かない〟という事はあってはならない。
朱里は『忙しくて、気がついたらバタバタしてて、歓迎会って時期でもなくなっちゃったみたい。上層部の入れ替わりがあったし、役員に伴って秘書課も大変だったんだと思う』と言っていたけど、気にしていない訳がない。
課長たちが歓迎会について促しても、鏑木たちが『強制ですか?』とごねた可能性も高いし、まともな人たちは鏑木たちに逆らったら、自分までターゲットにされかねないと思うだろう。
全部想像だけれど、このようにして朱里の歓迎会は開かれなかったのだと思っている。
そして小鳥遊は鏑木とは別の思惑――、篠宮さんと恋人になりたいという想いで動き、鏑木たちには〝下っ端感〟を出し、彼女たちが朱里を悪く言っても適当に合わせていたんだろう。
笹島さんの歓迎会が開かれた事で、小鳥遊は朱里との接点を得た。
直接篠宮さんに告白しても玉砕するだろうと、弁える知能はあったみたいだ。
でも篠宮さんが大事にしている朱里に取り入り、鏑木について『困った人ですよね~』と、あたかも朱里の味方をすれば、信頼を得られると計算しているのが、こざかしい。
そして朱里に盗聴器入りのチャームを持たせて盗聴し、少しでも二人の関係に亀裂を入れられる情報を掴んだら、それを武器に少しずつ朱里に篠宮さんへの不信感を抱かせ、亀裂を大きくさせていく。
加えて〝息抜き〟と称して合コンなどに誘い、全力で〝いい相手〟をアテンドして、朱里を幸せにしてくれる男性を見つける。
少しでも朱里が不幸な目に遭えば、篠宮さんとの元サヤを願うに決まっている。
だから『戻りたい』と思わせないほどの男を探して、朱里に宛がうつもりでいたのだ。
結婚相手を失った篠宮さんは落胆し、そこに小鳥遊が登場。
最初は篠宮さんの気持ちが頑なでも、少しずつ取り入って心の傷を癒やし、自分が結婚相手に……、というのが小鳥遊のシナリオだったんだろう。
お手洗いで小鳥遊に遭遇した時点で、私は彼女が個室に入っている間にスマホで音声を録音していた。
だから最後に私が啖呵を切ってお手洗いを去るまで、全部の音声が録音されてある。
昼休みが終わって職場に戻ったあと、少ししてから成田部長に呼ばれた。
『……なんでしょうか』
かつて〝速水部長〟がいた、透明なパーティションに囲まれた部長室に入ると、デスクについている成田部長は溜め息をついた。
『……総務部の部長から呼び出し。篠宮副社長も同席する。……分かる?』
『……分かってます』
押し殺した声で言うと、成田部長はもう一度溜め息をついてから、眼鏡を外して磨きつつ言う。
『まぁ、いつも事なかれ主義の君が、秘書課と衝突したと聞けば、大体の事は想像できる。何か言わざるを得なかった事情があったんだろう。……こう言ったら問題があるが、総務部の部長は、今までも部下を御しきれなかった件で、上から厳重注意されている。中村さんに正当性のある事情があるなら、篠宮副社長にきちんと説明すればいい。君も分かっているだろうが、副社長は人の話を聞かずに一方的な処罰を与える人じゃないから』
『はい』
〝速水部長〟がいた頃は、彼の若いカリスマに隠れていて、ともすれば若い部長に嫉妬していたんじゃないか、と言われていた成田元課長だけど、部長になったあとは安定した仕事っぷりをしている。
〝速水部長〟と違ってやや神経質な人だけど、前任の部長がいかに人気があったかを目の当たりにして、何をすれば部下の心を掴み、何をしなければ反感を買わないかは把握していると思う。
だから新体制になったあとも、私は安心して商品開発部で働けていた。
コメント
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うわ、めっちゃ読み応えある回でしたね…。中村さんが涼さんに全部打ち明ける流れ、緊張感が半端なかったです。特に「十五人中四人が敵対」って数字で整理するところ、構成がしっかりしてて、なるほどなって思いました。 小鳥遊の「篠宮さん狙い」のシナリオも、盗聴器から合コンアテンドまで計算づくって、ゾッとしますね…。お手洗いでの録音、あれがどう効いてくるのかすごく気になる。続きが待ち遠しいです!