テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
123
1,713
寿司ったらん
4,135
春は花粉症の俺には好きだけど辛い季節。
そういえば、今年ゆっくり桜なんてみてない。
散ってゆく桜は儚くて、綺麗なのにあまりにも寂しくなって少し苦しくなるから、積極的には見に行かないけど。
いつかは全部無くなるのだと、当たり前のことなのにそれを見せられている気がして。
···まぁ桜も何も最近はずっと外に出ることなくスタジオに居たりするんだけど、と思いながスタッフと喋っていると慌てたりょうちゃんが珍しく最後にやってきた。
「おはよ、はぁ、遅くなっちゃった」
「めずらし···ん?」
「あ、これお団子!みんなに」
たくさんのお団子を机に並べていくとスタッフはやったー、とか嬉しいー、と言いながら早速持って行って食べている。
「元貴もどうぞ」
はいっ、とにっこり笑顔でパックごと渡してくれるりょうちゃんからピンクの花びらが1枚ひら、と落ちる。
もしかして、とりょうちゃんの横に立ち、パーカーのおっきなフードを被せるように持ち上げる。
ひらひら。
と、いうよりぶわっと。
俺とりょうちゃんの間に桜の花びらが舞い落ちる。
もしかして、とは思った量を超えたそれらはスタジオで落ちてくるキラキラした紙吹雪のように舞う。
「お花見、してたの?」
「···全部払ってきたつもりだったのに。ごめんね」
なんで謝るのか分からなくて首を傾げてりょうちゃんの髪についた花びらをとってあげる。
「なんとなく···元貴は桜が散ってるの好きじゃないのかなって···」
そう言って俺にもついていたようで花びらを取ってくれて、可愛い、と呟いた。
何言ってるの。
可愛いのは貴方でしょう。
桜を拾って手にいっぱいに乗せて笑ってる。
「···今日さ、夜桜見に行こ」
「いいの?いく!」
「若井も誘お」
夜、ライトアップされた桜を見に行く。
もう散り始めたそれは本当に儚くて、見上げるりょうちゃんにたくさん振り注いでいた。
「元貴、綺麗だねぇ」
写真を撮るからって少し離れて行った若井にバレないようにりょうちゃんの手を握った。
「···元貴?」
俺の気持ちには敏感なのに、自分に向けられる好意には疎い。
だから今すぐ伝える気はないけど、今はこの手を離したくなかった。
「ちょっと寒い」
「あ、そうだね」
納得したのかりょうちゃんは手を握り返してまた桜を見上げる。
「綺麗だね」
「うん、とっても」
「本当に···綺麗だ」
舞い散る桜はりょうちゃんを飾る背景でしかなく、俺にはりょうちゃんしか見えてなかった。
「りょうちゃんと見れて良かった」
ずっとこんな風に季節をりょうちゃんと感じていたいと思う。
ただ一緒の時間を過ごせて同じ景色を見る···なんて、幸せなんだろうか。
「あ、若井帰ってきた。行こっか」
そっと温かくなった手を離して遠くから帰ってくる若井に手を振って、りょうちゃんは若井のところへ走っていく。
「りょうちゃん、好きだよ···」
舞う桜吹雪と春の強い風の中にその声は消えていった。
いつかはその想いを告げようと決めてりょうちゃんに駆け寄った。
コメント
3件
桜の儚さと❤️くんの片想いな感じが重なり、すごく素敵なお話でした🌸🥹