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雨はまだ降り続いていた。
ザァァァァ…
停電したピザ屋。
テーブルの上のロウソクだけが、ゆらゆらと光っている。
ソファには二人。
チャンスは深く眠っていた。
撃たれた傷のせいか、呼吸は少し重い。
エリオットはその横で座りながら、ネクタイを指でくるくる回している。
「……寝てる」
小さく呟く。
銀髪の前髪が少し顔に落ちている。
エリオットは少し覗き込む。
「チャンス」
反応なし。
「チャンス」
静かだ。
エリオットはくすっと笑う。
「起きない」
そしてまたネクタイを引く。
ぐい
もちろん反応なし。
「ほんと寝てる」
エリオットは背もたれに寄りかかる。
外で雷が光る。
その瞬間――
チャンスの腕が動いた。
ぐい
「え」
気づいた時には。
エリオットの体が引き寄せられていた。
チャンスの腕の中。
「……?」
エリオットは目をぱちぱちさせる。
チャンスは目を閉じたまま。
完全に寝ている。
でも腕はしっかりエリオットを抱き寄せていた。
「え」
エリオットは小さく笑う。
「無意識?」
逃げようと少し動く。
すると。
ぎゅ
腕の力が強くなる。
「……」
エリオットは止まる。
チャンスの顔はすぐ近く。
ロウソクの光が銀髪に反射している。
エリオットはぼそっと言う。
「チャンス」
返事はない。
寝ている。
でも。
腕は離さない。
エリオットは少しだけ困った顔をする。
「これ」
小声。
「どうするの」
もちろん返事はない。
雨の音だけ。
エリオットは少し考えて――
そして。
やっぱり。
ネクタイ。
ぐい
チャンスの顔がほんの少し近づく。
エリオットは笑う。
「寝てても引ける」
その時。
チャンスが小さく動く。
「……ん」
目は閉じたまま。
でも腕はまだエリオットを抱いている。
エリオットは小さく囁く。
「起きてる?」
チャンスはぼそっと言う。
「……逃げるな」
「え」
目は閉じたまま。
完全に寝言。
エリオットは一瞬黙って。
それから。
小さく笑った。
「逃げないよ」
そして。
またネクタイを指でくるくるする。
ロウソクの火が揺れる。
雨はまだ止まない。
チャンスはそのままエリオットを抱いたまま眠っていた。
エリオットは静かに呟く。
「……重い」
でも。
少しだけ嬉しそうに笑っていた。