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雨はまだ降っていた。
停電したままのピザ屋。
ロウソクの火は小さくなり、今にも消えそうだった。
ソファには二人。
チャンスは深く眠っている。
撃たれた傷のせいか、腕はエリオットを抱き寄せたまま。
エリオットは腕の中でぼそっと言った。
「……重い」
もちろん返事はない。
チャンスはぐっすりだ。
エリオットは少し動こうとする。
「ちょっと離れて…」
ぎゅ
腕の力が強くなる。
「……」
エリオットは諦めた。
「逃げるなって言ってたし」
小さく笑う。
外で雷が光る。
その時。
エリオットが体勢を変えようとした。
ソファが少し狭い。
足が滑る。
クッションが動く。
そして――
ぐらっ
「わ」
次の瞬間。
ドサッ
エリオットが完全にチャンスの上に倒れ込んだ。
「……」
「……」
距離ゼロ。
というか。
エリオットがチャンスに乗っている状態。
エリオットは一瞬固まる。
「え」
チャンスの目が、ゆっくり開いた。
「……」
「……」
数秒の沈黙。
ロウソクの火がゆらゆら揺れる。
チャンスがぼそっと言う。
「……何してる」
エリオットは笑った。
「事故」
「どんな事故だ」
「寝返り」
チャンスはまだ状況を理解していない。
「……降りろ」
エリオットは動こうとする。
でも。
ソファが狭い。
バランスが取れない。
そして。
そのまま――
チャンスのネクタイを。
ぐい
「……」
チャンスが呆れる。
「この状況でそれやるのか」
エリオットは笑う。
「癖」
チャンスはため息をつく。
「お前」
低い声。
「今どういう体勢かわかってる?」
エリオットは少し考える。
そして。
「近い」
「それだけか」
チャンスは手を上げる。
エリオットの腰を軽く支える。
「動くな」
「え」
「落ちる」
そのまま軽く体勢を直す。
でも。
距離はほぼ変わらない。
エリオットはチャンスの胸の上。
顔がかなり近い。
ロウソクの光で銀髪が光る。
エリオットはまたネクタイを指でくるくるする。
「……チャンス」
「なんだ」
「起きてた」
「今起きた」
「残念」
「何が」
エリオットは笑う。
「抱きついてたの見たかった」
チャンスは一瞬黙る。
「……」
エリオットは言う。
「寝てる時」
「……」
「俺離さなかった」
チャンスの眉が少し動く。
「覚えてない」
「ぎゅってしてた」
「……」
エリオットはまたネクタイを引く。
ぐい
顔がさらに近くなる。
チャンスは低く言う。
「……エリオット」
「ん?」
「ほんと」
少し笑って。
「危機感ないな」
エリオットは首をかしげる。
「そう?」
チャンスは小さく息を吐く。
そして。
「……降りろ」
「やだ」
「なんで」
エリオットはにこっと笑う。
「ネクタイ近い」
チャンスはとうとう笑った。
外ではまだ雨が降り続いていた。