「ん…………何だアレは……?」
主人の帰りを待っていた、ミケ。
窓際でいつも通り、監視をしていたのだが、今日は主人の横に知らない猫が2匹居る事を発見した。水晶体が忙しく動く。猫達の動きを逃さないように。
ピークと2匹が、主人の部屋に近づいて来る。
こいつら……表面温度が低い。
俺と同じ魔改造が施されているのか……
まぁ、主人と一緒に来るって事は……
敵ではないと思うが、用心に越した事は無いだろう。
スタッ……
ミケは窓枠から飛び降り、玄関先のフロアへと移動する。
この音を、ノラは聞き逃さなかった。
…………なんか、いやがる。
ピークが向かう先にある建物。その一室からの音。音響拡張モジュール全開、ノラの聴覚はその音を捉えた。
「3階向かって左3つ目。あの部屋だ……」
ノラは、タマに視線を向ける。タマはその部屋に嗅覚神経を注いで、シンパシーネックを通じて情報を回収する。
「うん……主人の部屋で間違いない。同じ匂いがする。それと……1匹、猫の匂いだね。但し、悪い匂いじゃないよ。嘘っぽさも感じない。ただ、シュガーを舐めたと思ったら、ソルトだった……そんな苦っぽさ、よく言えばクールな匂いに感じるよ……」
建物に近づく度に、ノラの表情は厳しくなる。
「ノラ……喧嘩はダメだからね……」
タマは心配そうにノラの顔を覗くが、
ノラは全くお構いなしだ。
ピークと2匹は建物に入り、エレベータに乗った。
より一層、ノラの顔が険しくなっていく。
エレベータは3階に到着する。
カシャッ
この音にノラが激しく、タマも反応する!!
シンパシーネックのボタンを押して
「なにかを」起動させた音だ。
ノラもネックの右から3番目を噛み、カーボンナノブレードを展開させる。
それと同時にタマも左ボタンを噛む。鼻を覆うプロテクターが延長し、顔下半分を包み込むフェイスシールドを装着。
「こっちから攻撃しないでよねぇ……」
(ちょっとは話聞いてょ……)
お構いなしの完全戦闘体制の、ノラ。
ピークは、部屋のドアを開けた。
カーボンナノブレードをコンクリートに突き立てて、ノラが矢のように真っ直ぐ飛び込んでいく。
その、刹那!!
シュゴォッ!!
噴き出した白煙が尾を引き、火薬の焦げた匂いとともにノラの視界を覆う。ノラは、身をひるがえして壁に飛ぶ。ミケは全集中、その白煙を嗅ぐ。
煙幕だ。
「大丈夫、毒素も危険性も無く、ダメージを負わない!ただの煙幕だ!ノラっ!!」
ミケはノラと真逆に飛び、本棚の上で構える。
ノラは壁にブレードを突き差して、飛び掛かる姿勢を見せる。
「もうやめろ、終わりだ!僕達は、味方なんだ!」
タマが鼻先を震わせ、声が裏返るほど必死に叫んだ。
2匹に必死で訴える、タマ。
その間、僅か4秒。
ピークはこの猫達に、いたく感心していた。
この躍動感、この機敏さ…………
武器も言葉も要らぬ――この動きだけで国家を揺るがせる、とピークは確信した。
ドアを閉めて、いつものシングルソファに座る。
シュッ
ミケはシンパシーネックのボタンを再び噛んで、解除。タマも同様にガードを解く。
ノラは暫く眺めていたが、主人が差し出しているカプセルを見つめながら、結局、俺達の絆はこの黒いカプセルか…………ノラはそれに従うように刃を収めた。
…………………………
「Fight like cats and dogs」(英語)
意味:「激しく口論する、激しくけんかする」という英語の慣用句。犬と猫が互いにけんかをする様子から、相性が悪くしょっちゅう激しいけんかや口論をする関係を指し、「犬猿の仲である」という意味でも使われる。
例:Ever since their wedding day, they’ve fought like cats and dogs. (犬と猫のように激しくけんかをする)
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