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停電したままのピザ屋。
外では雨がずっと降り続いている。
ザァァァァ…
店の中は暗く、窓の外のネオンと時々光る雷だけが頼りだった。
エリオットはようやく一本のロウソクを見つけて、テーブルの上に置いた。
小さな炎がゆらゆら揺れる。
「見つけた」
チャンスはソファに座りながら言う。
「文明の勝利」
「大げさ」
エリオットはそのまま隣に座った。
ソファは二人で座ると、少し狭い。
肩が軽く触れる距離。
チャンスがちらっと見る。
「……近い」
エリオットは笑う。
「ソファ小さい」
「お前が寄ってる」
「バレた?」
チャンスはため息をつく。
外で雷が鳴る。
ゴロッ
エリオットはロウソクの火をじっと見ている。
金髪がオレンジ色に染まる。
チャンスはふと聞いた。
「……なあ」
「ん?」
「なんでネクタイ引っ張るんだ」
エリオットは少し考える。
「クセ」
「それは聞いた」
「なんか」
エリオットはチャンスのネクタイを指でつまむ。
そして――
ぐい
「距離近くなる」
チャンスは呆れる。
「そりゃなる」
「だから」
エリオットは笑う。
「楽しい」
沈黙。
雨の音。
ロウソクの火が揺れる。
チャンスはソファにもたれながら言う。
「……変なやつ」
「よく言われる」
エリオットは軽く肩を寄せる。
「チャンス寝ていいよ」
「ここで?」
「怪我してるし」
チャンスは撃たれた肩を少し動かす。
「まだ痛い」
「でしょ」
エリオットはクッションを押し付ける。
「ほら」
「雑」
チャンスは笑いながら体を預けた。
数秒後。
エリオットの手がまた動く。
ネクタイ。
ぐい
「……」
チャンスは目を閉じたまま言う。
「まだやるのか」
「癖」
「俺寝れない」
「ごめん」
でも離さない。
チャンスは目を開ける。
ロウソクの光の中。
エリオットの顔がすごく近い。
金髪の天然パーマが少し乱れている。
チャンスはぼそっと言う。
「……エリオット」
「ん?」
「ほんと」
少し笑って。
「無防備すぎ」
エリオットは首をかしげる。
「そう?」
チャンスはゆっくり手を伸ばす。
そして。
エリオットの手首を軽く掴む。
「捕まえた」
「え」
今度はチャンスが引く。
ネクタイじゃない。
エリオットの腕。
ぐい
距離がゼロになる。
エリオットは一瞬だけ驚いて――
それから笑った。
「仕返し?」
「そう」
静かな店。
雨。
ロウソク。
チャンスは小さく言う。
「……逃げないのか」
「何から」
「俺」
エリオットは少し考えて。
それから。
またネクタイを引いた。
ぐい
顔が近い。
「逃げない」
チャンスが小さく笑う。
「ほんと」
「うん」
「変なやつ」
エリオットは肩を寄せたまま言う。
「チャンス」
「ん?」
「眠い?」
「少し」
「寝ていいよ」
「お前は」
「起きてる」
「なんで」
エリオットはネクタイを指でくるくるしながら言う。
「逃げたら困る」
チャンスは笑った。
「逃げない」
そして目を閉じる。
数分後。
チャンスは眠っていた。
エリオットは横でロウソクを見ている。
雨はまだ止まない。
エリオットは小さく呟く。
「……おやすみ」
そして。
最後にまた。
ネクタイを軽く引いた。