テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
視点 🧣
次の日の夜。
レウさんの家は静かで、
昨日の海が嘘みたいに穏やかだった。
「……静かすぎない?」
ぽつりと呟き、少し目を離した瞬間。
さっきまでいたコンちゃんがいなかった。
「……は?」
一瞬だった。
引きずられる音も、悲鳴もない。
まるで、
地面に飲み込まれたみたいに。
「コンちゃん!?」
俺が駆け寄った床は、濡れていた。
水飛沫。
塩の匂い。
「……ポータル」
みどりが横で解析する。
「海妖族ノ移動術。
地面ニ生成スル海域転移門」
「しかも……」
レウさんが顔を青くする。
「上級位用だね。
空間だけじゃなく、海水も同時に通すタイプ」
「……最悪だな」
つまり。
最初から、
聞かれてた。
夜の会話も。
勧誘も。
“壊す側”って言葉も。
_________
「中級位って情報の塊なんだよ」
_________
コンちゃんがそう言っていた。
血筋。
階級。
序列。
遥か昔から生きる種族だからこそ、
それに縋らなきゃ生き残れない。
「……粛清だ」
俺は歯を食いしばった。
「行くぞ。海洋神殿」
神殿周辺は、異様に静かだった。
警備に立つのは、
明らかに下級位の海妖族。
数は多いが、
目は虚ろだ。
「……やるぞ」
レウさんが、静かに魔力を広げる。
精神魔法。
“そこに誰もいない”と
思い込ませる幻。
警備の視線が、
俺たちをすり抜ける。
「……今」
侵入成功。
さらに奥。
地下。
空気が重い。
そこで見たのは――
鎖に繋がれ、
魔力供給装置の前で働かされるコンタミだった。
「……コンちゃん」
顔色は悪く、目の下の隈は出会ったとき以上に濃い。
「……逃げ、て」
かすれた声。
その直後。
「誰だ」
振り返ると、
一人の上級位海妖族。
圧が、違う。
「やっぱり来たか。
裏切り者の協力者」
「……」
俺はヌンチャクを構えた。
「返せよ」
「無理だな」
冷笑。
「裏切り者は資源だ」
「……は?」
「裏切り者には粛清を。……あぁ、安心しろ。此奴は殺さない
死は救済。寿命で死ぬまで永遠に尽くせ」
――あぁ。
これが、救いようのない馬鹿って奴か
「……俺等もそんな生易しくないんですわ」
俺は、一歩踏み出す。
「海妖族から長寿を取ったら何も残らない……だっけ?
それ、自業自得なんじゃない?」
プランB行くぞ。
そう呟いた次の瞬間。
呪い。
突き。
炎。
上級位でも、
一人なら倒せる。
長くはなかった。
倒れた海妖族を一瞥し、
鎖を壊す。
「……コンちゃん!」
「……来ちゃった、か」
弱々しく笑う。
「当たり前だろ
第三勢力はさ、雑だけど仲間は見捨てない主義なんで」
追っ手は早かった。
神殿が、騒がしい。
「現世へ!」
「了解!」
みどりがポータルを展開。
海水が、逆流する。
間一髪。
追撃の魔力が、
俺たちの背後を掠めた。
「っ……!」
落下。
現世の地面に転がり出る。
波の音も、
神殿の圧もない。
聞こえるのは森の木のせせらぎだけだ。
「……助かった」
コンちゃんが、深く息を吐いた。
「……もう、戻れないね」
「戻る気あった?」
「……ないけどね」
少し笑う。
「じゃあ決定だ」
俺は手を差し出す。
「第三勢力へようこそ」
コンちゃんは一瞬迷って――
その手を、握った。
「……よろしく」
こうして。
コンタミは、
“選ばされる側”から
“選ぶ側”になった。
海妖族の監視は、
もう届かない。