テラーノベル
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鏡の中の世界――ミラーワールド。
そこは左右が反転し、生命の存在しない無機質な静寂に支配された空間だ。
城戸真司は、自分の体が銀色の粒子となって窓ガラスを通り抜ける感覚に、激しい吐き気を覚えた。
着地した場所は、先ほどまでいたカフェの「裏側」。看板の文字は逆転し、空はどんよりとした灰色に淀んでいる。
「なんなんだ……ここ。一体、何が起きてるんだよ!」
叫ぶ真司の視線の先で、巨大な蜘蛛の化け物――ディスパイダーが、逃げ惑う一般人を追い詰めていた。現実世界では「神隠し」として処理される光景が、ここでは日常の捕食として成立している。
「おい、城戸! ぼうっとするな!」
鋭い声と共に、黒いコートの男、秋山蓮が割って入った。
彼の腰には既に、銀色のバックル『Vバックル』が装着されている。蓮は手慣れた動作でカードデッキを構えた。
「変身!」
鏡の反射光が蓮の体を包み込む。
次の瞬間、そこには翼の騎士、仮面ライダーナイトが立っていた。
ナイトは迷わずダークバイザーを抜き放ち、蜘蛛の化け物へと斬りかかる。火花が散り、キィィィィという不快な金属音がミラーワールドに響き渡った。
「あいつ……戦ってるのか? あんな化け物と……」
真司の手の中で、龍の紋章が刻まれたデッキが熱を帯びる。
脳裏に、かつて自分が守ろうとした人々の笑顔が、そして失った命の感触が、濁流のように蘇る。
「……そうだ。俺は、あいつらを止めるために。誰も死なせないために……!」
真司は震える手でバックルを腹部に当てた。
鏡の中に映る自分の姿を見据え、魂の底から絞り出すように叫ぶ。
「変身ッ!!」
真紅の光。
龍の咆哮が空間を震わせ、真司の全身を硬質の装甲が覆う。
仮面ライダー龍騎。
数年の時を経て、赤き龍の戦士が再びこの地獄に降り立った。
「はあッ!」
真司は右腕のドラグバイザーにカードを装填する。
『ADVENT』
上空から巨大な紅蓮の龍、ドラグレッダーが舞い降り、炎のブレスで蜘蛛の化け物を焼き払った。
「……ふん、相変わらずおめでたい戦い方だな。城戸」
ナイトが剣を引きながら毒づく。
だが、安堵の時間は一瞬だった。
突如、ミラーワールドの空気が「不快な重圧」に変わる。
ガシャッ、ガシャッ……。
重い足音が、瓦礫の向こうから近づいてくる。
「……イライラするんだよ。この静かすぎる世界はな……」
その声を聞いた瞬間、真司と蓮の背中に冷たい戦慄が走った。
紫の装甲。蛇を模した禍々しいマスク。
首を左右に鳴らしながら現れたのは、かつてライダーバトルを最悪の混沌に陥れた男――仮面ライダー王蛇、浅倉威だった。
「浅倉……! お前、死んだはずじゃ……!」
真司の問いに、浅倉は鉄パイプのようなベノバイザーを肩に担ぎ、歪んだ笑みを浮かべる。
「死んだ? ……さあな。だが、ここは最高だ。また『餌』がたっぷりと用意されている」
浅倉がカードをデッキから引き抜こうとしたその時、遠くのビルの屋上から、冷徹な銃声が響いた。
浅倉の足元で火花が散る。
「……野蛮ですね。少しは法というものを学んだらどうですか?」
グリーンの重装甲を纏ったライダー、仮面ライダーゾルダが、巨大なキャノン砲を構えて立っていた。
かつての北岡秀一ではない。その立ち居振る舞いには、どこか忠誠心と、静かな怒りが混じっている。
「……五郎ちゃん……なのか?」
真司の呟きは、浅倉の狂ったような笑い声にかき消された。
「ハハハハハッ! いいぞ、揃いも揃って……! さあ、祭りを始めようぜ……!」
王蛇がカードを装填する。
『SWORD VENT』
ゾルダが照準を合わせる。
『SHOOT VENT』
城戸真司の、望まない二度目の戦い。
それは、前回よりもさらに出口の見えない、底なしの泥沼へと加速していく。
天空帝王メタナイト先輩
146
赤虎 鉄馬
29
#酒呑童子
𝐆𝐞𝐚𝐭𝐬 IX
130,339
コメント
1件
第2話で一気に世界観が広がって、ちょっと息を飲みました…。ミラーワールドの静寂と、鏡越しに映る現実の歪み方、すごく映像が浮かぶ描写で引き込まれました。特に真司が変身するシーン、「魂の底から絞り出すように」っていう表現が胸に刺さって…。それと、まさか五郎ちゃんがゾルダを継いでる展開、めちゃくちゃ熱いです。浅倉の狂気もゾルダの静かな怒りも、全部が“戦わなきゃ生き残れない”の重みを感じさせてくれて、続きが気になって仕方ないです🥀