テラーノベル
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阿部ちゃんとラウールと、いつも通り勉強したあとで、みんなで昼ごはんを食べる。
涼太は、でかいほっぺたをもきゅもきゅと動かしながら、短く切ってあるうどんを一生懸命噛んでいる。
飲み込んだ後は、ちょっとしか生えてない歯を、にぃーって俺に見せてくる。
「もっと寄越せ」って言う涼太の合図だと俺は思ってる。
だから、もう一回スプーンにうどんを乗せて涼太の口に入れると、またほっぺたが動く。
「うまい?」
「んま!」
「かわいいねぇ…」
「ほんとだねぇ…」
「はい、会計係二人が旅に出ましたー。誰か呼び戻してくんない?もう休憩終わんのよ」
「これ定期やな」
「俺たちに」
「任せとけェッ!!」
「めめと佐久間は大人しくしてていいよー。あとあと阿部ちゃんが怒り散らかしてめんどくさいから」
「「なんでぇ!」」
「今ここに照がいたらスムーズに行くのに。もー。今日に限ってあいつ現場の日かよー」
みんなが俺たちのことを見て、変なことを言ってるのはいつも通りだから無視しておいた。
うどんを食べ終わった涼太に、両手で掴める取っ手がついたコップを渡した。
哺乳瓶とはまた違う、細い棒みたいなのがついた所を吸うと飲み物が出てくるコップ。
涼太はもうほとんどミルクを飲まなくなって、俺たちとおんなじ、康二が細かく切ったご飯を食べるようになった。
それに、最近はずっとこのコップを使って、麦茶を飲むようにもなった。
そんなに喉乾いてんのか?ってくらい、ずっと口から棒を離さないで一生懸命に飲む。
たまに、ぷぴゅーって鼻から出た息の音が聞こえてくる。
あっという間に全部の麦茶を飲んだ涼太は、空っぽのコップを俺に返してくる。
受け取って、机の上にコップを置きながら考える。
こいつは、俺の言葉がわかってるのかな?
少し前から、涼太はよく喋るようになった。
でも、意味のない音を出してるだけなのか、俺が言ったことをちゃんとわかってて喋ってるのか、俺にはよくわからなかった。
ご飯を食べる時に座る椅子から涼太を下ろして、俺と向かい合わせにして座らせると、涼太が「たぁ!」と言った。
やっぱり涼太が言うことに特に意味はないのかな、と思っていたら、涼太はもう一回喋り出した。
「ちょ、た!」
「んぁ?なに?」
「ぅた!」
「うた?歌のこと?」
涼太が何を言いたいのかわからなくて、首を傾けてたら、涼太が俺を指差して、にぱっと笑って、また喋った。
「ちょた!」
「ちょた?」
「ちょ、ぅたぁ!」
「俺の名前呼んでるの?」
「ちょぅた!」
涼太はずっと、俺を指差して俺の名前を言ってたみたい。
初めて名前を呼ばれたから俺は嬉しくなって、涼太をぎゅって抱っこした。
涼太が名前呼んでくれたよ、って教えてあげようと思ってみんなの方を見たら、みんなは手で顔を隠しながら天井を見てた。
「…なにしてんの?」
「ぁぐ…尊い…ッ」
「あかん…目からなんか出そうや……」
「二人とも可愛すぎて僕爆発しちゃいそう…」
「ばぶい…ばぶすぎる…萌え…」
「組長に報告しないとですね…」
「どうしよう…お母さんこんなに心ときめいたの初めて…もう仕事してる場合じゃねぇよ…」
「ふっかさんがそれ言うてしもうたら、もう今日は誰も動かんくなるて…」
「もういいよ…明日やろうよ…」
「「「賛成」」」
みんなで天井を見ながら、なんか話してるから、何かついてるのかな?って思って、俺も上を向いてみたけど、茶色い木の模様しかなかった。
「ぁぁ”…首疲れた」って言いながら、ふっかが一番最初に俺と涼太がいる方まで顔の場所を元に戻した。その後にみんなも俺たちの方を見る。
全員に見られてて、変な感じがする。ちょっと怖い。こっち見んな。
みんながちょっとずつこっちに近付いてくる。
え、なに?
「「「坊」」」
「「「俺たちの名前も呼んでー!!!」」」
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「おうおう、元気だこと。俺が良いって言ったくせにだけど、こりゃ今日は仕事になんないね」
「ラウールだよ、ラウール!」
「ぅりゅ」
「きゃは!かわいいー!」
「めめですよー、坊っ、めめって呼んでください!」
「めんめ!」
「マジかよ、超可愛い…子供欲しい…阿部ちゃん、俺たちのk」
「ここでそれ以上言ったら一ヶ月間の接近禁止令出すから」
「ごめんなさい。嫌です。それだけはやめてください。」
「坊!康二やで!こ、う、じ!」
「うじゅ?」
「発音難しいよなぁ…っ!!ぐすっ…」
「坊。阿部です。亮平です。お好きなように呼んでください」
「ぁぶ!」
「いつも通りにも聞こえるけど可愛いからもうなんでもいい!!天使すぎる…」
「坊!佐久間さんだぞ!さくま!」
「ちゃ、ぅま!」
「さくま!」
「ま!」
「すげぇ縮むじゃん!ぅははははッ!!」
「ふっかさんも呼んでもらいや」
「俺はいいよ」
「そうだよー!ふっかさんも呼んでもらいなよ!超癒されるよ?」
「坊、こいつ辰哉くんです。たつやだよ〜」
「おい佐久間?」
「たぁちゅ?」
「一生守ります…ッ」
「完璧な2コマオチ、さすがふっかさんっす」
みんなは涼太に名前を教えて、涼太が喋るたびに喜んだり、泣いたり、ずっと騒いでた。
みんなの言ってることを、涼太はもう分かってるのかもしれない。
俺はいいことを思いついた。
みんなに囲まれて、キョロキョロしながら笑っている涼太の後ろに座って、俺は涼太にも見えるように、昨日読んでた絵本を広げた。
「涼太、本読んでやる。俺、字読めるようになったんだぞ」
「ぁぃ!」
言葉がわかるなら、今日からは涼太と一緒に本を読もうと思った。
本はいろんな話が書いてあって面白いから、涼太にも楽しいんだぞって教えてあげるんだ。
「むかしむかし、おじいさんとおばあさんがいました」
「ちた」
「おばあさんは川にせんたくに、おじいさんは山へ……ラウール、これなんて読むんだっけ」
「芝刈り、だね」
「あ、そうだった。おじいさんは山へしかばりに出かけました」
「ちた!」
「芝刈りって言えてないの可愛いかよ…それから、翔太のあとに相槌打つ坊が愛おしすぎて禿げそう…むり…こんな世界一しんどい読み聞かせの光景あるなら、誰か事前に教えといてよ…いきなり致死量の養分享受されたらおかしくなるって…二人が尊すぎて勝手に目から水出てくる…」
「怖…。阿部ちゃんぶっ壊したの誰?こんなに自分の気持ち、よく喋る子だったっけ?」
「わかんない。ある日突然、阿部ちゃん自分の思ってることとか考えてること、全部言うようになったんだよね。最近は、仕事中レシート見ながらずっとなんか喋ってるよ」
「めめとさっくんが、なんかしたんちゃう?」
「え、俺たち何にもしてないよー?」
「うん、いつも通りちょっかい掛けまくってたら、なんでか急に「大好き♡」ってOKの返事くれたから、俺たちも驚いてんすよ」
「うん、まず、ちょっかいを掛けまくるな?まぁ、阿部ちゃんが楽しそうならいっか」
「みんな幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし…ふぁぁ…」
「…すぴゅー…」
最後のページまで読み終わったあと、あくびが出た。
腹一杯だったし、いつの間にか俺に寄りかかって寝てた涼太の体が暖かかったから、俺も眠くなった。
昼寝したい気分だったけど、今日も特訓するって言ってたから、佐久間と目黒の方を見たけど、二人とも薄い板をじっと見てた。忙しいのかな?もう少し経ったらやるのかな?って思ったから、俺も寝ることにした。
涼太を座布団の上に寝かせて、俺も隣に寝転がる。
寝る前に、涼太の手をちょんって突っつく。
そうすると、涼太は少しだけ手を開いて、俺の指を握る。
寝る時は、涼太が指を握っててくれると安心するって思うようになった。
こいつの手はあったかいから。
半分しか開かない目を全部つぶって、俺もそのまま涼太とおんなじ世界に行った。
「寝ちゃった。ねぇ、康二くん、二人とも超可愛いんだけど」
「せやな」
「これってもう、坊は言葉がわかってるのかな?」
「いや、多分まだ真似っこしとるだけと違うか?絵本も理解はしとらんと、しょっぴーが喋った音を聞いて真似して言っとんのやと思うで。ただ、しょっぴーのことはちゃんと分かってたから、指差して名前も呼べたんやろな」
「えぇぇ、ほんとに可愛い…。僕たちもいつか結婚して、自分たちの子と一緒に暮らしたいね」
「ちょ、らう!!」
「………あ。」
「「「…………え?」」」
「お二人さん、ゆっくり話聞かせてもらおうか?」
「康二くん…マジごめん。」
「ふっかさん…堪忍やって……」
「別に怒ってないよ?内緒にされててお母さん寂しかったなぁ〜!ってそんだけだから」
「めちゃめちゃ棘刺さってくんねんけど…」
「白状するしかなさそうだね…」
「おん……。」
「ラウと康二のことはふっかに任せとこ。それより……っはぁん…お昼寝してるのも可愛い…。佐久間、めめ、動画撮れた?」
「うん、ちゃんと全部撮ったよ。阿部ちゃんに送るね」
「ありがとう!一日一回は絶対見る」
「阿部ちゃんほんと素直になったねん。俺たちにもたまにはデレてよー」
「それとこれとは話が違う」
「えー!そんなぁ!佐久間さん寂しくて泣いちゃうぞ」
「お前が泣いてるとこ見たことないぞ」
「佐久間くん、直接頼むんじゃなくて、不意打ちしたらいいじゃないっすか。こうやって…ん、ちゅ…」
「!?っ何すんの!!!」
「顔真っ赤!かわいい!俺も俺も!ちゅー…」
「寄るな。今この子たち見てて忙しいの」
「ひでぇ!」
「ただいまー……って、何この状況」
「あ、照おかえりー」
「ふっか、ただいま。みんなで何してるの?」
「今日、坊が初めて翔太の名前呼んでさ、俺たちも呼んで欲しくて、もう仕事どころじゃなかったんだよねぇ」
「え、いいな。俺も呼んでほしい。」
「だろぉ?」
「でも、やっぱり最初は翔太だったね」
「あんだけ毎日、坊と一緒にいてくれてるからねー」
「子供の成長ってあっという間だね」
涼太の声が遠くの方から聞こえてくる気がして、目が覚めた。
まだぼやっとしか見えない目で涼太を探すと、いつの間にか帰ってきてた照と遊んでた。
「ひかる、ひーかーる」
「ぁりゅ?」
「ひかる」
「ぁぢゅー!」
「ひー」
「ぃぃ」
「かー」
「きゃぁー」
「るー」
「ぶー」
「……っかわいい…」
照も名前を呼んで欲しかったみたいで、涼太にずっと自分の名前を伝えてた。
俺も起き上がって、涼太と照のところに行った。
もうすぐ夜ご飯の時間。
康二が作るカレーの匂いがした。
続
コメント
12件
初コメ失礼します! らうーるが自分で言っちゃった可愛すぎる😍 続きが気になります🤩
最高すぎる…(T^T) ラウ自分で言っちゃうの可愛すぎるでしょ♡ ふっかのお母さんキャラ好き!💜 阿部ちゃんが素直になってよかったねぇ…しょっぴーのお陰なんだよ、みんな…