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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「今日、楽しかった?」

イルミネーションが点灯する数分前にここに来た僕たち。

「うん!!」

「イルカショーで、濡れちゃったけど楽しかった!!」

「クラゲも可愛かったし!クリオネは怖いけど…」

「あ!もちろん海琴ちゃんが予約してくれた旅館も良かったよ?!」

「分かってるよ」

必死に喋ってる姿が面白くて笑いを含めた声を返してしまう。

「…ね、古佐くん、私ね────」

そう畑葉さんが何かを喋ろうとした瞬間、辺りに明るさが伴われた。

「わぁ!!綺麗…!!」

そう畑葉さんが声を上げるのも間違ってない。

こんなに綺麗なイルミネーションは見たこと無い。

「そういえば畑葉さん、今何か言おうとしてなかった?」

イルミネーションによって聞けなかった言葉。

なんだったのだろうか。

「…やっぱいいかな!」

そう答えて畑葉さんはイルミネーションのアーチをくぐったりして楽しそうにして行ってしまった。

『やっぱり』…?

気になる……



「お出かけ楽しかったね〜…」

見慣れた道を歩いて家に帰る僕と畑葉さん。

「あ!!古佐くん!」

急に僕の前を歩いていた畑葉さんが声を上げ、振り返る。

何かと思えば

「これ!クリスマスプレゼント!!」

そう言って紺色のマフラーを渡された。

「あと一個お願いがあるんだけど…」

「なに?」

「お正月と大晦日って古佐くん家で過ごしてもいいかな?」

おずおずとそんなことを聞いてくる。

前までの僕なら断っていただろう。

だが、今は畑葉さんと過ごせる時間を欲している自分が居た。

「全然構わないよ」

そう僕が言うと『やったー!!』と喜ぶ。

本当分かりやすい。

「あ、僕もこれ」

「プレゼント」

そう言ってお店でラッピングしてもらったプレゼントを渡す。

「開けてもいい?」

「いいよ」

そう僕が言い終わるよりも先に畑葉さんは中身を開けていた。

「何これ!!すごい!綺麗!!」

そう言いながらはしゃぐ。

「砂時計と水時計のセットだよ」

「ピンクだし桜貝とかもあったから好きそうだなぁって思って…」

畑葉さんと目を合わせれず、

少し下向きにそう言う。

が、畑葉さんは何も言わずただそれを見つめているのみだった。

『気に入らなかったのかな…』そう少し不安になったが、畑葉さんの顔を見た瞬間それは間違っていると察する。

なぜなら畑葉さんの顔はお出かけ中に見たどの畑葉さんの顔よりもキラキラと輝いていたから。

それに見とれていると冷たい風が僕と畑葉さんの間を通り過ぎた。

僕は先ほど畑葉さんから貰ったマフラーを畑葉さんの首に巻き付かせる。

多分、無意識だった。

「私だけじゃなくて、古佐くんも!」

そう言いながら畑葉さんはマフラーを僕の首にも巻き付けてくる。

2人で1つのマフラー。

「あったかいね!」

そうにこりと微笑む畑葉さんを見て

「…そうだね」

とマフラーで少し顔を隠しながら返す。






気づくともうクリスマスは過ぎていて。

大晦日までも過ぎていた。

きっと畑葉さんと居る時間が楽しすぎて、

あっという間で。

今はもう正月。

年は明けていたのだった。

「ね!!古佐くん!!みかんの早食い競走しよう!!」

母さんの実家はみかん農家で毎年、

みかんが送られてくる。

しかも今日は母さんの実家のみかんが届いたのにも関わらず、父さんが畑葉さんのためにってみかんを2箱買ってきた。

「また早食い?」

早食いは夏のかき氷以来。

「今度こそは負けないんだから!!」

そう言っているところ悪いが、僕はあくまでゆっくり、美味しく頂きたい。

早食いなんてほぼ味を感じれないと思うし。

「まぁ…いいけど」

気づいたらなぜか僕はそう言っていた。

心では嫌と思っているのに…

いや、もしかして思ってない?



「いぇーい!!私の勝ち!!」

分かっていたが、勝利は畑葉さんの手の内に。

「古佐くん食べるの遅いよ!!」

「まだ3個目食べてるし!!」

「私なんて古佐くんの10倍は食べてるんだよ?!」

いや、どこで怒ってるんだよ…

心の中でそうツッコむ。

「だって美味しかったから」

そう言い訳にならない言い訳を零す。

と、

「確かに…」

と、何故か納得する畑葉さん。

「しかもちょくちょく酸っぱいのとかさ、小さい赤ちゃんみたいなやつも居たから」

「楽しみながら食べてたんだよ」

「赤ちゃん…」

『赤ちゃんのように小さいみかんの房』そう言うとなぜかオウム返しのように、ただひたすら『赤ちゃん…』と呟き繰り返す畑葉さん。

「私、赤ちゃんまで食べちゃったってこと…?」

「可哀想…」

なぜか不安そうに。

しかも悲しげにそう呟く。

それを見て吹き出しそうになる、場違い感半端ない僕。

こんなに笑いをこらえたのは久しぶりだ。

畑葉さんと出会ったばかりくらいの時は笑いを堪えても堪えきれない時だってあった。

その度に怒られてたんだっけ?

なのに今は耐えられている。

慣れたのだろうか…

「でも美味しかったんでしょ?」

「正直」

そう短く答えたからてっきり『正直美味しかった』というつもりで言っているのだと思った。

が、

「…早食いすぎて味感じなかった……」

と後に返された。

でしょうね。

案の定、早食いでは味は感じれないようだ。

「お餅とみかんって合うのかなぁ…」

急に話が逸れて、そんなことを呟き出す畑葉さん。

お餅とみかん?

合わなくもなさそうだけど…

でもなんで今?

きっと今の僕は心の中にあった全ての疑問が溢れている。

僕が狐になった日は、君の命日だった。

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コメント

1

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やっぱり見てて楽しいなー🎶(*˘︶˘*)

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