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王都の廃墟に、深紅と漆黒の光が交錯する。 夜空を裂くような衝撃波が、瓦礫を吹き飛ばし、建物の残骸を粉々に砕いた。
黒薔薇の力を纏ったセレナと、ルシアン、イザベルの三人。
一方、前方には全身を闇で包んだ影帝が立ちはだかる。
「ここまで来たか……黒薔薇の王女よ」
影帝の声は冷たく、全身から黒い霧が絶え間なく立ち上る。
「あなたはもう、この国を支配できない!」
セレナの声が震えることはなかった。
胸の黒薔薇の心臓が、光を増して鼓動する。
セレナが一歩前に出ると、黒薔薇の蔓が影帝の周囲を包み込む。
しかし、影帝は容易くその蔓を斬り裂いた。
「お前の力は……甘い」
影帝の手が振り下ろされ、黒い衝撃波が三人を吹き飛ばす。
ルシアンが間一髪でセレナを抱え込み、体勢を立て直す。
「大丈夫か、セレナ!」
「ええ、行くわ!」
セレナは立ち上がり、黒薔薇の魔力を全開にする。
蔓が光を帯び、空間を切り裂き、影帝の足元を拘束する。
影帝は黒い霧を刃のように変化させ、蔓に攻撃を仕掛ける。
一瞬で蔓が切れ、衝撃波が王都の瓦礫を巻き上げる。
イザベルが力を解放し、黒い影の鎖で衝撃波を受け止める。
「セレナ、ルシアン! 一緒に攻撃を集中して!」
三人の力が一点に集まる。
黒薔薇と喰魔の力が融合し、巨大な光の渦を形成する。
セレナが黒薔薇の心臓を胸に押し付けるように握り、力の全てを影帝に注ぐ。
「これで終わらせる!」
光の渦が爆発し、影帝を包み込む。
黒い霧が暴れ、空間が歪むが、三人の意思は揺らがない。
影帝の声が最後に響く。
「……人の意思……恐ろしい……
だが……まだ……終わらぬ……」
光が闇を貫き、影帝は消滅する。
瓦礫と黒霧が巻き上がり、やがて静寂が王都を包んだ。
空に夜明けの光が差し込み、瓦礫の間から金色の光が零れる。
セレナは膝をつき、深く息を吐いた。
「……終わったのね……」
ルシアンが手を差し伸べる。
「そうだ……でも、君は一人じゃなかった。俺もイザベルも一緒だった」
イザベルも微笑む。
「影帝を倒しただけじゃない。
私たちは、この国の未来を守った」
黒薔薇の花弁が瓦礫の上に舞い落ち、
廃墟の王都に新たな光と希望をもたらした。
セレナは黒薔薇の心臓を抱き、静かに誓った。
「……この力は、守るために使う。
二度と、恐怖に屈することはない」
ルシアンも彼女の肩に手を置く。
「これからも共に歩む。どんな未来でも」
三人は互いに手を取り合い、
影帝の深淵から国を救った英雄として、静かに立ち上がった。
──こうして、黒薔薇の王女とその仲間たちによる、影帝との戦いは幕を閉じた。
王国は再生への一歩を踏み出し、黒薔薇の花は再び平和を象徴するものとなった。