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#怪異
阿炎快空
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#ダークファンタジー
阿炎快空
82
阿炎快空
111
僕は銃を持った右手に対し、左手を受け皿のようにして、下から支えるように握った。 それから肘を曲げ、銃口を上へと向ける。
よく刑事ドラマなどで見る、移動の際の構え方だ。
考えるより先に、自然と体が動いていた。
「おー、なかなか様になってますねえ」
肩からひょいっと飛び降りたオーマが、僕を見上げて感心したように言った。
「どうも」
苦笑まじりにお礼を言いつつ、僕は考えた。
きっとこれも、銃にかけられた魔法によるサポートだろう。
やはり素人の僕があれこれ考えるよりも、直感に身を任せた方が良さそうだ。
「しかし姿が見えないとなると、うっかりお前をぶっ飛ばしちまうかもしれないぞ」
蒼梧が金棒を肩に担ぎながら、姿の見えないナギに話しかける。
それに対し、返ってきたのは何とも頼もしい言葉だった。
「私のことは気にするな。いざとなったら即興で合わせるから、好きに動いてくれて構わない。——さあ、行こう」
廃ビルと同じく、立方体の内部は広大な迷路となっているようだった。
廊下は不自然に折れ曲がったり、時には別の廊下と交差したりすることもあった。
「どっちだ、モリヤオサム?」
「んー……こっち」
十字路やT字路、Y字路などに差し掛かるたび、僕は決断を迫られた。
精神を集中し、比較的安全そうな道を選び続ける。
何とか正解を選び続けることができているらしく、僕らは見張りと遭遇することもなく歩き続けた。
甲冑や彫像が動き出すこともなければ、絵画に描かれた怪物が飛び出してくることもない。
正直に言えば、少々肩透かしだったくらいだ。
どれほど歩いただろう。
やがて——僕らは、とある扉の前へと辿り着いた。
その扉は、長い廊下の途中に位置する壁面に存在した。
通り過ぎようとした僕を、ナギの声が呼び止めた。
「待て——ここだ」
「え?」
驚き、振り返る僕に、ナギが言う。
「ここだ。私達が進むのは、この扉の向こうだ」
「まさか」
思わずそう口走りながら、僕は扉をまじまじと眺めた。
木製で、ライオン型のドアノッカーが備え付けられたものだ。
一見すると、何の変哲もない扉だろう。
しかし、あり得ない。
ここだけは、絶対に絶対にあり得ない。
そう断言できるほどに——扉の奥からは、邪悪な気配が染み出していた。
「な、何かの間違いじゃない?だって、ここは——」
「嫌な予感がするんだろう?わかっている」
ナギは、聞き分けの無い子供を諭すような口調で続けた。
「ラジオは言った。お前は必ず反対するだろうとな。確かに、不安だろうとは思う。しかし、敢えてこの先に進むことこそが、結果的には正解なんだ」
「……いや、でも」
「頼む、モリヤオサム」
なおも食い下がろうとした僕の言葉を、ナギが遮る。
その口調は、必死の懇願へと変わっていた。
「今は説明することができない。だが、最後にはきっと上手くいく。お願いだから——私を信じてくれ」
蒼梧が「どうする?」と言いたげな表情で僕の顔を見た。
オーマも、不安そうに僕を見上げている。
「……ナギ……最後に、もう一度だけ確認するよ?」
僕は、きっとそこに居るのであろう方向に視線を定め、ナギに問いかけた。
「ラジオが、本当にそう言ったんだね?」
ナギは、己の拳をぎゅっと強く握りしめた。
修に姿が見えなくて、本当に良かった——あらためてそう思った。
ラジオの言葉なら、ナギは一言一句、正確に思い出すことができる。
あの軽薄なパーソナリティーは、彼女に対してこう告げたのだ。
——いいかい、ちゃんナギ。
君が魔女を殺すには、仲間の協力が不可欠だ。
それと同時に、仲間を裏切り、見捨てる覚悟もね。
君の選択の結果——異界からやってきた二人組の内、片方は命を落とすことになる。
はいはーい、騒がない、騒がない。
てかさあ、今更何を怯んでるんだい、っつう話よマジで。
そんな簡単に揺らいじゃって——君の家族に対する想いはその程度なわけ?
ガッカリだわー。
もうこの際だから、ぶっちゃけちゃうけどさあ。
オジサン、結構性格悪いんだよねえ。
君にこうして懇切丁寧にアドバイスしてあげてるのも、久々に面白そうなものが見れそうだからに他ならない。
今ねえ、運命の道は、綺麗に真っ二つに分かれてるんだ。
君が仲間を見捨てることさえできれば、魔女を殺して家族の仇を討つことができる。
しかし、土壇場で情を捨てきれなければ——わかるよね?
フフフ、ちょおっといじめ過ぎちゃったかな。
ごめん、ごめん。
でもまあ、そんなに悩まなくってもいいんじゃない?
だって彼らは、友達の女の子を助けるために、わざわざ異界までやって来てるわけじゃん?
だったら、その為に死ぬのは本望っしょ?
と・に・か・く。
君が魔女を殺せさえすれば、その囚われのお姫様——シイナユウの命は助かる。
その点に関しては保証してあげるよ。
どう、ちょっとは気が軽くなったんじゃない?
ま——とは言え、決めるのは君だ。
果たしてちゃんナギが復讐を完遂できるのか。
オジサンはポップコーンでも食べながら、高見の見物をさせてもらうよ——
「ああ——勿論だ」
ナギは、目の前の修から視線を逸らして答えた。
「全てはお告げの通りだ。何も問題はない」
少しの沈黙。
そして。
「……わかった」
諦めたように大きく息をついて、修は言った。
「信じるよ、ナギ」
コメント
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第59話読み終えた! ラジオの予言の全容が明らかになって、マジで重い…「仲間の片方は死ぬ」「裏切る覚悟が必要」って、ナギの立場辛すぎるわ。それでも「信じるよ」って言った修の判断が、この先どう転ぶのか気になって仕方ない。シイナユウの命がかかってるのも熱い🔥