テラーノベル
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仁人と付き合って、ちょうど1年になる日だった。
俺はその日、デートのために早くから支度をしていた。仁人が選んでくれた服を着て、待ち合わせの駅に向かっていたとき、スマホに通知が来た。
「…え?」
それは、仁人が事故に遭ったという知らせだった。
すぐさま病院に駆けつけた俺を待っていたのは、メンバーたちの沈痛な表情と、救急処置室に運ばれる仁人の姿。
「じんちゃん…!」
走り寄る俺の声に、彼は応えなかった。
意識が戻ったのは、数時間後だった。
メンバーで最初に病室に入ったのははやちゃん。医師の説明によると命に別状はなく、脳にも損傷は見られない。しかし、数ヶ月から1年程度の記憶が曖昧になっている可能性がある、とのことだった。
俺は震える手で、そっと扉を開けた。
「…太智?」
ベッドの上で穏やかに笑う仁人が、俺の名前を呼んだ。でも、その声には“恋人”に向けるあの優しさがなかった。
「俺のこと、覚えてる?」
「覚えてるよ。もちろん。M!LKの塩﨑太智でしょ?」
「……うん」
でも、彼の記憶はそこまでだった。
付き合ってからの思い出。初めて手を繋いだ日、ライブ後に二人で泣いた夜、俺が「好きや」と言った時の仁人の照れた顔。
全部、彼の中から消えていた。
数日後、仁人が退院して、活動に少しずつ戻り始めた頃。
俺はなんとかいつも通りに接していた。でも、仁人は俺に気を遣っているのが明らかだった。
「太智、最近ずっと優しいよね。…ごめん、俺、何か変なことしてた?」
「……ううん。全然。そんなんやない」
「でも、他のメンバーよりずっと気にかけてくれてる感じがする。…俺たち、何かあった?」
心臓が潰れそうだった。言えない。言ったら…また彼に負担をかけてしまう。
「ほんま、なんもない。ただ、じんちゃんのこと大事やから」
そう言って笑うのが精一杯だった。
その日の夜、じゅうちゃんと舜太がそっと話しかけてきた。
「だいちゃん…無理してない?」
「じんちゃん、やっぱ記憶戻らへんのかなぁ…」
「うん。けど、ええんよ。今のじんちゃんも、俺は好きやから」
それは、嘘じゃなかった。でも、本音は——
「俺のこと、また好きになってくれるかな」
このお話、続きとかも考えてるんですけど長くなりそうだから完結でもいいかなって思ってるんです🥸
もし良かったらコメントで教えてください🙇♀️
⬆️人任せですみません💦
コメント
1件
ええええ?!?よすぎます!😭