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第1話「閉ざされた朝」
日本は、今日も真っ白な部屋で目を覚ました。
窓はなく、扉もない。壁だけが彼を囲んでいる。
「おはようございます。」
小さな声で、いつもの挨拶を口にした。部屋の中には返事はない。だけど彼は知っていた。必ず、兄たちがやってくることを。
ドアのない部屋の前に、足音が響き始めた。
「おはよう、日本。」
そう言って現れたのは、兄の陸だった。少し大きめの身体と、優しい眼差し。次に、空が現れる。いつも冷静で、弟のことを気にかける兄。最後に海がやってきた。無口だけれど、家族を想う気持ちは誰よりも強い。
「朝ごはんができてる。食べに行こう。」
日本はその声に従い、三人と一緒に白い廊下を歩いた。
歩く先にあるのは、どこまでも白い食卓と椅子。そこに並べられたご飯は、いつもと同じ味噌汁と白いご飯、少しの漬物だった。
食事が終わると、兄たちはそれぞれの部屋に戻っていった。日本はひとり、白い部屋に戻った。
その時、スマホが光った。画面には通知が表示されていた。
【国連より】
本日14時より、代表者会議を開催。参加者は指定の場所へ集合せよ。
兄たちはそれぞれこの会議に呼ばれていた。日本には伝えられない用事だ。
「……お兄さまたち、今日は出かけるんだ。」
日本は窓もない部屋の天井を見上げながら、ぽつりとつぶやいた。
外の世界を知らず、兄たちの監視の中で過ごす日本。
彼の知らない“現実”は、少しずつ歪んで迫っていた。