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春の欠片が雪に降る

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春の欠片が雪に降る

1 - 第1話*アルコールよりも酔わされて*1

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2025年05月30日

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吉川ほのりは、見知らぬ大阪の街をひとり歩いていた。

転勤を控え、新しく所属する関西支店への挨拶と引越し先を探す為大阪を訪れていたからだ。


そのまますぐに新幹線に乗っていれば、今頃きっと自宅マンションについていたのだろうけれど。


上司であり、課長の岩本から、


『せっかくの週末なんだから大阪でゆっくりしてきたらどうだ』


なんて提案されたこともあり、見知らぬ土地をキョロキョロと見渡しながら軽く飲める店を探しているところだ。

東京でもよく見かけるチェーン店の居酒屋なんかはさすが金曜日の夜。

混み合っていたし、何よりほのりのように”おひとりさま”が見当たらなかった。

そんなこんなで、賑わう繁華街を少し逸れて歩いていると小道に面して営業する小さなダイニングバーを発見。


(お、なんかちょっとオシャレかも)


暖色系でライトアップされたタイル張りの外壁。

外から窓越しにそっと覗き込むと幸い混んでいる様子もない。

ひとりのほのりにも優しい環境に思えた。


(うんうん、ちょっと飲むにはいい感じなんじゃない??)


少し緊張をしながら店のドアをゆっくりと押した。控えめなベルの音が鳴り響くと、カウンターから店員の男性が静かな声で「いらっしゃいませ」と微笑む。

店内はそれほど広くなくカウンター席が六席、テーブルが三つ程。


ほのりは誰もいなかったカウンター席を選んで、入り口寄りの端に店の雰囲気に飲まれながら静かに座った。


店員である白髪混じり、初老の男性は背筋をピンと伸ばし佇まいはまるで執事のよう。

必要最低限のやり取りしかせず無口であったが穏やかな空気を醸し出していた。

品があるとはまさにこんな人なのだろう。


「赤ワイン、グラスでお願いします」


座っているだけとはいかないので、とりあえず注文を済ませる。


食事は不動産屋から出た後に軽く済ませた為、豊富なフードメニューの中から敢えて注文したおつまみの生ハムやチーズは盛り付けから味まで最高で。

カウンター越しに、世間話をしつつ、


“ちょっとだけ”のつもりが、思いのほかお酒が進んでしまっている自分がいた。


結局はボトルを頼んだ方がスマートだったかもしれない。そんなことを考えながらスマホに触れて時間を確認してみると。

入店時、おそらく二十時過ぎだったろうに現在の時刻は二十二時をとっくに過ぎてしまっているではないか。

この辺りの交通事情はよくわからない。

予約しているホテルは新大阪にあったはずだ。移動時間も考えてそろそろ動かなくては……と考えた時だった。


「ひとりですか?」


突然声をかけられ、そろりと上を向く。

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