西川side
チュンチュン・・・ 『ん”ん〜』
雀のさえずりが響く3日目の静かな朝5時半、私は目を覚ました。
(結構早く起きちゃった・・・)
(ま!目覚めもいいし自主練しよー!)
布団から起き上がり支度を終わらせる。
(体育館体育館っと・・・ってあ!)
ノリノリで体育館に向かっていると、途中の水場で誰かが歯を磨いていた。
私はその人に駆け寄り話しかける。
『京治さん!おはようございます!』
赤葦「ゆりさん。おはよう。」
『早いですね!自主練とかですか??』
赤葦「まあそんなとこかな。ゆりさんは?」
『私も自主練です!』
『京治さん寝癖とかないんですね!』
赤葦「短いからね。ゆりさんは・・・あ。」
赤葦さんは歯磨きを終わらせこちらを見たかと思えばなにかに気づく。
赤葦「ふふ、ゆりさん、ここはねてる。笑」
『え?!どどどこですか?!』
私の頭を指さす赤葦さん。
赤葦「あ、ちょっと動かないでね。」
(ちょっ、え、えぇ?!)
赤葦さんは私に近寄り頭を触り始めた。
なんかもう近いしいい匂いするし優しいし、イケメンとはこういう人だろう。
『ふぎゅぅ・・・・・・』
赤葦「・・・よし、これでいいかな。」
『あっ、ありがとうございます、!』
赤葦「ふふ、かわいい。」
『か、かわ?!そ、それでは失礼します!!』
赤葦「あ、ちょ待・・・」
私は恥ずかしくなり走ってその場を後にし、体育館へ向かった。
(な、なに可愛いって・・・!)
赤葦「・・・・・・はは、昨日はあんなに自分から言ってたのに・・・かわい過ぎる・・・」
あの後体育館で先に居た影山日向ペアと自主練し、今は朝9時頃、休憩中だ。
(・・・よし!これでしばらくの間暇だなー・・・)
??「おーい!」
(・・・ん?誰か呼んでる?)
仕事が一段落すると、体育館の外からだれかの声が聞こえる。私は疑問に思い外に出ると少し遠くの木陰に人がたっていた。
(あのユニフォーム・・・音駒の人か!)
(ひゃ〜!背高!!)
何となく困っている顔をしていたので近くによって話しかける。
『私烏野のマネージャー、西川です!』
『どうかしましたか?』
灰羽「ん、俺音駒の灰羽リエーフ!同じ1年だからタメでいいよ!」
こちらを向いたその人は、緑の目をして真っ白の髪。きっとハーフかなんかだろう。
(わ、この人もイケメンってやつだ・・・!)
『りょうかい!灰羽くんでいい?』
灰羽「んー・・・いや、リエーフって呼んで!」
『お、おけ!で、どうかした?』
灰羽「実はさー・・・あれ!」
リエーフが指を指したその先には、高い位置にある木の枝に乗っておびえている猫。
(あら、降りれなくなっちゃったのかな)
(でもリエーフなら普通に取れるんじゃ?)
『なるほどー・・・』
『でもリエーフは届くんじゃないの?』
灰羽「俺が触ろうとすると引っ掻いてくる!」
灰羽「ほら!」 『わ、わお・・・』
リエーフの手は結構傷だらけ。
『後で治療するね!』 「え!さんきゅ!」
『・・・で、あの子下ろせばいいんだよね?』
灰羽「まあそうなんだけど・・・おれはさわれないし、西川が届くわけないだろー?」
『し、失礼な!届くわ!』
灰羽「だってこーんなちっちゃいじゃん!」
私の頭に手を置きほんとうに疑問に思っている顔のリエーフ。悪意は無い。
『まーまー、見てなさいよ!』
これでも元バレー部エース。ジャンプ力には多少自信がある。
私は思いっきり足に力を溜め飛び上がる。
パシッ 二”ャャァァ!
灰羽「え・・・ええ?!まじでー?!」
『わ、怖がらないでー!💦』
『よいしょっと・・・』
見事枝に掴むことに成功した私は、そのまま枝に乗り猫を抱いて降りた。
『ふー・・・!どーよ、リエーフ!』
灰羽「す、すげぇ!めっちゃ飛んだ!!」
『またねー猫ちゃん!』 ニャ
猫を下ろして立ち上がる。
『だてにマネージャーしてないもんね!』
灰羽「ねね!これタッチできる?!」
リエーフはただでさえ身長がすごく大きいのに、長い手足をめいっぱいにのばし片手にタッチしろと言ってきた。
(え・・・いけるかな、?!)
私はさっきより力いっぱい飛ぶ。
パンッ 『よしっ・・・!』
灰羽「っていったぁーー!😭」
『え?・・・あ、ああ!ごめんリエーフ!!』
タッチできたのはいいが、そういえばリエーフは手を負傷中。両方バカ。
『ち、治療するよ!』
私はリエーフの腕を掴み体育館に入る。
救急箱から道具を取りだし、そそくさと治療を終わらせた。
灰羽「え、早!ありがと!」
『んーん、ごめんね叩いちゃって!』
灰羽「今回は特別に許す!」
(あ、え、謎に上から目線だ・・・)
呆れていると、リエーフが私をじっと見ていることに気づく。
灰羽「・・・それしてもさ!」 『んー?』
灰羽「西川ってかわいいよな!」
『・・・・・・え?え、あ、ありがとう・・・』
(ちょ、何この人!!!)
灰羽「あ!今絶対照れてる!こっち見て!」
『や、やだ・・・!じゃあこれで失礼!』
灰羽「逃げるなー!!」
耳が熱くなるのを感じた私は、すぐさま立ち上がって走り出す。
灰羽「・・・ねー!西川!」 『ん、?』
私の声を呼ぶリエーフに振り向くと、そこには逆光に照らされてまぶしい笑顔をしているリエーフがいた。
灰羽「またあとで!ね!」
『ん! うん!またあとで!』
(ふふ、なんだか夜久さんに似てる・・・)
(すっごい眩しい笑顔とか!)
私はリエーフと約束をして、その場を後に校舎の食堂へ向かう。
扉を開けるとそこには清水先輩と谷地さん。
『すみません!遅れましたか?!』
清水「ううん、大丈夫!遅れてないよ。」
谷地「私たちが早めに入りました!」
谷地「今はご飯が炊き終わったところです!」
(ホ・・・良かった・・・)
3日目の今日は烏野のマネージャーがご飯を作る日。私は着替えてキッチンに入った。
清水「今日の献立は・・・ってまあ、まだ結構時間あるからのんびりしてもいいんだよ?」
今は9時半。お昼まで4時間ほどある。
(今思えば集合時間おかしいな・・・)
谷地「うーん・・・あ!じゃあ!みなさんに差し入れでも作りませんか?!」
谷地「お、おにぎりとか!」
(おにぎり・・・確か京治さんが好きなはず!)
『谷地さん名案!作ろー!おにぎり!』
谷地「あ、でも・・・さすがに朝9時におにぎりは要らないですかね・・・?」
不安そうに俯く谷地さん。それについては無問題である。
『大丈夫。運動部はね、朝9時ごろには疲れて餓死しそうだから・・・(自社調べ)』
清水「激しく同意。」
元運動部の清水先輩も共感してくれる。
谷地「そ、そうなんですね・・・!」
『よし!じゃあ早速作りましょー!』
私は炊飯器を開け熱々の湯気にあたる。
清水「それにしても、何個作る?」
清水「人数がすごく多いから、かなり沢山作ることになるけど・・・」
谷地「や、やれます!やらせてください!」
『私も!・・・そーですね、○○個くらい??』
谷地「えぇ?!多くないですか?!!」
清水「・・・まあ、そんぐらいだね。」
谷地「そ、そうなんですか・・・!!」
清水「でも少し多くない?」
『いえいえ!絶っっっ対食べきれます!!』
私は自信満々に言う。
(なんたってあの中には・・・)
(京治さんというおにぎりモンスターがいるのだから!!!)
私の強い自信を感じたのか、清水先輩も納得してくれる。
清水「そ、そっか!じゃあ作ろ!」
『はい!頑張ります!!』
清水「・・・あ、」
ビニール手袋をつけてお米を取ったところで、清水先輩が声を上げる。
『どうかしましたか?』
清水「ごめん!ちょっと急用思い出しちゃって・・・谷地ちゃん手伝ってくれるかな、?」
谷地「は、はい!」
清水「事務室から○○を運ばなきゃで・・・」
『いえいえ!大丈夫ですよ!』
『お二人が行ってる間なるべく多くおにぎり作っておきます!』
清水「ありがとう!じゃあすぐ戻るね。」
谷地「いっ、行ってきます!」
そう言って食堂から出ていく2人。
私はシーンとした太陽光だけが差し込む薄暗い食堂で、1人おにぎりを握る。
(ふふ、なんかいいなぁ、ここ。)
(京治さん喜んでくれるかなー、!)
・・・ガチャ 『?』
考え事をしていると、扉の開く音がした。
そこには恐らくバスケのユニフォームを着た男性が2人立っている。
男1「なんかいい匂いしねー??」
男1「・・・あ、こんちはー!何してるの?」
『えと、おにぎり作ってます!』
男2「え!だからいい匂いするんだー」
その人たちはヘラヘラしていて、あんまり好印象ではない。
(嫌だなー、なんの用だろ、)
そんなことを考えていると、その2人組はなんとキッチンまで入ってきた。
私がたじろぐと、そのまま壁ドンされる。
『え・・・は、?』
男1「それにしても君かわいいねー!」
男1「俺一目惚れしたかもー笑」
男2「連絡先とか教えてくれないかな?笑」
『・・・』
男1「お前怖がっちゃってんじゃん!笑」
男1「てかやることやったら別に興味無いし、連絡先とかいいだろ笑」
男2「うわ!こいつサイテー笑」
『・・・・・・』
(いやだぁっっっっるぅ・・・!!)
(何こいつら、自分がかっこいいと思ってんのかな??気持ち悪・・・!)
頭の中ではただただ不快のオンパレード。
限界が近くなった私は、その人の腕をくぐろうとしたが手を掴まれる。
『・・・離してもらっていいですか』
男1「怖がんなよー!笑」
男2「大丈夫、大丈夫だからねー笑」
(め、めんどくさぁ・・・!!)
(いっそやろうかなー?金的。)
私が攻撃方法で悩んでいると、視界の端で音もなく扉から人が出てくる。
(あ!月島くん!)
男たちは気づいていない。私はなるべく分かりやすいように月島くんへ口パクした。
“へ・る・ぷ・みー!” 「!」
状況を理解し月島くんはこちらに来る。
そのまま男の腕を掴んでずらし、私の前に立ってくれた。
月島「・・・ナンパですよね。」
月島「迷惑なんでやめてもらえます?」
男1「はあ?お前いちね・・・」
月島「この子僕の彼女なんで。」
月島「”やめて”もらっていいですか。」
男2「いやいや・・・」
月島「・・・・・・・・・」 男1「・・・クソが!」
無言の圧力とはこのこと。
190cm近くの男の子に無言で睨まれるのは耐えられなかったのか、男たちは退散した。
月島「はぁ・・・大丈夫なわけ?」
『うん!ありがとう!』
『ていうかごめんね・・・!追い払うためとはいえ、彼女とか嘘ついてもらっちゃって・・・』
月島「・・・まあ、」
月島くんはすっと私に視線をやる。
月島「別に嘘じゃなくていいんだけどね。」
『・・・え?それってどういう・・・』
ガチャ 谷地「たっ、ただいま戻りました!」
大きな音で扉が開く。
私の質問は宙に浮いて消えてしまう。
月島「・・・はぁ、僕もう行くから。」
『え?う、うん!ほんとにありがと!』「ん」
私が混乱していると、そそくさと月島くんは出ていってしまった。
(・・・?気のせい、だよね・・・)
終わり.
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