テラーノベル
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翌朝。私は学園の廊下を、専属カメラマンのゼノ君を引き連れて歩いていた。
ゼノ君は死ぬほど嫌そうな顔で、それでも完璧なアングルで鏡を保持している。
「いい、ゼノ君。常に私を真ん中に映してね。あ、今の光の入り方、最高よ!」
「……なぜ俺が王国一の隠密技術を『令嬢を綺麗に映す』ために使っているんだ……」
すれ違う生徒たちは、独り言を言いながらポーズを決める私を「ついに頭が……」という目で見ていたけれど、私はちっとも気にしない。
そこへ、私を目の敵にしている伯爵令嬢ベアトリスたちが立ち塞がった。
「あらリリアーナ様。不気味な鏡を眺めて……。殿下に捨てられて、ついに鏡の精霊とお友達になったの?」
彼女たちはクスクスと笑いながら、私に泥水をかけようと魔法を構えた。けれど、横にいたゼノ君が、鏡を保持したまま空いた手で小さな石を弾いた。
石は魔法の軌道を完璧に狂わせ、泥水はベアトリス自身の頭に直撃した。
「……え? ベ、ベアトリスさん、頭から泥を被って……。最新の泥パックかしら? 斬新ですわね」
「なっ、なんですってええ!?」
私は本気で心配して声をかけたのだけれど、彼女は顔を真っ赤にして叫んだ。
鏡の中では『泥パックは草』『リリアーナ様、天然すぎて最強w』と、コメントが激しく流れている。
「ゼノ君、もっと近くで撮って差し上げて。きっと恥ずかしがり屋さんなんですのね」
「……ああ。ドアップで押さえてやる」
ゼノ君の冷徹なカメラワークが、泥まみれで激怒する令嬢の顔を克明に記録していく。初日から、なかなかの「撮れ高」だわ。
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