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#スワロウテイル
空乃 風♋🥀🐇
71,737
ひしゃまる .🍫
205
薄暗い神殿の最奥で、レオンはついに「星の心臓」と呼ばれる古代の秘宝を手中に収めた。この光り輝く結晶さえ王国に持ち帰れば、長く続いた泥沼の戦争は終わる。誰もがそう信じていた。
「やったな、レオン。これで俺たちの故郷も救われる」
背後から声をかけてきたのは、幼馴染であり、数々の死線を共にしてきた副隊長のガイルだった。彼の顔には、いつも通りの穏やかな微笑みが浮かんでいる。
「ああ、お前がいてくれたからここまで来られた。ありがとう、ガイル」
レオンが結晶を懐に収め、安堵の息を漏らしたその瞬間だった。
鋭い痛みがレオンの脇腹を貫いた。
視線を落とすと、自分の身体から生えるように、見慣れた漆黒の短剣が突き出ている。それはガイルが肌身離さず持っていた武器だった。
「ガイル……? 何を……」
レオンは血を吐きながら崩れ落ちた。信じられないという目で親友を見上げる。ガイルの微笑みは消え去り、その瞳には冷酷な光が宿っていた。
「相変わらずおめでたい奴だな、レオン。お前は昔から優秀だったが、人を信じすぎるのが致命的な弱点だ」
ガイルは冷徹な声で言い放ち、レオンの懐から「星の心臓」を奪い取った。
「俺は最初から、敵国であるグラウ帝国の人間だ。この国を内部から瓦解させるために、騎士団に潜り込んでいたに過ぎない。お前が英雄へと駆け上がる階段を、俺が裏から支えてやったのは、すべて今日この時のためだ」
ガイルは結晶を掲げ、満足そうに目を細めた。これが帝国に渡れば、王国は一晩で焦土と化すだろう。ガイルは瀕死のレオンを一瞥し、吐き捨てるように言った。
「さらばだ、友よ。あの世で自分の無垢さを呪うがいい」
ガイルは踵を返し、闇の中へと消えていった。
静まり返った神殿。床に伏したままのレオンは、ゆっくりと上体を起こした。その顔に、先ほどまでの絶望や困惑の色はなかった。
レオンは脇腹の短剣を引き抜いた。傷口からは血が流れているが、それはあらかじめ服の下に仕込んでいた、魔物の血を詰めた薄い袋が破れたものだった。短剣の刃も、ガイルが刺す直前にレオンが仕掛けた防御魔法によって、皮膚をかすめた程度で止まっていた。
「……本当に、相変わらずだな、ガイル」
レオンは立ち上がり、衣服の汚れを払った。
実は、レオンは数ヶ月前から騎士団内部の情報を敵国に漏らしている内通者の存在に気づいていた。そして、消去法で残ったのが、最も信頼するべきガイルだった。信じたくはなかったが、戦場でのガイルの不自然な行動や、敵の奇襲のタイミングを繋ぎ合わせれば、答えは一つしかなかった。
ガイルが奪っていった「星の心臓」は、レオンが錬金術で作らせた精巧な偽物だった。本物はすでに別の隠密部隊によって、安全なルートで王都へと運ばれている。
しかも、あの偽物の結晶には、強力な「強制転移と封印の呪い」が組み込まれていた。ガイルがそれを帝国の本拠地に持ち込み、皇帝の前で披露した瞬間、結晶は暴走し、周囲の魔力をすべて吸い尽くして爆発する手はずになっている。
裏切られたのではない。裏切り者を炙り出し、一網打尽にするために、レオンはあえて完璧な獲物を演じたのだ。
レオンは神殿の出口へと歩き出した。差し込む朝日の光を浴びながら、かつての友が向かった方角を見つめる。
「お前が俺の弱点だと言った『信頼』は、お前をハメるための最高の武器になったよ」
遠くの空で、帝国の方向から微かな地鳴りが響いたような気がした。レオンは一度も振り返ることなく、自らの足で歩みを進めた。
コメント
2件
裏切り 大好き ... !! ( 一方的 な 裏切り かと 思ったら 、裏切り合 だった の かぁ ... 😳 この 2人 じゃ ない と できな かった 事 で 、信頼 が 武器 に なる って 所 めっちゃ 鳥肌 立った 🥹✨️ 相変わらず 上手 すぎる よ 師匠 ‼️😭
わあ、めっちゃ面白かったです…! 親友だと思ってたガイルの裏切りからの、実はレオンが全部見抜いてて逆に罠を仕掛けてたっていう構造、痺れました。「信頼が武器になる」って台詞がすごく決まってて、伏線の精度が高いなあと。たった1話でこれだけの騙し合いと世界観の広がりを見せてくれるの、本当に上手いです。続き、読みたいです!