テラーノベル
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家に戻る。
ドアを閉めた瞬間、静かになる。
さっきまでの空気も、音も、全部途切れて、
一人になる。
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……言わなきゃよかったかもしれない。
頭の中で、さっきの言葉が何回も繰り返される。
「苦しい」
あんな言い方、するつもりじゃなかったのに。
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絶対、困らせた。
余計なこと言った。
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分かってるのに、止められなかった。
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玄関で少し立ち止まってから、
そのままリビングに入る。
何も考えずに、ソファーに体を預ける。
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どさっと沈む感覚。
力が抜ける。
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天井を見てるだけなのに、
胸の奥がじわじわ痛くなってくる。
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息がうまく吸えない。
喉の奥が詰まるみたいに苦しい。
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……やばい。
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そう思った瞬間、
涙が一気に溢れてきた。
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声、出したくない。
誰もいないのに、
なぜか必死に抑えようとする。
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「っ……、ぅ……」
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息を止めるみたいにして、
喉の奥で音を押し殺す。
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それでも漏れる。
細くて、掠れた声。
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「……ぅ、っ……」
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肩が小さく揺れる。
呼吸が乱れて、うまく整わない。
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声を出したら、全部崩れそうで。
でも抑えきれなくて。
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「……っ、は……っ……」
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短く息を吸って、
吐くときに一緒に声がこぼれる。
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静かな部屋の中で、
小さく、でも確かに響く。
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止めようとしてるのに、
止まらない。
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腕で顔を覆って、
ソファに顔を押し付ける。
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「……ぅ、や……」
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何が嫌なのかも分からないまま、
言葉にならない音だけが漏れる。
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しばらく、そのまま。
時間も分からないくらい、
ただ泣いてた。
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少しずつ、呼吸が落ち着いてくる。
涙も、途切れ途切れになっていく。
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「……はぁ……」
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最後に大きく息を吐く。
喉が少し痛い。
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目元も重い。
でも——
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さっきより、少しだけ軽い気がする。
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全部なくなったわけじゃない。
#病み
蓬川
何も解決してない。
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それでも、
さっきまで胸に溜まってたものが、
ほんの少しだけ外に出たみたいで。
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ソファに沈んだまま、
ぼんやり天井を見上げる。
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……少しだけ、楽になった。
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でも多分、また戻る。
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それでも今は、
このままでいいと思った。
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