コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「いやー、これで万事解決ってね!明かりが戻ればまた、宝石探しにいそしめるぞ!」
「ほんとだっつーの。手始めにこの宝石から使ってしまうか」
「そうね、赤があれば飾り付けもいい感じに出来そう」
「元から狙っていた通り、持って行こうか」
小人達は、
僕のブローチを盗む計画を話していた。
次に目を開けて、足元を見た時には
僕のブローチは消えていた。
…。
…。
小人達の声は聞こえない。
胸元に装飾していた赤いブローチ。
あれは、ここの屋敷の主様《ぬしさま》からもらったものだ。
けれど、その主もいない今。
僕は、歩く屍と化していた。
…。
…。
地球儀からは絶えず光が溢れている。
…。
気付いたら廊下に戻っていた。
電気がつく前とは、まるで別世界だった。
と言っても、埃を被った世界なのは変わらない。
…。
…ヒィ…。
…。
…。
僕は、自分のブローチを探した。
…。
僕は、彼らの願いであった明かりを。
あの地球儀を壊してしまおう。
という考えがよぎる。
けれど、実行まで至らないまま
しくしく消えたブローチを探し続ける。
…。
…。
しかし、一向に見つからない小人達。
この階には10室の部屋が並んでいる。
その全てを開け放ち、中を隈なく調べては
扉に鍵をかけていく。
提げていた鞄には、何でも入っている。
鍵、マッチ、ロウソク、電球やらなにやら。
これは屋敷を管理していた老人が持っていた物。
今は、どういうわけか僕の所有物となっている。
キィ…カチッ…カチャカチャ…。
…。
間違っても、小人に隠れ直されては困るから。
…。
…。
最後の扉を締め切る。
ここにも彼らはいなかった。
どの部屋も空っぽ。
今は人一人、
この屋敷には住んでいないのかもしれない。
「はぁ…彼らは一体どこへ…」
不意に階段の登り口を見た時だった。
「あれは…僕のブローチ…」
赤く光る輝きが、僕を呼ぶようだった。
「あ、おい…待て…!」
見えない力で、階段を登っていく宝石を追いかける。
それはすぐさま、僕の手に収まる。
「よっし、取り戻したぞ…」
手の中でその輝きを確かめる。
それは確かに僕のものだった。
静寂に満ちた空間。
…。
小人達の仕業である事は、間違いない。
そう確信した僕は、その場で目を閉じる。
…。
…。
「巨人さんが…僕を食べようとしてるんだ…」
弱々しい声は、すぐ傍から聞こえてくる。
「おい!離せ巨人め!我らが憎いからと言って、善悪の判別もつかないとは何事か!」
「私達は悪くないわ!その子を解放してちょうだい!」
その声は、足元から聞こえてくる。
「いや、僕らが悪いんだよ…だって、巨人さんの大事なものを奪おうとしたんだから…」
どうやら、 宝石とともに
一人の小人を捕まえてしまったようだ。
その小人は僕の手の中で話しかけてくる。
「ねぇ、巨人さん。聞こえているかは分からないけど、貴方に見て欲しいものがあるんだ!」
見えるはずのない彼らの声に導かれ、
階段を登っていく。
段を登っては、
何のために階を上がり続けているのか。
それすらよく分からなくなってくる。
「ずっと先だよ!1番上かも!」
「こらこら。目を瞑ったままではコケてしまうだろう」
「巨人さんはいつも僕らといる時は、目を閉じてるよね」
「たまたまでしょう。それより、最上階はまだまだですよ」
彼らの声は、僕の肩や頭の上から聞こえてくる。
小人達はいつの間にか僕の身体に
這い上がって来ていたようだ。
…。
ブローチを胸元に戻しては、
一人階段を上がる。
目には
映らない小人。
声だけの存在に、
僕は何をしているのだろう。
…。
彼らはそうやって、
僕を騙そうとしているのかもしれない。
けれど、幾度となく登り続け、
一本の廊下が現れる。