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最高の旦那様

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最高の旦那様

37 - 第37話 旦那様は奴隷を推奨しています。9

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2024年03月04日

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目を開くと首を振る。

こきこきっと関節が鳴る音がした。


「マッサージをいたしましょうか?」


「肩と首を中心にお願いします! がっつりじゃなくて、軽~い感じで」


「承りました」


主人の体を傷つけないようにと丁寧に手入れされた掌の、程良い熱が心地良い。

私は再び目を閉じてクエスト画面を開く。


*奴隷を買おう! をクリアしました。


新しいクエストが発生しました。


*王都での拠点を決めよう。


*奴隷たちを見極めよう。


クエストの優先順位が変わりました。


*王都での拠点を決めよう。

奴隷の数も揃いましたので、王都の拠点を作った方が無難でしょう。

柘榴沙華やリゼット・バロー氏からの情報入手も安易になりますし、高品質な商品の流通はなかなかのものですからね。


*奴隷たちを見極めよう。

戦力を考えて、彩絲と雪華に王都ダンジョンへ連れて行かせましょう。

貴女の近くに置くのを迷う方が何人かいるのですよ。


*料理を作ろう。

新しいレシピで無双をしてもいいですよ。


*王都を出てみよう。

彩絲と雪華のテリトリーに行くのも面白いでしょうね。

お勧め市町村マップを参照のこと。


*拠点を作ろう。

お勧め拠点マップを参照のこと。


「え! 王都にダンジョンあるんだ! 行ってみたいなぁ……」


「王都ダンジョンでございますか? 王都のダンジョンは、主様にはお薦めできかねます」


「そうなの?」


「はい。冒険者に満たぬ者も多く出入りしますので、主様は寄生されてしまう可能性が高いのです」


「あー。うちの子たち優秀だもんねぇ……」


まずは過保護の守護獣たち。

人型では美形で優秀。

本来の姿であれば、これまた希少で優秀。

結構名前が売れていて、主人を選ぶのも知れているはずだから、大丈夫だと信じたいけれど心配ではある。


続いて妖精たち。

戦える家事妖精と完全隠蔽持ちのブラックオウル。

戦闘のあとでゆっくりと休める環境を整えるのは、一流冒険者でも難しいと囁かれているが、それを一人でやってのける家事妖精がいる。

さらには完全隠蔽持ちによる完璧な情報収集により、バックアタックの心配が皆無。

どちらも知る人ぞ知るって感じみたいだけど、スペックがばれたら間違いなく寄生されると思う。


挙げ句に恐らく、接し方さえ間違えなければ類を見ないくらいに優秀であろう奴隷たち。

見目美しい上に、種族的もしくは迷信で卑下される傾向にある子たちが多いのだ。


「後は美人さんだったり、可愛かったりするからなぁ」


「はい。主様も大変愛らしくいらっしゃいます。新人騎士たちが性の対象にもしかねません」


「騎士でしょ?」


「残念ながらほとんど腐っております。現在は上層部の大半も同レベルと考えられます」


「最悪」


王妃に毒されてしまったらしい王が真っ当になったなら、幾らかでも改善されるだろうか。

いずれにせよ、組織改編に時間がかかるのは間違いなさそうだ。


「ゆえに、主様には王都を出てからダンジョン踏破していただきとうございます」


「行くな、とは言わないんだね? しかも踏破かぁ……」


「主様の御要望には極力お答えする方針でおります。主様なら踏破も簡単でございましょう? ただし! 必ず私をお連れくださいませ」


「ノワールには、王都拠点の留守を預かってもらおうと思ってたんだけどなぁ」


やはり仮初めとはいえ、帰る場所は信用できる人に守ってほしい。

時間をかけて作り上げるだろう快適に過ごせる拠点に対しては、特にそう思う。


「近距離でしたならば留守を預かりたく存じますが、長距離の移動では必ずお連れくださいませ」


「まぁ、ノワールのレベルを他に求めたら、酷だよね。了解です」


家事寄りの奴隷たち全員が気合いを入れても、現状ではノワールに遠く及ばないだろう。

ノワールによる指導の下で地獄の特訓をしたとしても、やっぱりノワール越えは敵わないに違いない。


「! そうだ。夫的にはノワールに王都の拠点決めを手伝ってもらいたいみたいなんだけど、いいかな?」


「……主様には?」


「勿論、一緒に行って隣で相談に乗ってほしいです」


「喜んで御一緒させていただきます。では……早速?」


「そうだね。ご馳走様でした! 王宮でいただいた高級スイーツに勝るとも劣らない味だったよ!」


「リクエストなど、何時でもしていただければと」


「基本は旬の物がいいよねー」


「心に留めておきます」


マッサージのおかげで、癇《かん》に障るぐらいの凝りと痛みがなくなった。

ノワールのスキルにマッサージとかついた予感がしますよっと。


「うーん!」


伸びをしている間に、ティーセットが片付けられる。

別室で休憩していた三人が部屋へ入ってきた。


「ふおっふお。奥方には随分とお疲れのようじゃったのう」


「装備決めは恙《つつが》なく終わったようじゃな」


「どんな感じになったの?」


「えーと? こんな感じで」


指輪の中、抜き出したリストを頭の中で思い浮かべる。

守護獣、妖精ともに念話は標準装備だ。


「なるほどのぅ」


「よくもここまで……お疲れ様じゃったな」


「全員、主に感謝して頑張ってくれればいいんだけどねー。勘違いしちゃう奴がいそうで心配だなぁ」


唇を尖らせる雪華の頭を軽くぽんぽんと叩く。


「私はこれからノワールとランディーニと一緒に王都の拠点を決めに行きたいんだ。で! 二人には奴隷の見極めをしてほしいの」


「見極めとな?」


「っていうと……王都ダンジョンに入るとか?」


「そうそう。二人で相談してグループ分けしてもらって、それぞれの戦闘スタイルとか連携とかを冷静に分析してもらえると嬉しい」


私の言葉に二人は仲良く首を傾げている。


「……妾はクレア、ローレル、ネラ、ネマ、ネイを担当しようかの。装備をもらおうか」


「……じゃあ、私はセシリア、フェリシア、ネリ、ネルってことで。戦闘には蛇形態で同行するよ」


「妾も蜘蛛形態で。基本的には隠れている感じがいいわな」


二人にそれぞれの装備一式を手渡す。

当然のように、商人がよだれを垂らしそうな許容量の収納空間を持っている二人は、人数分の装備をまるっと仕舞い込んだ。


「我は奥方とともに行くのでよいのじゃな?」


「超絶交渉スキルを期待してます!」


「無論じゃとも。ノワールと二人なら無敵じゃろうて。ふむ……冒険者ギルドを使うとしようかのぅ」


「商人ギルドよりは無難かと思われます。まぁどちらにも貸しはございますし」


「商人ギルドは本拠点が固まってから手を出したいから、それまでは冒険者ギルドを使おうと思ってるんだ」


どうやら、どちらにも貸しがあるらしい。

冒険者ギルドマスターの寿命が縮まないか心配になってきた。

フォロー上手っぽいエルフだったから、最悪にはならなそうだけどね。


「うむ。良い選択じゃ」


「商人ギルドとの交渉も私とランディーニにお任せくださいませ」


「奴隷たちにも経験を積ませた方がよかろうが……まぁ、戦闘スタイルの確認が先じゃな」


「ええ。お二人のお眼鏡に適わない奴隷もございましょうし」


どうにも折角購入した奴隷の中で、既にイマヒトツと判断されている人たちがいるようだ。

ドジっ子な彼女以外は誰なのだろう?

彩絲&雪華コンビの意見、ノワール&ランディーニコンビの意見は違うのかもしれない。

どちらにしろ、現時点では奴隷たちよりも信用度は高いので意見は重用するが、個人的には一度くらいチャンスは与えたいところ。

その一度すらも危険と判断されたら、従う方向だけどね。


「は! そういえば、沙華は! 闇色の薔薇を一緒に出た時点までは記憶があるんだけど!」


あれだけお世話になっておいて、存在をすっかり忘れていたとかないだろう、人として!


「あー何だか、面倒な奴に見つかったから、撒いてくるって」


「弩級立会人と縁を繋ぎたい輩は多いからのぅ」


彼女のことだ。

私たちを巻き込むのを恐れて、あえて記憶を曖昧にさせた上で、挨拶もせずに姿を消したのだろう。

それにしたって、申し訳ない。


「夕食は一緒に食べたかったんだけどなぁ。きちんとお礼も言えてないし」


「拠点が決まりましたら、ゆっくり御一緒しては如何でしょう?」


「そうじゃな。拠点なら沙華も安心できるじゃろう」


「あの子のことだから、定期的に覗いてくれそうだしね」


「それなら、手料理でもてなしたいかも」


「おぉ! 我も楽しみじゃ!」


ラフレ・シアンの個室なら沙華も落ち着いて食べられそうだ、と考えていたけれど、拠点なら尚良いだろう。


「あ! ユニコーンたちはどうする?」


「王都ダンジョンの低階層なら馬も入れるが……ユニコーンにバイコーン、極めつけは豪奢な馬車つきとくれば……」


「面倒事に巻き込まれること請け合いだから、獣肉萌館で預かってもらおうよ」


「だねー。ってーと……私たちは冒険者ギルドへ行くから、二人はユニコーンたちを連れて獣肉萌館へ戻ってもらって、一休憩したらダンジョンに潜ってもらう感じ?」


かなりの強行スケジュールだが、低階層で様子を見る程度なら大丈夫だろうか。

ダンジョンから帰投したら、美味しい御飯とお風呂とぐっすり眠れるベッドが待っていると告げてもらおう。


「そうじゃな。何か問題があるようなら、念話を送ろう」


「一応分身を置いていこうか? その方が念話もスムーズだし」


「……何時からそんなに利口になったのじゃ?」


「昔から私はお利口さんよ!」


「じゃ、じゃあ分身をよろしく!」


掌サイズの蜘蛛と蛇が両肩にそれぞれ鎮座した。

蜘蛛は純白で虹色の目、蛇は純白で深紅の目をしている。

これまた絡まれフラグが立った気がしたが、ノワールとランディーニがいてくれれば大丈夫だろう。


「うむ。これで安心じゃの。ではお二方、主をよろしく頼む」


「良い拠点、楽しみにしてるねー」


「お二方には、どうぞ見極めをよろしくお願いいたします」


「期待には応えたいものじゃな」


ユニコーンとバイコーンを呼んで一緒に外へ出ると、ノワールが休憩小屋を収納する。

彩絲たちとは途中で別れて、私とノワールとランディーニは冒険ギルドへと足を運んだ。



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